【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第809話 迷宮都市 魔王との契約 2&Lv100になった報告

公開日時: 2024年6月7日(金) 14:19
更新日時: 2024年9月28日(土) 14:39
文字数:2,999

 ルシファーの父親は直ぐに戻ると言っていたし、私達も場所を移動せず待っていよう。

 同じ領内の公爵なら、魔王相手にめる事なく簡単に解決出来そうだ。

 お茶を飲むくらいは時間があると思い、庭にテーブルと椅子を出し3人分のコーヒーをれようとしたところ、父からお酒の方がいいと言われ兄のマンションにあったビールサーバーを出してあげた。

 以前、セイさんに渡したら喜んでいたからね。

 いつきおじさんは嬉々ききとして缶ビールをめ、早速さっそくビールサーバーからグラスに注ぎ飲み始める。


「おっ、旨いな! ひびき、お前も飲んでみろ!」


 そう言うと、父のグラスにビールを注ぎ手渡していた。

 私に味の違いは分からないけど、直接缶から飲むより美味しいのかな?

 ビールだけじゃ味気ないだろうから、つまみ用に冷凍枝豆、だし巻き卵、串カツを出すと、


「娘は、いい奥さんになりそうだ」


 樹おじさんが串カツを食べながら、父に視線を向け笑っている。


「嫁に行くのは、まだ早い」


 父は、もう酔っているのか56歳の私に対し兄のような台詞を言う。

 リーシャの体は20歳だから早い気もするけど、もうガーグ老と私の身代わりで樹おじさんが偽装結婚したあとだよ……。

 まぁ今の見た目からして、両親が結婚をせっつく事はしばらくないだろう。

 そもそも秘密が多い私の相手が、異世界で早々に見付かるとは思えないしね。

 そう考えるとホーム内で生活しているしずくちゃんと、セイさんの結婚も難しいかも知れない。

 Lvが上がって寿命が延びた私達の相手は、気長に探せばいいか……。

 

「当り前だ、もう100年くらい先でいい!」


 そんな風に思っていると、樹おじさんが飲んでいたビールグラスをテーブルの上に叩き付け大声を上げた。

 いや、それは幾らなんでも遅すぎるよ! 100年経ったら、お婆ちゃんになってる。

 私の心配より、娘の結婚を考えてあげて!


「好きな人が見つかれば結婚するから!」


「好きな相手がいるのか!?」


 勢いよく身を乗り出した樹おじさんに、両手を握られビックリしてしまう。

 

「今は、いませんけど……」


「樹、落ち着いて席に座れ」 


 父がおじさんの肩に手を置き、強引に座らせた。

 どうしてそれほど私の結婚が気になるのか分からないけど、同じ娘を持つ父親として敏感になっているんだろうか?

 ここは話題を変えよう。


「さっきは祝福のキスが、とんだ事になっちゃってごめんなさい。私がすれば良かったです」


「あっ、あれは……沙良ちゃんがするよりいい」


「でも、場所が唇に……」


「だっ、大丈夫だ! 一瞬だけだったからな」


 そう言う割には顔色が悪く、変える話題を間違えたかもと気になっていた件を振った。


魅惑みわく魔法のLvは、どうやって上げたんですか?」


 樹おじさんに魅惑魔法Lv7を掛けられたルシファーは、ずっと好きになった状態のままでいる。

 どうして攻撃魔法じゃない魅惑魔法を上げたのか、ずっと不思議に思っていたのだ。


「それは……響を相手に練習した」


 父に魅惑魔法を掛けたの!?

 

「えっ? じゃあ、お父さんもおじさんが好きになったりした?」


「……そういう魔法だからな」


 うわぁ~、樹おじさんは親友相手にひどい真似をするな。

 今は普通に見えるから、父は魅惑魔法の耐性があり解除された状態なんだろう。

 でも、魔法で好きにさせられた気持ちは覚えているんだよね?

 

「その時は樹おじさんが、どう見えていたの?」


「美しい……女性に見えた」


 うん? 魅惑魔法に掛けられると、相手の姿が違って見えるのかしら? じゃあ女性化から戻っても、ルシファーには同じ姿として映るのかな?


