再会したシュウゲンさんとサヨさんと母は、もっと一緒にいたいだろうけどそろそろ時間だ。
帰りの遅いサヨさんを老紳士が心配しているだろう。
元夫婦が一緒に住むのは難しいかも知れないけど、父親を早くに失くした母は祖父が恋しいに違いない。
折を見て、シュウゲンさんにホーム内で生活しないか提案してみよう。
先にサヨさんを華蘭へ送り、シュウゲンさんを王都の武器屋まで連れていく。
別れ際、2人が名残惜しそうに見つめ合っていた姿に胸が切なくなった。
「小夜……いつか……」
「えぇ……いつか」
2人は最後まで言葉を言わず、お互いの想いを確かめ合っていたんじゃないかと思う。
ドワーフと人間では寿命が異なる。
老紳士と添い遂げた後は、残りの人生を一緒に過ごそうという意味なんだろう。
同じ世界にいるのなら、再び会う機会を作ってあげればいい。
父と王都の武器屋までシュウゲンさんを見送り、また来週きますねと伝える。
「結婚相手に会うのが楽しみじゃ。久し振りに槍の出番かのぉ~」
あぁ……。
どうやらガーグ老と対戦するのは決定らしい。
「シュウゲンさん。Lvは、お幾つですか?」
「175じゃな」
175!?
奏伯父さんより高Lvだし!
やはり親子揃って武闘派なのか……。
「何か魔法は使えますか?」
「火魔法と鑑定に身体強化が使用出来るぞ」
ドワーフだと種族特性で火魔法が使えるのかも?
鑑定は鉱物を見るために必要だし、身体強化の魔法は奏伯父さんと同じく前世に関係していそうね。
「結婚相手は王族を護衛していた元近衛の方ですが、ご老人なのでお手柔らかにお願いします」
「ふむ、そうであるか。やり過ぎんように注意せねばならんな」
ええ、本当にそうして下さい。
ガーグ老は強いけど高齢なので、種族の違うドワーフであるシュウゲンさんとは違う。
572歳とはいえ、まだ現役らしい祖父の相手は荷が重いだろう。
現役……? あっ、夕食に迷宮ウナギを食べさせちゃった!
今夜は大丈夫だろうか?
少し心配になりつつシュウゲンさんと別れ、先週捕まった犯人がどうなったか確認するため、父と一緒に王都の冒険者ギルドへ向かう。
冒険者ギルド内の壁には通達が貼られていた。
ダンジョンに呪具を設置した犯人と従者、アシュカナ帝国に通じていた司教は斬首刑が執行されたらしい。
逮捕から僅か1週間で刑が執行されるとは驚きだ。
私達が通達を読んでいる所、受付嬢からギルドマスターがお呼びですと言われ会議室に案内される。
犯人を確保した私達に、詳しい事情を説明してくれるのかも?
会議室に入ると、既にギルドマスターのランドルさんが待っていた。
「お前さん達が犯人を捕まえたそうだの。遅くなったが、本当に助かった。お礼をしたかったから、まだ王都にいてくれてよかったわ。これは冒険者ギルドからの謝礼金じゃ。遠慮せず受け取るがいい」
そう言って、お金が入った巾着を渡される。
「ありがとうございます。今回は司教も処刑されたそうですが、教会は関与を認めたのですか?」
「いや、司教個人の単独による事件として扱われた。まぁ、予想通りトカゲの尻尾切りにされたようじゃな。大方、上層部の方で話を付けたんだろう。尋問の結果、次の目標は摩天楼のダンジョンだと分かった。迷宮都市と王都のダンジョンは様子見で、本命はA級冒険者以上がいる摩天楼のダンジョンの方だと分かっただけでも御の字といったところか……。まぁカルドサリ王国の戦力を削ぐには、SS級冒険者を狙う方が効率が良いからの」
ランドルさんの返答を聞き、父が口を開いた。
「今回の件で、教会は動き辛くなっただろう。少なくとも、摩天楼にある教会へアシュカナ帝国は接触しまい。出来れば、この機会に教会との癒着を暴きたかったが……」
「それは難しいであろう。教会の上層部は、貴族出身者が占めておる。余程の証拠がない限り、国としても動きようがないわ」
「今の国王は力がないのか?」
「どうであろうな。在位が短い人族では、国の体制は中々変えられんじゃろう。過去にはLvを上げて、寿命を延ばす酔狂な王もいたがの」
「……そうか」
ランドルさんと父が何やら話をしている。
次は摩天楼のダンジョンかぁ~、ちょうど今Lv上げをしている場所だ。
もしかしたら巻き込まれる可能性があるな……。
摩天楼の冒険者ギルドも早々に対策を練るとは思うけど、兄達へ『毒消しポーション』と『MAXポーション』を追加でお願いした方がいいかも知れない。
私達は迷宮都市にいる事になっているため、表立った協力は出来ないからね。
ゼリアさんに伝え、量を増やしてもらう必要がありそうだ。
犯人が捕まり情報が漏れたと分かっても、アシュカナ帝国は呪具の設置を中止したりしないだろう。
単純にカルドサリ王国へダメージを与えるだけの目的ではない気がする。
それだと教会と手を結ぶ必要性が、あまり感じられないのだ。
何か他に目的があるんじゃ?
呪具の解呪を司教がするよう仕向けているのを、ずっと不思議に思っていた。
教会に利益をもたらす行為ではあるけど、アシュカナ帝国にとっては都合が悪い。
う~ん、私じゃ理由が思いつかないなぁ。
後で、父と兄に相談してみよう。
ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!