【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第690話 迷宮都市 犯人の目的&子供達のお守り

公開日時: 2024年2月8日(木) 12:05
更新日時: 2024年6月1日(土) 14:09
文字数:2,885

 白雪姫の衣装を母にも手伝ってもらい、3人分完成させる。

 白雪姫・魔女・王子様の分は出来たので、後は小人? 役だけだ。

 型紙は既にサヨさんが起こしてくれたから、裁断と縫製は母に任せる事にした。

 あかねを連れてサヨさんを華蘭からんへ送り、父達を迎えにガーグ老の工房へ。

 対局中だったシュウゲンさんとガーグ老が終わるまでガルちゃん達と遊び、お礼のショートブレッドを渡しホームの実家に戻る。


 しずくちゃんを狙った犯人達から聞き出した情報を共有するため、兄に念話の魔道具で実家へ来てほしいと伝え、セイさんにも通信の魔道具で連絡。

 旭家は近所なのでいつきおじさんが直接呼びにいった。

 夕食前だった雫ちゃんが家へ来るなり、嬉しそうに母から献立こんだてを聞いている。

 彼女は最近、料理に興味があるらしく、母の手伝いをすると言い作り方を教えてもらっていた。

 母親の手料理から解放されたいのかな?

 雫ちゃんが料理を覚えれば、旭家の食事は格段に美味しくなるだろう。


 夕食は八宝菜・春巻き・エビチリ・棒棒鶏バンバンジー・ワカメの中華スープ。

 デザートにはダンジョン産のマンゴーを使用した、マンゴープリンも作った。

 先日中華を食べたばかりだけど、雫ちゃんが作り方を教わりたかったようで母にリクエストしたんだよね。

 勿論もちろん、樹おじさん用に鰻の蒲焼と肝焼きも出す。 

 だけど食事から10分経っても、おじさんが鰻に手を伸ばさない。

 双子達と違い苦手な訳でもないのに、どうしてかしら?


 食べないならと横から旭が取ろうとし、怒られていた。

 雫ちゃんのお母さんが強制的に、鰻の蒲焼を樹おじさんの茶碗へ載せる。

 おじさんは一瞬ひるんだ表情になり、溜め息を吐くと兄へ目配せし観念したのか口にした。

 この2人の遣り取りは何?

 不審に思いながら食事を終え、デザートのマンゴープリンを出す。

 そろそろいいだろうと思い、情報を伝えるために口を開いた。


「今日、雫ちゃんを狙った犯人達を冒険者ギルドへ引き渡してきたよ。その前に、茜が犯人達から話を聞き出した内容を伝えるね」


「あぁ、金曜日に引き渡す予定だったのを忘れていたな。オリビアさんから注意されなかったか?」


 兄が引き渡しに2日空いた件を心配したのか尋ねてくる。


「うん、特に何も言われなかったよ。それで犯人達なんだけど、レバンダリニア皇国の冒険者だった。冒険者カードを剥奪はくだつされて、カルドサリ王国に来たみたい。この国は冒険者ギルドが甘いという噂が流れているんだって。迷宮都市で雫ちゃんを狙ったのは、情報屋からどこかの国の王が冒険者の少女・・と引き換えに、大金をくれると聞いたからだと言ってた」


「何だ、その胡散うさん臭い噂は……。こりゃアシュカナ帝国が一枚んでそうな話だな。ダンジョンに呪具を設置するだけじゃなく、犯罪者まで利用しようとしてるのか」


 かなで伯父さんが帝国との関連性を示唆しさする。


「その少女の名前や特徴は伝わっているのか?」


 兄が私の事だと気付きけわしい顔になった。


「名前は知らないみたい。20代で綺麗な容姿というだけで、雫ちゃんを狙ったらしいわ」


「20代……。じゃあ、お前は対象外だな」


 どうせ、背が低いから10代半ばにしか見えないわよ!

 でも今回は狙われる条件から外れて良かったかも?


