【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第750話 旭 樹 再召喚 42 盗み出した肖像画&第二王妃の森

公開日時: 2024年4月8日(月) 12:05
更新日時: 2024年7月31日(水) 15:25
文字数:2,193

 ガーグ老に見張られ外出するのをあきらめた俺は、家の中へ戻りひびき達が戻るのを待つ。

 まだ1時間以上は掛かるだろうと、換金せずにおいた魔石を取り出し魔法を付与していく。

 付与魔石は使用回数が限られているため消耗品と同じだ。

 数は沢山あった方がいい。

 そういえば、鑑定をしたセイさんにLvが20あるのがバレたんだよなぁ。

 Lv50にならないと魔法Lv20まで開放されないから、絶対怪しまれてるはず

 あれから彼は何も聞いてこないけど、響に相談するのを忘れてたわ。


 魔石に魔法を付与し終わる頃、ポチが戻ってきた。

 足輪に収納したポーションを受け取り、どうやって飲ませようか頭を悩ます。

 Lv5の魅惑みわく魔法を掛けたら、問答無用で押し倒される気がしてならない。

 ポーションを飲ませる余裕はあるだろうか?


 そんな不毛な事を考えていると、響達が戻ってきた。

 俺を見て親指を立てているから首尾よく肖像画を盗めたのだろう。

 ゼンから娘達が王宮に拘束され、待ち合わせ時間に遅れると伝えられた。

 王族の肖像画が消えれば、当然犯人を捜索するため王宮の出入りは制限される。

 だが伯爵の義父が一緒なら、それ程待たなくて済みそうだ。

 ゼンがガーグ老へ何かを耳打ちした途端とたん、目に見えてじいの顔色が悪くなった。

 王宮で何かあったんだろうか?

 冒険者ギルドへ移動し娘達を待っている間、付与魔石の魔法Lvの件を響に相談しよう。


「お前、それは完全にバレてるぞ。鑑定してもらったのを、どうしてもっと早く言わないんだ。今更、何と言ってひじり誤魔化ごまか心算つもりでいる」


「いや、色々ありすぎたから忘れてたんだよ。やっぱ、まずいよな~」


「付与した魔法Lvが20なのは、どう考えてもおかしいだろ」


「ええっと、どうしよう?」


「聖が黙っているなら、変に言い訳しない方がいい。このまま有耶無耶うやむやにしておけ」


「それで大丈夫かな?」


「現時点では、それが一番問題ない。もし聞かれた時は正直に話そう」


「分かった」


 魔法Lvに関し、聞かれるまで何も言わずにおこうと決める。

 1時間後、義父達が冒険者ギルドに入ってきた。


「せっかく肖像画を見にきたのに、盗まれて確認出来なかったの。せめて第二王妃が住んでいた森を見てみたい!」


 娘が肖像画を見れず残念そうな顔をして俺達に報告する。

 しかし、後に続く言葉を聞き響と顔を見合わせた。


「そっ、それは残念だったな。犯人が捕まるといいが……。森の中には入れないだろ? 見に行く必要はないと思うぞ?」


 動揺した響が余計な情報を言ってしまう。

 世界樹の精霊王が張った結界を、俺達が知っているわけない。


「あっ、それと王宮で宮廷魔術師の綺麗な女性達に会ったんだよ。また、ヒルダさんに間違えられちゃった。でも私をティーナ様って呼んでたなぁ。きっとエルフの人ね! ガーグ老とも知り合いみたい」


「えっ!? 沙良ちゃんをティーナと呼んだの? そっ、その女性はどんな人だった?」


 俺が産んで直ぐに世界樹の精霊王が隠してしまったから、娘の名前を知っているのは女官達と護衛騎士だけだ。


「え~っと、宮廷魔術師というより騎士みたいな感じの人だよ。年齢は50代くらいかな? 10人いた女性達もヒルダさんを知っているように見えた」


 10人!? なら女官達は、まだ生きているのか?

 先程、ガーグ老の顔色が悪くなった理由は……。


「もしかして……にょ……。女人にょにん達はエルフかも知れないね!」


 50代に見えたなら、護衛騎士達ではなく女官達だろう。

 ティーナの生存を信じ、カルドサリ王国に残っていたのかも知れない。

 それにしても、どれだけLvを上げたんだ?

 王女付きの女官達は、護衛も兼ねているから武の出身者ばかりだが……。

 女官長達に再び会えるとは思わなかった。 

 男の姿で会うのか……。

 彼女達を思い出している間に、娘はさっさと移転してしまった。

 あっ! 森の中に入れたら娘が不審がる。

 俺と響はあわてて、先を歩く娘の後を追いかけた。


「沙良、それ以上は先へ行くな!」


 響が牽制けんせいの声を上げたが、娘は立ち止まらず森へ進んでいく。

 森との境目でシルバーが立ち止まった。

 精霊王の許可がない従魔は、結界に阻まれて中へ入れないんだろう。

 そこで娘も立ち止まるかと思いきや、中に手を突っ込んでいる。

 彼女の手は、何の障害もなく結界の中に入った。

 森の家にある母子手帳を見られる訳にはいかない!

 俺は必死で走り、一歩森へと踏み出した娘の手をつかみ抱き寄せた。


「沙良ちゃん、勝手に森へ近付いちゃ駄目だ。結界は、他者を排除する役目もある。下手をしたら、命の危険もあるんだ」


 俺は、いつになく真剣な表情で娘に危険性を訴える。


「多分、私は入れると思うんだけど……」


「いや、危険な行為はしない方がいい。もし仮にお前が入れたとして、何かあったらどうするんだ? 俺達は助けにいけないんだぞ?」


 追い付いた響が、娘をさとしていた。


「分かった。ここから見るだけにする」


 俺達2人から森に入らない方がいいと言われた事で、娘は大人しくなる。

 そのまま、じっと森を凝視していた。


「マッピングじゃ見えないみたい」


 ぽつりと呟いた言葉を聞き、俺と響は同時にほっと安堵あんどの溜息を吐いた。

 俺が住んでいた森は、精霊の森と同じ結界が張られていたのか……。

 侵入者を拒むだけじゃなく、遠見魔法も阻害する効果があったらしい。

 森の中を見られずに済んで助かった。

 まだティーナであると知るのは、時期尚早しょうそうだからな。

 その後ホームへ戻り、響と夕食後に会う約束をして別れた。

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