「へえ~、そうなんだ。間違いが起きなくて良かったね!」


 父に魅惑耐性がなければ、樹おじさんを襲っていたかも知れない。

 そうなるとキスどころじゃない悲劇だ。

 

「まっ、間違いなんて起こるわけないだろ!」


 顔を真っ赤にした樹おじさんが、父から顔をらせ必死に言い訳するのは何故なぜなのか……。

 ええっと、本当に何もなかったんですよね?


「あっ、魔王が戻ってきたみたいだぞ」


 父が魔法陣が光り戻ってきたルシファーの父親を、あせったように知らせてくる。

 2人とも、なんだか挙動不審で怪しいんだけど……下手に突っ込まない方がいいかも。


「青龍の巫女は、エンハルト王国へ送り届けました。これで契約完了です。それでは対価を頂きましょう」


 30分程で戻ってきた魔王は、にこやかにそう告げると対価の魔力1,000を受け取った。

 私の魔力は多いから引かれても何ともないけど、普通は昏倒する数値だろう。


「はい、ありがとうございます」


「それでは魔界へ帰りますので、今後も息子をよろしくお願いします」


 私にしっかりと視線を合わせ一礼したあと、ルシファーの父親は青い光と共に召喚陣から帰っていった。

 毎回、光魔法を使用する必要はあるのかしら? 魔王の登場時は、これが定番なの?

 アマンダさんから依頼はされていないけど、青龍の巫女が戻った件は明日伝えよう。

 翌日もダンジョン攻略なので早々にホームの自宅へ戻ると、兄達が寝ずに待っていた。


「お帰り沙良。青龍の巫女は無事だったのか?」


 私の顔を見るなり兄が口を開き聞いてくる。


「ただいま~。うん、ルシファーの父親が連れ戻してくれたよ」


「そうか、ならアマンダさんも安心するだろう。異世界は物騒だから、俺達もLvを早く100まで上げた方がいいな」


「突然、どうしたの?」


 今までは安全第一の攻略をしてきた兄が、そんな事を言うから驚いてしまった。


「お前は安全地帯で魔物が倒せるから心配せずに済む。摩天楼まてんろうのダンジョンに関しては、茜がいれば安心だ。攻略階層を上げよう」


「分かった、明日お父さん達にも言っておくね」


 兄の気が変わらない内に了解しておこう。


「それで茜はダンジョンマスターの時、何の魔物を召喚したんだ?」


「ベヒモスだよ」


「ベヒモス!? そんな魔物よく召喚出来たね!」


 話を聞いていた旭が、自分の召喚した魔物との違いに驚き目を丸くしていた。


「確か召喚枠は30あったと思うが、他に召喚しなかったのか?」


 記憶力のいい兄が手紙の内容を覚えていたのか、茜に質問を続ける。

 あまりベヒモスには触れてほしくないんだけど……。


「ベヒモス1体で、残りの召喚枠を消費したから他の魔物は呼び出せなかった」


「それは残念だな。でもベヒモスを倒せば一気にLvを上げられそうだ」


「おおぉお兄ちゃん! 言い忘れてたんだけど、昨日・・99階でファイト・カンガルーをテイムした時、珍しい魔物が見えて倒しちゃったんだよ! 茜に聞いたらベヒモスだったみたい」


「なら、相当Lvが上がったんじゃないか?」


「そっ、そうかも? ちょっとステータスを確認するよ。あっ、Lv100になってる!」


 ここは演技力を発揮して、今知ったばかりだと強調しなければ!

 幸い兄は昨日99階で魔物をテイムしたと知っており、疑問に思わなかったようだ。


「1匹倒しただけでLvが100に上がったの!? じゃあ、俺達も簡単にLv上げ出来るね~」


 呑気のんきな旭がベヒモスを倒せばLvが上がると喜んでいたけど、もう出現しないとは言いにくい。


「旭、いきなり99階に行くのは危険だ。まずは50階までにしよう」


「階層を上がる度に魔物は強くなるから、初見で99階は止めた方がいい」


 兄と茜の言葉に旭は納得したのか、じゃあ楽しみにしてると大人しく言う事を聞いた。

 あぁベヒモスは、何処どこかのダンジョンにいないものか……。

 99階を攻略するまでに見つけて、アイテムBOXに収納しておかなければ……。

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