【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第232話 椎名 賢也 49 ダンジョン 地下8階 最終攻略組の冒険者達

公開日時: 2023年2月16日(木) 12:05
更新日時: 2023年3月9日(木) 09:59
文字数:2,415

 午後9時。

 地下8階の安全地帯のテントから出ると、昨日とは違いまだテントの外にいる人達の姿が見えた。


 地下8階に新しい冒険者が来るのが珍しいのか、若い2人組パーティーである事が珍しいのか……。

 テントから出た瞬間、全員から視線を感じる。

 

 当然、沙良に視線が集まるかと思っていたが、何故なぜだか俺の方にも一定数の人間の視線を感じる。


 とにかく俺達は注目を浴びているようだ。


 そんな中、物怖ものおじしない沙良が1歩前に進んで挨拶をする。


「初めまして皆様。今日からここでお世話になります、沙良と申します」


「賢也です」


 俺も続いて挨拶をした。

 年齢的に言うと俺からの方が良かった気もするが、女性の方が無駄な警戒心をいだかせないだろう。


 一応礼儀として、先輩冒険者にきっちり頭を下げておく。

 こういう事は最初が肝心かんじんだ。


 ここにいる冒険者達は、30代~40代のベテラン勢だからな。

 リースナーのダンジョン最終攻略組でもある。


 俺達は人生の先輩ではあるが、冒険者としてはまだC級のひよっこだ。

 B級冒険者の皆ように不快な思いをさせてはいけない。


「ああ、よろしくな。ちょっと待っててくれ、他のメンバー呼んで来るから」


「はい、お待ちしております」


 沙良の挨拶を受けて、1人の冒険者が地下8階を攻略してる冒険者達を呼び集めてくれた。


 総勢30名。


 女性の比率が多い事に笑ってしまうが、その女性達も皆背が高い。

 並ぶと大人と子供程の身長の差がある。


 また沙良のコンプレックスを刺激しそうだ。


「あ~いきなり全員を紹介しても覚えられないだろうから、各リーダーだけ挨拶させて貰うわ。まずは俺から、ゼルダだ」


「アーサーだ」


「リンダよ」


「マリアよ」


「イブよ」


 冒険者のリーダーが挨拶をして、名前を名乗ってくれたが……非常に覚えやすい名前だった。

 ゼルダ・アーサー・マリア・リンダ・イブって、きっと沙良も同じ事を思ったに違いない。


「いや~、朝起きたら知らないテントがあって驚いた」


「すげ~噂になってた、超大型ルーキーの2人組だよな」


「いつか来るとは思ってたけど、意外と早く来たわね」


「それにしても、まだ子供じゃん」


 口々に言われて、沙良が目を回している。


「まずは、ご挨拶代わりにお納め下さい」


 そう言って沙良が、日本製のタオルを全員に配っていく。


「何これ? ふわふわなんですけど~」


 女性達には、その感触が受けたみたいで大成功だ。

 男性陣は良さが分からなかったのか、少し戸惑とまどっているように見える。


「私達は夜9時~朝5時が活動時間なので、皆様とお会いする機会が余り無いかも知れませんが、よろしくお願いします」


「女性冒険者あるあるだね。全く、男どもも何考えてるんだか」

 

「まっ、仲良くやっていこうや」


「はい、それでは私達は探索に行きます」


「いってらっしゃい~」

  

 地下8階の冒険者達に見送られ、この日の攻略を開始した。

 

 初顔合わせが無事に済んで肩の力が抜ける。

 俺も少し緊張していたのかも知れない。


 沙良の方を見ると、既に心はオリハルコンゴーレムを狩る事で一杯の様子だ。


 お前は単純でいいよな。

 苦労するのは兄だから仕方ないとは言え、少しは理解して欲しい。


 もし地下8階の冒険者達が、不審な動きを見せたらと警戒していたんだぞ?


「お兄ちゃん。私達、超大型ルーキーらしいよ。リザードマンの革鎧(銀貨10枚)と私の使用してる鋼製の槍(銀貨10枚)なんて見せたら笑われるかも?」


「俺も鋼製の盾(銀貨15枚)しかない。しかも沙良が魔法覚えてから手に持った事さえないぞ」


「まっいいか、魔法使いって事で。リッチの杖を使用したら、威力いりょくが上がったりするのかな?」


「さぁ? 俺は杖なんか持ってても、邪魔になるだけだと思うけどな」


「そっか、じゃいらないか。で、リッチって確か魔法使えなかったっけ?」

 

「あっ」

 

 ホーリーで先制攻撃をしていたので、リッチの使う魔法の事はすっかり忘れてしまっていた。


「今度、会ったら受けておく」


「お願いね~」


 さて、地下8階は俺の担当エリアだからサクサク魔物を狩りますか。

 途中出て来たリッチの魔法を受けたが、ボール系だったので新しく覚える事はなかった。

 

 3時間後に安全地帯に戻った時は、当然ながら誰も起きていない。


 6時間後。

 安全地帯に戻りテントからホームの自宅へ戻って、トイレ休憩&食事の時間。


 今日のお弁当は、豚の生姜焼き・法蓮草と卵炒め・ポテトサラダ・子イカの煮付けだった。

 なめこの味噌汁&抹茶入り玄米茶とともに大盛ご飯を完食する。


 食事の最中、沙良からリッチの使う魔法について提案があった。


「思ったんだけどリッチってHP無くならないと、ドレイン使わないんじゃないかな?」


「おお、そうかも! ホーリーLv1くらいにしておくか」


 果たして、2人共ドレインの魔法を覚える事が出来たが……。

 この魔法、使い道はあるんだろうか?


 HPを奪う魔法の使い道が分からない。

 基本的に遠距離から1発の魔法を撃って倒してしまうので、用途が無いのだ。


 回復用には俺がホーリーを使用すればよい。

 まず、そんな大怪我をさせる訳ないけどな。


 地下8階の魔物は俺が無双状態で瞬殺しているので、沙良に危険がおよぶ事は無い。


 安全マージンは必要以上に充分取って、ダンジョン攻略をしているんだから。

 でなければマンションをホームに設定して欲しい為に、3ケ月毎に階層を潜ったりしない。


 手っ取り早く、地下10階に行ってLvの高い魔物を倒せば済む話だ。

 多分俺達2人なら、ある程度の魔物は倒す事が出来るだろう。


 いきなりドラゴンでも現れない限り……。


 だが万が一を考えて、ダンジョン攻略に慣れる時間が必要だった。


 沙良が俺を置き去りにして勝手に行ってしまう時があるが、常時マッピングを展開していれば魔物から先制攻撃を受ける事もないだろう。


 沙良はドレインの魔法について、何やら考えているようだが嫌な予感がするのは何故なぜだろう?


 どうか穏便おんびんな方法で使用してくれよ。


 この後、沙良がドレインを使いまくる事になるとは思ってもみなかった……。

ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート