【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第271話 迷宮都市 サヨさんにリーシャの父親について相談

公開日時: 2023年3月8日(水) 12:05
更新日時: 2023年8月8日(火) 16:22
文字数:2,090

「最後にサヨさんに親としての意見を聞きたい事があるんです。私、転移して直ぐにリーシャの家から家出してきたんですけど、この体の本来の持ち主は継母に虐待されて亡くなっていました。父親はそれに全く気が付いていなかったんです。当時のリーシャは12歳でしたが、10歳くらいの体重しかなくて痩せて顔色もかなり悪かったのに……。食事もろくに与えられていなかったようで、栄養失調になっていました。更には、全身があざだらけになっていたんです。継母から暴力を頻繁ひんぱんに受けていたようですね。親として、そこまでされている子供の様子に気が付かない事ってありますか?」


「いいえ、自分の子供の様子に気が付かない親はいません。再婚していたなら尚更なおさら、娘の状態には気を付けるべきだと思いますよ。その父親は親として失格でしょうね。落第点もいい所です。貴方が家出をして、冒険者として生きてきた理由が分かりました」


「何も言わずに家を出たんです。私も父親には同情出来なくて、ましてや自分の娘の姿をした私が事情を説明しても12歳の子供が言う事を信じてくれるはずはありません。ただ突然いなくなった娘の事を、きっと今でも探していると思うんです。一度会いに行くべきか迷っていて、会うとしても全ての事情を話すべきなのかどうか……。親になった事がないので、どうすればいいか相談に乗ってもらいたいんです」  


「確かに父親はいなくなった娘を探している事でしょう。父親の気持ちに整理を付けさせるために、一度会った方がいいわね。私は既に娘が亡くなった事も正直に話す方が良いと思います。残酷なようだけど、事実は事実として受け止めるべきだわ。折角せっかく会えた娘の孫たち2人に不自由な思いをしてほしくないですからね。貴方は何も悪くありませんよ、心配なら私も一緒に公爵邸に付いていきます」


「そう言ってもらえてようやく心の荷が下りました。ずっとリーシャの父親の事が気掛かりだったんです。今の攻略階層が終わったら時間が出来るので、父親に会いに行ってきますね。そして正直に全てを話してきます。転移者と言って理解してくれるか分かりませんが、いざとなったら私はホームで何処どこにでも行けるので大丈夫です」


 サヨさんに相談して良かった。

 親の立場からの助言が欲しかったのだ。


 私は部外者で当事者ではないから当時の対応こそ間違いないと思っていたけど、その後に娘が行方不明になった父親の気持ちを考えると思うところもあった。


 ただどうしても、虐待に気が付かなかった馬鹿な親という印象がぬぐえないまま、今日まできてしまっていたので今後の対応が決まってほっとする。


 それにサヨさんから、身内として公爵邸に一緒に付いてきてくれると言ってもらえただけで嬉しかった。

 この世界に今まで私達の保護者はいなかったから、とても心強く感じたのだ。


 頼れる相手がいるというだけで安心する。 


「そう、1人で問題ないのね。今日は日本食を楽しみにきたのに、もっと嬉しい事があって本当に長生きして良かったと思える日だったわ。沙良さんの料理も美味しかったし、日本に残してきた娘の話も聞けたしね」


 あぁそうだ、これは言っておかなければ。

 この世界で長く生きてきたサヨさんだけど、日本での家族を忘れた事はないだろう。


 末娘だった母の事が、何より気掛かりだったに違いない。

 サヨさんが60歳で亡くなった時、母は20歳だった。


 遅くに出来た子供なので、かなり可愛がってもらったそうだ。

 そう母から聞いた事が一度だけあった。


「母の事なんですが……。実は3ケ月後にLv30になるので両親を呼ぶ予定なんです」


「えっ? 美佐子みさこに会う事が出来るの?」


「はい、父親も一緒なので義理の息子にも会えますよ」


「あら本当に、夢でも見ているようだわ。じゃあ3ケ月後を楽しみに待っていますね」


 そう言って、サヨさんは再び涙をはらはらこぼした。

 私は何も言わずにハンカチを差し出す。

 

「ええ、きっと母も喜ぶと思います」


「私に会うより、息子と娘に会う方が嬉しいと思いますよ」


 今日はサヨさんと私と兄にとって特別な日になった。

 気付いた兄に感謝だ。


 サヨさんとの時間は、あっという間に過ぎていく。

 私達のお祖母さんはとても素敵な人でした。


 食後に抹茶と饅頭まんじゅうを出したら、サヨさんが何気に一番感動していたところが面白い。


 女性は甘い物には目がないからね。


 異世界では和菓子を、どれだけ食べたくなっても我慢するしかなかったんだろう。

 お墓参りの時に母が必ず墓前に和菓子を準備していた事を覚えていたので、サヨさんは甘党だと確信していたけど当たっていたようだ。 

 

 どら焼きや羊羹ようかんの他に緑茶をお土産に渡し、今度はスーパー銭湯に一緒に行こうと約束してサヨさんを自宅まで送り届ける。


 今日は、ミリオネの町・リースナーの町の子供達に久し振りに会って成長した姿が見れた。 

 異世界の常識も沢山分かったし、母方の祖母にも会う事が出来るなんて思わなかったよ。


 父親について助言もしてもらい充実した1日となりました。


 3ケ月後に両親を召喚するのが非常に楽しみだ。

 でもその前に2人を早く結婚させておかなくちゃ。


 私が背中を押してあげよう。

 理解のある妹で良かったね!

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