「帝国は、必要最小限の動きでカルドサリ王国に罠を仕掛けてるな。絡め手でくるのは嫌な方法だ。労せず戦力をぎ落す心算つもりか……」


 いつになく真剣な表情で父が言い募る。

 

鬱陶うっとうしい国だな。さっさと滅ぼすか……」


 1人、物騒な台詞せりふを吐く樹おじさんの言葉は聞かなかった事にしよう。

 どうしてそんなに好戦的なの?


「取りえず、私達のパーティーで少女の外見に一致するメンバーは雫ちゃんと茜ね。茜は心配いらないけど、雫ちゃんは今後も狙われると思うから皆で守りましょう。ただダンクさん達を襲った冒険者はまた別みたいで、こちらも注意が必要だと思う」


「12人の冒険者か……。マジックバッグを盗んだのなら、単純に金目当ての犯行かもな。それにしてはリスクに見合わない行動だが、目先の利益に目がくらむような人間の心理は理解出来ん。なんにせよ、他領の冒険者が増えているのは確かだろうから、俺達も出来るだけ単独行動は控えよう」


 最後に兄がそう話を締めくくる。

 雫ちゃんは不安そうな顔をしていたけど、旭と樹おじさんが大丈夫だと言い肩に手を置いていた。

 私は子供達の方が心配なので、何かお守りになる物を準備しよう。


「樹おじさん。魔石にドレインの魔法を付与して下さい。あぁ、それと従魔達のポシェットをマジックバッグに、お願い出来ますか?」


 換金しない摩天楼まてんろうダンジョンに出現する魔物の魔石と、〇ーターラビットと人参の刺繍ししゅうが付いたポシェットを手渡してお願いする。

 

「分かった。魔石は明日、付与して渡そう」


「ありがとうございます」


「沙良お姉ちゃん。従魔用のポシェット作ってくれたんだ。お父さんのLvが45になったから、沢山入るね。この刺繍も可愛い~。ありがとう!」


 樹おじさんへ渡したポシェットをのぞき込み、雫ちゃんが嬉しそうにお礼を言う。

 アイテムBOX持ちのお母さんがいるから、マジックバッグはフェイク用に持っている30㎥の物だけだ。

 45㎥のマジックバッグが3個増えるので、従魔達が張り切りそうだけど……。

 アレクと源五郎げんごろうは、2人を長く乗せているから無理はしないと思う。

 樹おじさんがマリーから落ちないかだけが心配だよ。

 その後、実家を後にしそれぞれのマンションへ帰る。

 といっても全員が私の家で寝るんだけどね。

 竜の卵に魔力を与えたら就寝。


 翌日、月曜日。

 ダンジョン攻略へ行く前に樹おじさんから渡された付与魔石を、『お菓子の店』の子供達に渡しておいた。

  

「悪い人がいたら、このお守りを手にして眠るようにお願いするといいよ。1人ずつ用意したから、兄妹に渡してあげて」


「お守り? よく分からないけど、魔石を握ってお願いすればいいの?」


「ええ、きっと守ってくれるわ」


 お守りの意味が分からない子供達は、きょとんとした顔をして渡した魔石を自分達の巾着へ大事そうに入れている。

 父に鑑定してもらった魔石はドレインが30回使用出来るので、しばらくは効果を発揮するだろう。

 買い出しに外出する母親達も心配だったため、『肉うどん店』へ寄り同じ事を伝えてお守りを渡した。

 『製麺店』の従業員は、元冒険者でLvが高いから大丈夫だろう。

 痩せていた皆も今は体格が良い。

 特に麺打ちをしている人は腕が太くなっているようだしね。


 うちの従業員と子供達に手を出したら、ただじゃおかない。

 何もない状態で他国に放り出してやるから!

 マッピングの移動範囲が増えたので、現在は一度に2,200km移転が可能だ。

 アイテムBOXに収納すれば、本人の記憶がない間に他国へ移動させられる。

 何が起こったか分からない内に違う場所へ飛ばされたら、恐ろしくてカルドサリ王国には二度と戻らないだろう。


 不穏な事を考えていたら、シルバー達がすり寄ってきた。

 あぁ、心配かけちゃってごめんね。

 この子達は言葉にしない私の気持ちも読み取るから、考えていた内容が伝わてしまったみたい。

 安心させるように頭をで気分を落ち着かせると、ダンジョン攻略へ向かった。

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