【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第757話 旭 樹 再召喚 49 2匹の契約竜&ケスラーの民 1

公開日時: 2024年4月15日(月) 13:39
更新日時: 2024年8月7日(水) 11:20
文字数:1,974

おきなよ。偽装結婚だと分かっている。先程、彼女を姫様と呼んでいたではないか。それに貴方達の動きは、どう考えても護衛しているようにしか見えぬ」


 男性はガーグ老へ、演技する必要はないと言いたいみたいだな。

 まぁ偽花嫁だと分かった時点で、結婚も偽装だと分かるだろう。

 妻を姫様と呼ぶ夫はいないし、演技が出来ない影衆達の行動はモロバレだ。


「確かに結婚は偽装よ。アシュカナ帝国の王から、娘が狙われていたから仕方なくね」


「姫様と呼ばれていたが、エルフの王女でいらしたか。先程は失礼な態度を取り本当に申し訳なかった」


 妹さんの事がなければ、男性の態度は好感が持てるが……。

 本来は礼儀正しい性格なんだろう。

 俺は謝罪を笑顔で受け取った。

 

「まずは治療に向かいます。ケスラーの民は何処どこに住んでいるの?」


 カルドサリ王国がある大陸じゃなければ、移動に時間が掛かる。

 ガルムや麒麟きりんで向かうより竜の方が早い。


「南大陸に集落がある。自己紹介が遅れてすまない。私の名はハイド・ケスラー。族長の息子だ」


 あぁ、一族を束ねる族長の息子なのか。

 若いが堂々とした態度に納得する。


「私はヒルダよ。ええっと、エルフの王女で合ってるわ。一緒にいるのは、夫と娘の契約竜と護衛達よ」


「……」


 ハイドと名乗る男性は、俺の言った言葉に沈黙してしまった。

 するとひびきが口を開く。


「夫のロッセル・カーランドという。カルドサリ国王であったが、既に隠居の身だ」


 王女の結婚相手だからか、身分を明かしたらしい。

 俺は響としか呼ばなかいから、国王時代の名前をすっかり忘れていた。

 

「聖竜のセイです」


 竜族のセイは属性も併せて名乗る。

 

「竜族の方にお会い出来るとは光栄です。カルドサリ王国は人族の国だと聞いていたが……」


 ハイドは滅多に姿を現さない竜族のセイへ頭を下げ恐縮し、まだ隠居するには早い響の姿を見ながら怪訝けげんそうな顔をしていた。

 

「ヒルダ様。南大陸へ向かうなら時間が掛かります。私が本体に戻りましょう」


ひじり。精霊王から、戻らない方がいいと言われていただろう?」


「あっ、そうでしたね。では兄を呼びます」


 ポチとタマを風竜へ変態させるから問題ないと答える前に、セイは雄叫おたけびを上げた。


「ガアアアアア――――」


 あまりの音量に耳を塞ぐ。

 一体、何処どこから音を出してるんだ!

 音が鳴り止んだ瞬間、真っ赤な生き物が急接近してくる。

 遠目から見ても、その姿が非常に大きいと分かった。

 徐々にその全貌せんぼうが明らかになると絶句ぜっくする。

 竜族は竜と、これ程大きさに違いがあるのか!?

 

「セイ! 呼ぶのが遅いじゃねえか。ちい姫は、とっくに戻ってきてるぞ? おや? ちい姫が大人になってる」


「セキ。その方は、ご主人様の母親のヒルダ様だ。失礼がないようにしろ」


「へえ~。胸は少し小さいけど、そっくりだな! ティーナの契約竜、赤竜のセキだ。よろしく頼むぜ」


 目の前に現れた体長50m程ある赤竜から、言葉を掛けられ面食らった。

 竜の姿でも普通に話せるのか?

 人と同じ声帯をしているとは思えないから、念話に近い能力なんだろう。

 そして胸の大きさを比べられた……。

 

「ティーナの母親のヒルダよ。早速さっそくで悪いんだけど、私達全員を南大陸まで運んでくれるかしら?」


「アシュカナ帝国を潰しに行くのか? ちい姫が、そこのバカ王から狙われているんだろう?」


「まぁ、そんなところね。ちょっと他にも問題があって、先にケスラーの民を治療しに行きたいの」


「了解! じゃあ、背中へ乗ってくれ」


 娘の契約竜が2匹いたとは驚きだ。

 赤竜なら火属性の竜か。

 聖竜のセイとは属性が違う兄弟だから、娘が育てたようだ。

 娘が魔力を与えている竜の卵のように、両親の属性が違うと孵化ふかするのは難しい。

 

「姫様の御子は、2匹の竜族と契約していなさるのか……。セイ殿が強い訳が分かったわ」


 それまで黙ったままだったガーグ老が、ぽつりとこぼす。

 じいも竜族を見るのは初めてだろう。

 唖然あぜんとしているケスラーの民をうながし、その背に従魔から降り移動した。

 うろこの一枚一枚が大きい。

 内包している魔力も桁違けたちがいだ。


 俺達が全員背中に乗ったのを確認したセキは、一瞬で南大陸の上空へ移転した。

 これは従魔の能力に近い。

 契約竜であるセキにも、似たような魔法が使えるらしい。

 しかし、セキとセイの名前は娘が付けたのか?

 赤竜のセキと聖竜のセイとは、またなんのひねりもないな。

 

 その後、人の姿へ変態したセキと一緒に、ケスラーの民が住んでいる集落へ向かった。

 森の中を進み、しばらくすると開けた場所に辿たどり着く。

 ケスラーの民は狩猟民族だから町に住んでないんだな。

 ハイドの姿を見た一族の者達が、簡易な天幕から次々と顔を出す。

 皆、どこかしら負傷していた。

 ここには薬師ギルドがないため、ポーション類は入手困難だろう。

 

「戻ったのか!」


「あぁ、族長に話がある。詳しい事は後で話そう」


 俺達は出てきた人々の好奇の目を浴びながら、一際大きい天幕の中に入った。

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