【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第786話 迷宮都市 地下16階 アマンダさんからの依頼 2 メンバーへの報告

公開日時: 2024年5月14日(火) 15:07
更新日時: 2024年9月5日(木) 13:30
文字数:2,005

 テントから出て皆の所に戻ると、難しい表情をした私に気付いた兄が小声で問い掛ける。


厄介やっかい事か?」


「うん、少し複雑な相談だった。戻ってから話すよ」


 当事者がいない場で話す内容じゃないので、メンバーを連れホームの実家に行く。

 いつきおじさんは実家で母の料理を食べていたから、そのまま帰らず残ってもらった。


「ええっと、アマンダさんから依頼があったんだけど……。彼女はリザルト公爵令嬢じゃなかったみたい。エンハルト王国の出身なんだって」


「エンハルト王国?」


 兄が聞いた事もない国名に驚いた表情を見せる。

 うん、私もずっとカルドサリ王国の貴族だと思っていたからね。

 何故なぜ、出身を秘密にしていたのか分からないけど……。


「確か、その国の王女が数百年前リザルト公爵に嫁いできたんじゃないか?」


 伯爵のかなで伯父さんが補足説明をしてくれた。

 あぁ母方の親戚とは、そういう意味か。

 じゃあ、アマンダさんはエンハルト王国でも高い身分なんだろう。

 貴族だから庶民とは結婚出来ないし、見た目がエルフの樹おじさんなら大丈夫だと思ったのかな?

 エルフの身分制度は詳しくないけど、ガーグ老が姫様と言っていたからヒルダさんは王女で間違いない。


「母方の親戚だと言ってました。カルドサリ王国へは結婚相手を探しに来たらしく、親から婚約者を連れてこいと言われたそうです。相手を見せるため一度国に帰る必要があって、その相手に……」


「まさか、お前に来いと!?」


 以前アマンダさんから冗談っぽく、お嫁に来てほしいと言われた件を覚えている父が声を上げる。


「私じゃなくて……。樹おじさんに、お願いしたいそうだよ?」


「はああぁ~!? 俺かよ!」


 突拍子もない依頼内容を聞いて、樹おじさんが驚き絶叫した。

 

「私の実の母と紹介したから、女性だと思ってるみたいだけど……。即答はせず、返事は保留にしたの。行くかどうかは、おじさんが決めてね。あっ、その場合は私も同行する必要があるそうだよ」


「いや、そりゃどう考えても無理だろう。俺は既に結婚してるし……」


勿論もちろん、本当の結婚相手じゃなく、婚約者のフリをしてほしいんだと思う。依頼料も払うって」


「そもそも、樹おじさんが女性化出来るのは50日間だけだろ? 他国へ行くのに、往復を考えたら期間が足りないんじゃないか?」


 兄がそう意見を述べる。

 世界地図を見た限り馬車移動じゃ間に合わないだろうなぁ。

 ワイバーンなら、1日でどれくらいの距離を移動出来るんだろう?


「あぁ、それは多分問題ないと思う。アマンダ嬢は……」


 言いかけた樹おじさんが黙り込む。

 何かを察したシュウゲンさんが話題を変えた。


「エンハルト王国なら青龍がおる国だの。国中に運河が張り巡らされて、非常に美しかったぞ」


 長生きをしているドワーフのシュウゲンさんは、エンハルト王国へ行った事があるようだ。

 そして青龍がいるらしい。

 西大陸なのに? 四神なら白虎が定番なんだけどなぁ~。

 

「あぁ青竜王がいましたね」


 青龍の言葉にセイさんが反応を示す。

 すると今度はセイさんの言葉に、父と樹おじさんが顔を見合わせた。

 青龍と青竜王の違いは何? そして水竜とは違うの?

 それまで黙ったまま、話を聞いていた雫ちゃんのお母さんが口を開いた。


「あなた。一度、詳しい事情をアマンダさんから聞いてみたら? 依頼料も払ってくれるそうだし」


 おや? 一番反対すると思っていたのに、妙に乗り気だな。

 女性化した樹おじさんを見たくないんだろうか?

 夫が私そっくりでそばにいたくないとか?

 夫婦の事はよく分からないけど、お互い別人になって妙な気分だったりするのかしら?


「えっ? それじゃ約束は……」


「あら、散々さんざん人を待たせておいて自分の都合を優先させるの?」


「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……。折角せっかくだし痛くない方が……」


「あなた、子供達の前よ?」


「すみません」


 2人の会話がさっぱり理解出来ない。

 母と父はあきれた表情をし、シュウゲンさんはニヤニヤ笑っている。

 あかねはぷっと吹き出していた。

 奏伯父さんは、何とも言えない顔をしてるような?

 気になり兄にどういう意味か尋ねると、お前は知らなくてもいいと言われた。

 この場で分からなかったのは、セイさんとしずくちゃんと旭だけのよう。

 3人共、私と一緒できょとんとしている。

 

「じゃあ、依頼を受けてきてね!」


 どうしてそんな結論になったのか……。

 樹おじさんがエンハルト王国へ行くのは賛成のようだ。

 

「いや、沙良が一緒に行くなら俺も同行しよう」


 当然、過保護な兄がついてくると言う。


「それなら私も行きましょう」


 続いてセイさんが、


「心配だから私も行くよ」


 更に茜まで来るらしい。

 父は口を開こうとして、母ににらまれ何も言えなかったようだ。

 最近、勝手な行動を取ったばかりだからね~。

 また他国へ行くのは母が許さないだろう。


「明日、アマンダさんに聞いてみるね」


 樹おじさんの意見は尊重されず、婚約者のフリをする事が決定した。

 大丈夫かな……。

 何だかとても不安に感じるのは気の所為せいかしら?

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