【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第615話 迷宮都市 王都の現状 3 犯人の確保

公開日時: 2023年11月25日(土) 12:05
更新日時: 2024年3月17日(日) 22:07
文字数:2,052

 私は確認しようと、念話の魔道具を起動させた。

 兄から直ぐに応答がある。


『沙良。何か動きがあったのか?』


『うん。従者の1人が離れて別行動を取り出したみたい。誰かと接触するのを待った方がいいかな?』


『そうだな。今回の経過報告を知らせるために仲間と接触する可能性がある。もう少し、行方を追ってくれ』


『了解!』


 従魔登録も済ませたので、ランドルさんへお礼を言い会議室から出ようとした所、


「これを、お守り代わりに持っていなされ。何かあった時は吹いてみるとよい」


 ひもが付いた小さな笛のような物を渡された。

 何だろう?

 犬笛みたいな物かしら?

 吹くと、ランドルさんと同じ種族の獣人が駆けつけてくれるとか?


「ありがとうございます。大切にしますね」


 もらった笛を首から下げ、お礼を伝え冒険者ギルドを後にした。

 知り合いらしいかなで伯父さんへ早速さっそく尋ねてみる。


「ギルドマスターのランドルさんは、何の種族なの?」


「俺もはっきり知らないが、多分鳥系じゃないかと思う」


「あ~彼は特徴的な目と髪の色をしているから、白頭鷲はくとうわしの一族じゃないかと思う」


 横から父が推測を述べる。

 髪の色は分かるけど特徴的な目?

 私は特に変わった所もなく普通に見えたけどなぁ。


「確かギルマスは空を飛べると自慢していたわね」


「俺にもそう自慢していたな」


 雫ちゃんのお母さんと奏伯父さんが同じ事を言う。

 じゃあ、これは犬笛じゃなく鳥笛か……。


「お守りにって渡されたけど、どんな効果があるんだろう?」


「多分、吹くと白頭鷲の一族に聞こえるようになっているんだろう。簡単に吹くような代物じゃない。いい物を貰ったな。大切にするんだぞ」


 父からそう言われ、私は失くさないようアイテムBOXへ収納した。

 そんな重要な物を会ったばかりの私にくれた理由が、さっぱり分からないけど……。


「あっ、従者の1人が誰かと接触してる!」


 会話しながらも、ずっとマッピングで見ていた従者が冒険者と合流していた。

 呪具をダンジョンに設置した実行犯かも知れない。


「お兄ちゃん。全員確保する?」


「少し様子を探りたいな。相手から見えない場所へ移転出来るか?」


「うん、大丈夫」


 私は言った瞬間、パーティー全員を犯人達から見えない場所へ移転させた。

 少し離れた先には、6人組の冒険者と司教の従者がいる。

 しばらく様子をうかがっていると、7人が移動を開始した。

 これから王都を離れる心算つもりだろうか?

 門には普段より多い衛兵が検問を行っている。

 特に出ていく人間を警戒しているから、簡単に出られないとは思うけど……。


 兄に捕捉のハンドサインを送った。

 兄から指を2本立てた了解の合図が送られる。

 逃げられる前にアイテムBOXへ収納しようとした所、突然犯人達が地面に倒れた。

 兄から即座に中止の合図がくる。


 私達の目の前で、犯人達は猿轡さるぐつわをされ簀巻すまきの状態になった。 

 けれど、それを実行している人間が見えない。

 これは……もしや、妖精さんの仕業しわざだろうか?

 7人が同じ状態になると、空中からひらりと羊皮紙が犯人の体に落ちる。

 身動き出来ない状態にされているから、危険はないだろうと近付き羊皮紙を取り上げた。


 『アシュカナ帝国の諜報員です。自決しようとしたので、毒消しポーションを飲ませてあります。6人は呪具を設置した実行犯。1人は教会への連絡係でしょう。』


 羊皮紙には、そう書かれてあった。


「先に妖精が動いてくれたみたいだな」


 納得したように父がうんうんうなずいている。


「妖精って……。ガーグ老の庭にいる?」


「まぁ! 来週は沢山お供え物を作らないといけないわね!」


 奏伯父さんは唖然あぜんとしていたけど、子供達を助けてくれた件を知っている雫ちゃんのお母さんは、お礼の品を考えているようだ。


「えっと、この人達は衛兵所へ連れていった方がいいの? それとも冒険者ギルドの方?」


「事件が起こったのはダンジョン内だから、今回は冒険者ギルドの方だろうな。従魔達に引っ張ってもらおう」


 父が前回、誘拐犯を連行した時と同じように、簀巻き状態の犯人を従魔達とつないでいく。

 源五郎げんごろうに繋がれたのは、司教の従者をしていた人物だった。

 フォレストラビットでの移動はバウンドして大変そうだけど、敵に情けをかける必要はないか。

 私達はそのまま従魔に騎乗し、再び冒険者ギルドまで戻った。

 受付嬢へ犯人を捕まえた事を伝え、ギルド職員に引き渡す。

 

 司教の従者と犯人の接触が判明したので、司教は尋問されるだろう。

 教会とアシュカナ帝国が、実際どんな関係なのかは分からない。

 少なくとも今回表沙汰おもてざたになったお陰で、世間からは何らかの関与を疑われる。

 教会と言えども客商売には違いない。

 評判が下がるのは本意ではないはずだ。

 これから相手国との関係を見直す必要が出てくるだろう。

 本当に利用されているのは、どちらなのか……。


 そんな事を思いながら迷宮都市に移転し、ホームの自宅へ戻ってきた。

 帰りを心配していた雫ちゃんが、全員の無事な姿を見るなり安堵あんどし旭に抱き着いている。


「ただいま、雫」


 旭が雫ちゃんの背中をポンポンとあやしている姿が、兄と重なった。

 2人は案外、似た者同士かも知れないなぁ。

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