実家へ戻り、父に鑑定をお願いしたい物があると伝える。
先ずは母の成長魔法で実を付けた、癒し草と魔力草を見てもらおう。
鉢植えに移し替えた2つの薬草をアイテムBOXから取り出す。
「お父さん。ダンジョンの薬草に、お母さんが成長魔法を掛けたら実が生ったの。これは種かな?」
「あぁ、乾燥させると癒し草+の種になるな。魔力のある場所でなら育つらしい」
「じゃあ、ホーム内でも問題なく育つよね。畑で薬草の栽培も出来そう。お兄ちゃんがLv20のヒールを掛けた薬草を成長させて種にしたら効能の高い物になるし、交配の魔法で癒し草と魔力草を掛け合わせてみたら良いかも?」
「効能の高い薬草の栽培は、試してみる価値がありそうだな。母さんにお願いして、育ててもらうか……。薬草の交配は結果を秘密にする必要があるだろう」
薬草の栽培に関しては賛成のようだ。
交配した薬草は異世界にないため、新しい品種として卸すのは難しそう。
「それと、今日ポーションにヒールを掛けたら丸い玉になったの。これは何かな?」
私はアイテムBOXから幾つかの丸い玉を取り出し、父の前に置いた。
直径2cmくらいの紫色と赤色の丸い玉は、一見すると飴玉みたい。
それを父が何気なく手に取った瞬間、顔色が変わる。
「樹を呼んでくる」
硬い表情でそう言った後、鑑定結果も伝えず足早に部屋から出ていく。
???
何だったのか分からない私は、父の姿をキョトンと見送るしかなかった。
旭家は近所だから10分程待てばいいかと、大人しく待つ事にする。
手持ち無沙汰になった私は、2色の丸い玉をビー玉みたいに転がし遊んでいた。
暫くすると、父が樹おじさんと奏伯父さんを連れ部屋に戻ってきた。
「娘がまた厄介な物を作ったようだ。ポーションにヒールを掛けて出来た物らしい。紫の玉は色によって違うが、HP値が増える効果がある。赤い玉も違いがあるがMP値だな。Lvを上げる以外、HPとMP値は増えないんだが……」
父の言葉を聞いた奏伯父さんは絶句し、樹おじさんは額に手を当て天井を仰いでいる。
「紫の方はポーション・ハイポーション・エクスポーション・『MAXポーション』で、赤い方はエーテルとハイエーテルだよ。増える値が違うのは、効能に比例しているからかな?」
私は鑑定結果に驚いたものの、これは使えると内心で喜んだ。
ずっと基礎値が低い雫ちゃんを心配していたからね。
「で、幾つくらい値が増えるの?」
父が玉を並べ教えてくれた所によると、ポーションは1、ハイポーションは5、エクスポーションは10、『MAXポーション』は50、エーテルは50、ハイエーテルは100らしい。
こうなるとエリクサーの値が気になる所だけど……。
予想通りならHPが100、MPは200増えそう。
「値が100増えるのは凄いよね~。10個なら1,000増えるって事でしょ?」
「あぁ、だが使用制限が掛かっている。それぞれの玉は、1日1個しか効果がないみたいだ」
「ふ~ん。じゃあ全部使用したらHPが66、MPは150増えるのか……」
「沙良、そんな簡単な問題じゃない。Lvを上げなくても値が増えるんだぞ?」
「別に売る訳じゃないし、雫ちゃんに使ってもらえばいいと思う」
「どうしてお前は、そんな呑気にしてるんだ……」
父が呆れたように私の顔を見てくる。
いやだって、毒薬を作ったんじゃないし……。
むしろ効果は期待以上だ。
けれど3人は違ったのか、真顔で丸い玉を注視している。
やがて黙ったままの樹おじさんが、父に『MAXポーション』が変化した玉を渡した。
「響、一応試しておこう。これは飲んだらいいのか?」
「体内に入れば効果が出ると思う」
渡された紫の玉を父が口に含んだ。
「甘いな……。飴みたいに舐めてもいいかも知れん」
直径2cmの玉を飲み込むよりは、舐めて溶かした方が良さそう。
ポーションはりんごジュースみたいだから、同じ味になったのかな?
5分後、父がステータスを確認するとHPが50増えたらしい。
これで懸念事項が解決した。
基礎値が低い雫ちゃんに毎日舐めてもらおう。
「沙良。分かっていると思うが」
「大丈夫! ちゃんと秘密にするよ? でもパーティーメンバーの底上げになるから、皆には話した方がいいと思う」
「そうだな。HPとMPの値は高い方が安全性が増すか……」
『MAXポーション』は兄達に作ってもらえば数が揃うだろう。
ハイエーテルは沢山購入する必要がある。
ハニー達が毎週薬草採取をしてくれるお陰で、迷宮都市ではポーション類の在庫は豊富だ。
明日、攻略前に買ってこよう。
残りの玉をアイテムBOXに収納し、実家を出て自宅へ帰る。
お風呂に入り就寝準備をしたら竜の卵へ魔力をあげよう。
どうせ一晩経ったら魔力は回復するので、寝る前が一番良いタイミングだ。
卵を温めてもらおうとシルバーを呼び、卵をアイテムBOXから取り出すと、計ったように兄達が家へやってきた。
昏倒する私が心配だから一緒に付いていると言う。
無防備な状態になるけどホーム内は安全だよ?
過保護な兄達に苦笑しつつ、3人分の布団を敷いた。
今夜、何事もなければ安心するだろう。
竜の卵に両手で触れると、どんどん魔力が減っていく。
倒れそうになる私を兄が優しく抱き留めてくれたのを最後に、意識を失った。
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