月曜日、夜9時。
冒険者ギルド前の乗合馬車に乗りダンジョンに到着。
地下9階の地図(銀貨90枚)を持って、入場料銀貨1枚(1万円)を払いダンジョンに入る。
地下1階から地下9階まで最短距離で駆け抜けた。
地下9階に辿り着くと、沙良がマッピングで最初の魔物を見付けて走り出す。
【ダンジョン地下9階 常設依頼 C級】
ケンタウロス1匹 金貨10枚(魔石・槍・本体必要)
ユニコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バイコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バジリスク1匹 金貨10~13枚(魔石・本体必要)
やけに魔物の種類が少ないな。
そして何で馬系ばかりなんだ?
だがまぁ、初見の魔物を見るのは楽しみだ。
最初に接敵したのはケンタウロス体長3m。
こいつは大きな突撃槍を構えて突進してきた。
沙良の魔法Lvも上がり魔物に対する対処も上手くなってきたので、俺は後ろから討伐する様子を見守る。
本当は初見の魔物は俺が最初に討伐して危険かどうか判断したい所だが、余り過保護にすると沙良もつまらないだろう。
沙良が眉間に魔法を撃って倒した。
上半身が人型のケンタウロスだが、魔物だと思っているのか狩る事に忌避感は無いらしい。
まぁ人型と言えど、毛むくじゃらでは人間には見えないだろう。
この魔物、本体も換金対象になっていたが必要なのは馬の皮部分だけだと思いたい。
あぁ馬肉は日本でも食べられていたか、上半身の人型部分の肉は……考えるのはよそう。
あまり良い結果になりそうにない。
沙良は横倒しになったケンタウロスの頸動脈を槍で突き刺し、しっかりと血抜き処理をしていた。
こいつは何も考えないんだろうな。
そもそも、ケンタウロスの肉を食べるという発想自体しないかも知れない。
大きな突撃槍を手に持って珍しそうに振り回している。
同じ槍だから使ってみたいのか?
お前の身長じゃ使い辛いだろうに……。
Lvが上がり筋力も上がった所為なのか、軽々と持ち上げてグルグル回して遊んでいた。
男性でも重そうな槍を振り回す姿を見られると困るな。
「沙良、その突撃槍は換金出来るみたいだから使うのは止めた方がいいぞ」
「うん、分かった。ちょっと私には大きいみたいだし。これ、リビングアーマに持たせたら格好いいかも!」
そう言って沙良はアイテムBOXからリビングアーマを取り出し、突撃槍を手に持たせて満足そうに頷いている。
おっと!
リビングアーマの事を思い出してしまったか。
この話題は藪蛇だったな~。
「ねぇねぇ、見て見て! 凄く素敵でしょ?」
妹の感性についていけない俺は、曖昧に返事をしておいた。
「あ~まