地下8階の安全地帯に到着すると、テントが5個張られていた。
俺達は新参者らしく、隅の方にマジックテントを設置する。
午後10時。
地下8階を拠点としている冒険者達は、夕食を食べ終え既に活動を中止していた。
挨拶をするのは明日になるだろう。
テントに入ってホームの自宅に戻りトイレ休憩。
テントから出て、本格的に地下8階の攻略開始だ。
沙良は今出現しているオリハルコンゴーレムを全て狩りたいのか、やる気満々で走り出す。
まぁ1体、金貨200枚(2億円)だ。
毎回宝くじに当たるような物だから、沙良のテンションが上がるのもよく分かる。
って、また俺を置いて行くんじゃない!
お前はアンデッドに対処出来ないだろうがっ!
走り出した沙良の後を追い越して、索敵した魔物をホーリーで魔石に変えていく。
床に落ちた魔石は、沙良が拾い集めてマジックバッグに収納している。
時々進行方向を沙良が誘導しオリハルコンゴーレムの下へと辿り着くと、サンダーアローを楽しそうに撃っている姿が目に映った。
この階層では、出番が殆どないからLv上げは難しいだろうな。
3時間後。
安全地帯のテントに戻り、ホームの自宅に帰って食事の時間だ。
今日のお弁当は、春巻き・アスパラのベーコン巻き・ネギ入り卵焼き・かぼちゃの煮物だった。
豚汁とほうじ茶と一緒に大盛ご飯を完食する。
再びテントに戻って攻略開始だ。
この階層も特に危険な魔物はいないので、沙良は散歩気分でダンジョン内を歩いている。
やる事がなくて暇なんだろう。
マッピングで魔物を確認しているのか、周囲に魔物がいない時は歌まで歌っている。
頼むから『森のくまさん』を楽しそうに歌うのは勘弁してくれ!
俺のやる気が大いに削がれるだろうが!
その代わりオリハルコンゴーレムが近付くと、目をキラキラさせて嬉しそうな表情になるので直ぐに分かる。
きっと沙良の目には、金の塊にでも見えているんだろうな。
まぁそういう俺も、オリハルコンゴーレム見るとテンションが上がるんだが……。
早くオリハルコン製の解体ナイフの注文をしたくて仕方がない。
ミスリル製との切れ味の違いも試してみたいしな!
切れ味について俺は少し煩いんだ。
ナイフとメスとの違いはあるが、皮膚を切開するのは同じだ。
メスの方が長年使い慣れているが、異世界に医療用のメスはない。
魔石を取るだけの範囲なら、実は医療用のメスの方が優れているんじゃないかと思う。
まぁ毎回手術時に新品の刃を交換するメスと、何度も使用する解体ナイフとは用途が違い過ぎて比べるのは間違っているんだろうが……。
攻略時間を終えて、朝5時にホームの自宅に戻った。
翌日。
昼過ぎに起きた沙良から、攻略時間をこのまま夜間で継続したいと話があった。
地下1階の時のような、魔物の取り合いになるのが嫌だそうだ。
確かに1体2億円のオリハルコンゴーレムは出現数が限られるので、俺は勿論賛成する。
何度も思うが、こんなに稼いでもお小遣いが3,000円なのはどうなんだ??
今年55歳になる、おっさんの小遣いの金額じゃないだろう……。
切実に1万円くらいは欲しいと思ってもバチは当たるまい。
特にこの地下8階は、殆ど俺が魔物を倒しているんだし。
これは値上げ交渉のチャンス到来か!
いや最近金貨1枚(100万円)出して買った、ミスリル製の解体ナイフの出番がないと沙良がブツブツ言っていた。
これからオリハルコン製の解体ナイフも注文する心算だから、交渉するのはまた別の機会にしよう……。
妹に男のロマンは理解出来ないようだからな。
無駄金を使っていると思われている。
解体ナイフを必要としない階層だから仕方ない。
ゾンビもグールもホーリーを掛けると、消えて無くなってしまうのだ。
浄化作用が凄すぎる。
これはMP値が高いからなんだろうか……。
教会のシスターは、魔物退治はしないがホーリーが使用出来るか不明だ。
お布施を貰って治療が出来るのだから、光魔法のヒールは使えるんだと思う。
異世界にも悪霊退治の仕事は存在するのか?
ダンジョンを攻略する以外、ホームで生活している俺達には圧倒的に異世界の情報が不足している。
少し調べてみた方がいいだろうか……。
この日の夕食はカツ丼だった。
沙良、お前は本当に分かり易い妹だよ。
これで俺に地下8階の攻略を頑張れってか?
まぁ好物だし美味しいから、ありがたく頂くが。
かつ丼より、金をくれ!
ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!