ガーグ老に言われて天蓋付きベッドに横たわった後、私は寝てしまったみたいだ。
そろそろ起きなきゃと思っていると、再び香織ちゃんの気持ちが流れ込んでくる。
おや?
また夢を見るのかな?
何故か、先程までとても楽しい夢を見ていた気がするんだけど……。
自分が見た夢の内容は、さっぱり思い出せなかった。
『沙良お姉ちゃん。実は凄い人だったんだね~。さっきのイケメンさんを、好きになるの確かに分かるよ~。大人で包容力ありそうだし、持っている力も強そうだもん。突然キスしたから、しっかり見ちゃった! セキちゃんは男前だし、ドラゴンに変身するなんてロマンの塊だよ~! 赤竜なら、口から火を吹いたりするのかなぁ~』
ううん?
イケメンを私が好きになる?
一体、私が何歳の夢を見ているんだろう?
顔が良い人と交際した事ってあったかしら……。
力の強そうな人なら、心当たりがあるけどね。
社会人になってから知り合い、警備会社に勤務していた6歳年上の彼氏だ。
あれは25歳くらいだったろうか?
でもセキという名前じゃないし、ドラゴンに変身もしないただの人だったよ?
香織ちゃんは、何か妄想でもしているのか……。
普通の人間は竜に変身出来たりしないんだけどなぁ。
まだ子供なんだろうか?
まぁ今回は、キスの先を見ていないようなので安心した。
毎回、それ以上の行為を見られていたら恥ずかし過ぎて死ねるわ。
大人には色々あるんだよ。
こう抑えきれない衝動が……。
子供の香織ちゃんには早いから、なるべく普通のデート場面を見ていてほしい。
『あ~、テステス。沙良お姉ちゃん、聞こえる? 雫ちゃんは王都にいるよ! 名前は、サ…ナ…………』
今回は夢がいつもより短いようだ。
最後の私宛のメッセージでは、はっきりと王都にいる事が分かった。
そして名前はサ…ナ……?
情報が増えていくのはいいんだけど、どうしていつも肝心な部分が途切れてしまうの!?
でも、これは朗報だ。
探す順番が最後になってしまったけど、もう王都に行くしかないよね!
決意をしているところで目が覚めた。
天蓋付きベッドの天井が見える。
寝る前に既視感を感じた男性の姿を再び目にして、やはりどこか懐かしいと思ってしまう。
体を起こしてベッドから降りると、ガーグ老を筆頭にご老人達が家具工房内で微動だにせず、入り口付近を守るように整然と並んで立っていた。
私が眠ってしまったから、仕事の邪魔をしたかも知れない。
「ガーグ老、寝てしまいすみません」
「よいよい、安眠出来たみいたで嬉しいわ。少し、時間が経っておるでな。兄が心配しているだろう」
言われて、はっと辺りを見渡した。
ガラス窓から見える外の景色は、日が落ちているのか既に暗くなっている。
「本当ですね。素晴らしい家具をありがとうございます。えっと、見せて頂いたのは1部屋分ですか?」
「あぁ、サラ……ちゃんの分だ。他の部屋の物は、また別にある」
「分かりました。残りは明日、稽古時に引き取ります」
家具工房内の家具をアイテムBOXに全て収納すると、ガーグ老が門まで見送ってくれた。
「気を付けて帰るのだぞ」
「はい、今日はこれで失礼します」
少し歩いて新しい家の庭へ移動後、ホームの自宅に帰ってくる。
時計を見ると18時だった。
結構長い間、眠ってしまったのか……。
テーブルの上には、兄の字でメモ書きが残されている。
『旭と飲みに行ってくる。近所の居酒屋にしたから、帰りは心配しなくていいぞ。17:30 賢也』
きっと落ち込んでいる旭を、今日も兄が慰めているんだろう。
じゃあ私は、お邪魔しない方がいいかも……。
雫ちゃんの新しい情報を早く教えてあげたかったけど、2人が帰宅してからにしよう。
1人なら夕食は簡単な物でいいか。
アイテムBOX内に入っている熱々状態のMサイズピザ(明太もちチーズ)を1枚取り出して、ホットコーヒーと一緒に食べる事にする。
半分を残し、再びアイテムBOXに収納しておいた。
兄達を待っている間、クリスマスに渡す予定のセーターの続きでもしよう。
兄の分は出来上がったので、今は旭の分を編んでいる。
2回目なので、出来は旭の方が良いかも知れないなぁ~。
まぁ、私の腕は知れているから大した差はないだろうけど。
なにより気持ちが大事だよね。
完成品の見栄えが多少悪くても、2人は優しいので喜んでくれると思う。
黙々と編んでいると、兄達が玄関を開ける音がする。
帰宅時間は21時を過ぎていた。
前回みたいに飲みすぎていたらどうしようかと思ったけど、旭の顔色を見てまだ大丈夫だと判断する。
「2人ともおかえりなさい。雫ちゃんの事で話があるから、聞いてくれる?」
「あぁ、ただいま。また夢を見たのか?」
「サラちゃん、ただいま~。雫の話って、新しい情報なの?」
旭が雫ちゃんの言葉に反応し、兄を押しのけて私に近付いてきた。
うおおっと、それは近すぎるよ。
唇が後数センチで接触事故を起こしそう。
あれ?
なんかデジャブを感じる。
つい最近、同じような場面があったような?
不思議に思っている間に、旭は兄から襟首を掴まれ後退させられていた。
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