【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第656話 迷宮都市 セイさんの紹介

公開日時: 2024年1月5日(金) 12:05
更新日時: 2024年4月28日(日) 12:20
文字数:2,235

 セイさんに突然プロポーズされた2人は、一瞬何を言われたか分からなかったのかきょとんとしていた。

 そこへすかさず父が入り込み、セイさんがつかんでいる手を離させオーバーに驚いてみせる。


「ひ……セイじゃないか! こんな所で会うなんて偶然だな! 元気にしていたか? いや~相変わらず、お前の冗談は分かりにくい! 2人は俺の息子だ」


 そしてバシバシと背中を叩き、久し振りの再会を演出する。

 父の演技にセイさんも設定を思い出したのか、


ひびきさん! お久振りです、ええっと息子さんでしたか……何故なぜまた出遅れてしまったんでしょう……」


 運命の相手が既婚者だった事が残念なのか、2人を名残惜なごりおしそうに見つめていた。

 旭がようやく言われた内容に気付き、目を白黒させている。

 兄は怒り出すかと思ったら、意外にも苦笑していただけだった。

 まぁ一応これで、知り合い同士の再会は印象付けられただろう。


「セイとサラちゃんの親父殿は知り合いでしたか」


 バスクさんは、父とセイさんが知己であると知り驚いていた。

 セイさんは摩天楼まてんろうのダンジョンで20年冒険者をしていたから、迷宮都市にはいない。

 父とどう知り合ったのか聞かれた場合は、生まれ故郷が同じだと答える心算つもりでいる。

 冒険者は見た目年齢がLvによって違うため、多少誤魔化しが利くだろう。

 その後、父がセイさんをメンバーに紹介し、セイさんはジョンさん達が生きていたと連絡をもらい迷宮都市に来た理由を話した。

 昔入っていたクランリーダーへ会いに来るのは自然な流れで、兄達も不思議に感じたりはしないと思う。

 

 バスクさんは、リュートさんを呼びに行くと言い店を出ていった。

 同じパーティーメンバーだったリュートさんも、セイさんに会いたいだろう。

 従業員達は、久し振りの再会を邪魔しないようにと2階へ上がり席を外してくれた。

 セイさんが残したマジックバッグを私が見付けた話をし、お互い転移者であると確認する。

 父も銀行の後輩だと本当の話をして、この偶然の再会を喜んだ。

 

 かなで伯父さんも、冒険者時代に摩天楼のダンジョンでセイさんと一緒にパーティーを組んでいた話をし、お互い日本人だと気付かなかったと言い笑っている。

 また奏伯父さんが父の結婚相手の兄であると聞き、奇遇ですね~と驚くフリをしていた。

 よし! これで日本人のセイさんをホームへ連れていく準備は整った。

 いきなり兄達にプロポーズした時は、どうなる事かと心配だったよ。  

 15分後、バスクさんがリュートさんを連れ店に戻ってきた。

 セイさんは、リュートさんの片腕がない姿を見て知り再び泣き出してしまう。


「リュートさんも、こんな大怪我をして……」


「セイは優しいな。ほら泣くんじゃない」


 リュートさんはセイさんを懐かしそうに見やり、涙をそでぬぐい片腕でぎゅっと抱き寄せた。

 小柄なセイさんがリュートさんの腕にすっぽりとはまってしまう姿は、まさに大人と子供のようである。

 リュートさんが来たので、従業員達も1階に戻ってきた。

 従業員の中には、セイさんと同じクランメンバーが何人かいたから再会を喜んでいる。

 その全員が身体に欠損があるのを見て、セイさんは大泣きしてしまった。


 『泣き虫セイ』

 何故なぜか、そんな台詞せりふを思い出す。

 あれは誰が言った言葉だった? ふと、視線が兄へと向く。

 兄は泣いているセイさんを、あきれるでもなく穏やかに見つめていた。

 なんとなく、この光景に見覚えがあり首をかしげる。

 2人は初対面のはずなのに……、私は既視感を抱いてしまう。


 記憶の齟齬そごが、最近多くなっている気がする。

 リーシャの脳は若いのに大丈夫かしら? やはり兄に検査してもらった方がいいかも?

 セイさんとの再会を『製麺店』の皆と祝い、店の裏庭で『バーベキュー』をした。

 リュートさんがアリサちゃんを連れてきたから、『焼きとうもろこし』を作ってあげよう。


「お姉ちゃん、焼いた『とうもろこし』も美味しいね~」


 アリサちゃんは、両手で持ち満面の笑みを浮かべかじりついていた。

 リュートさんは異世界にない野菜だけど何も言わない。

 やはり記憶を持ったままなのか……。

 セイさんがアリサちゃんの手元をじっと見ていたので食べたいのかと思い、もう1本焼き渡してあげた。

 醤油の焦げる香ばしい匂いが食欲をそそるなぁ~。


 従業員達はお酒を飲んでいるため、事前に男女の仲を赤裸々に歌う事は固く禁止した。

 アリサちゃんはまだ子供だからね。教育上よろしくない。

 それに経験のないしずくちゃんも恥ずかしがるだろう。

 夕食後は、父がセイさんに家に泊まってほしいと言い店を出た。

 セイさんは、フォレストに二人乗りしてもらい家まで戻る。

 要塞のような塀に囲まれた私の家を見て、口を開きっぱなしにしていて笑う。

 門の魔石に血液を登録し庭からホームへ移転。


「わぁ~、日本だぁ~」


 と少々オーバーリアクションをしながら感激しているセイさん。

 演技力は兄よりありそうだ。

 実家に泊まってもらう予定だったけど、セイさんは先輩の家でお世話になるのはと遠慮し兄達の家を希望する。

 先輩の息子の家はいいの? 2人はまだ新婚なんだけど……。


 兄と旭は特に嫌がらず、どうぞ自宅に泊まって下さいとにこやかに答えていた。

 まぁ一緒に住む訳じゃないし、今夜泊めるくらいは問題ないか。

 兄達の家に客用布団を敷き、セイさんに着替えを渡して私は自室へ帰る。

 セイさんのプロポーズは父が冗談にしたので、兄達も本気と思っていないんだろう。

 母とシュウゲンさんには明日紹介しよう。

 今日は、やけに濃い1日だったなぁ。

 明日も予定が沢山あるから、お風呂に入って直ぐ眠りにいた。

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