【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第255話 迷宮都市 地下14階 新たな果物 4

公開日時: 2023年2月28日(火) 12:48
更新日時: 2023年8月4日(金) 16:30
文字数:1,855

 しかし今日だけで、どれだけトレントを倒した事やら。

 これ高級木材らしいけど、私達が換金したら値が下がりそう。

 100本以上アイテムBOXに収納してある。


 ギルドマスターの腕の見せ所だよね。

 迷宮都市のギルドマスターは、シルバーウルフの皮を小出しに王都に売っているみたいだから大丈夫だと思うけど……。


 出来れば価格を下げずに売りさばいてほしいなぁ。

 途中で換金額が下がるのは悲しいから。


 どうせなので、兄がくる前にトレントの森を丸裸にしておこう!


 2時間後――。


 直径1kmある森は消失した。

 これでマンゴーも収穫出来るだろう。


 いや~すっきりした。

 我ながら良い仕事したわ。


 真っ新な状態の地面に満足していると、隣で旭が呆れ返って見ていた。


「沙良ちゃん、やりすぎ。他の冒険者が見たら驚くよ!」


「大丈夫、明日にはまた森に戻ってるから!」


「何が大丈夫だって?」


 突然、兄の声が後ろから聴こえたのでビックリして振り返る。

 そこには両腕を組んで、上から私を睥睨へいげいする兄がいた。


 心臓に悪いわっ!


 いや~、怖いですお兄様。

 そして顔を近付けないで下さい。

 それはキスの距離ですからっ!


「沙良、トレントの森は何処どこに消えた?」


 兄が周囲を見渡して、犯人はお前だろうと質問してくる。


「え~っと、知らない内に歩いて移動したんじゃないかな?」


「俺はアマンダさんから、トレントが歩いて移動する情報は聞いてないんだが。本当に歩いているのを見たのか? 旭、お前は何で消えたか知ってるか?」


「あ~っと、それは……」


 旭が私の方をちらちら見てくるので、必死になって首を横に振っておいた。

 私の意図が伝わったのか、旭が一度うなずく。


「多分、沙良ちゃんのアイテムBOXに収納されてると思います……」


 何故なぜバラすっ!

 さっきうなずいてたのに~。


「沙良、こんな事をしたら目立って仕方ないだろう。何で全部のトレントを狩った! そして嘘はくな!」


 ううっ、怒ってるよ。

 夜叉やしゃに変わる一歩手前だ。


「トレントの森の中央に、マンゴーが生っている木があるからです。ほら、あそこにある大きな木を見て?」


 注意をそらそうと、マンゴーが生っている木を指さした。

 兄が指先につられて視線を動かす。


何処どこに生ってるんだ?」 

 

 おっ?

 果物ハンターの琴線きんせんに触れたか?


「大体10mくらいの高さに生ってるから、下からじゃ見えないかも……」


「ちょっと待ってろ」


 そう言って兄は大木たいぼくの方に駆け出していってしまった。


 ふう~。

 これでお説教からはのがれられたか。


 兄が木から少しだけ離れた場所で、ライトボールを撃ってマンゴーを枝から切り離して収穫している。

 30個はあるはずだから、のんびりと待っていよう。


「沙良ちゃんごめんね。賢也に嘘は吐けないよ~」


 そう言って旭が両手を合せて謝ってきたけど、私はつんとそっぽを向く。


 裏切り者め!

 もうしばらくオムライスは作ってあげない。


 20分程で兄が収穫を終えて戻ってきた。

 実は兄が一番好きな果物はマンゴーだったりする。


 しかも値段の高い宮崎県産マンゴーだ。

 普通に1個3,000円以上するんだよね。

 フルーツ屋で購入しようとすれば、5,000円は掛かるだろう。

 

 なのでマンゴーに関しては、最初からあまり心配していないのだ。

 現に兄は怒りを忘れて嬉しそうな表情をしている。


「この階層はランダムに生るのがマンゴーなんだな。今日はトレントの森の中だったが、明日は場所が変わるのか?」


「今までの仕様からいくとそうなると思うけど、トレントの森の中ってハードルが高いから一緒かも知れないよ?」


「明日、どこに生るのか探す楽しみが出来た」

 

 と兄は満足そうに笑った。


 よし!

 これで追及は終わりだ。


 今回のお説教タイムは0だよ。

 異世界転移してから、若返ったお陰で最近兄からの説教が多いんだよね~。


 迷宮タイガーのテイムは、明日マンゴーを見付けて機嫌がいい時にお願いしてみよう。


 ネコ好きな兄の事だから、再考の余地はあるだろう。

 

 迷宮タイガーは騎獣にもなるし、乗合馬車の旅は現代人にはつらいものがある。

 リースナーの町から迷宮都市にくるまでの2週間は、お尻が痛くて本当に大変だったんだよ。


 兄が何度もヒールを掛けてくれなければ、真っ赤にれあがっていたと思う。


 この先、拠点を移す事があれば是非ぜひともシルバーに乗って移動したい。


 その為には兄と旭の移動手段が必要だ。

 迷宮タイガーなら体長3mもあるから、2人乗っても問題なさそうだし。


 2人一緒の方が嬉しいだろう。

 身長差があるから、兄が後ろに乗れば前も見えるしね。


 私は理解ある妹だから、2人がもしそう言うでも応援するよ!

 今はそっと見守っておこう。

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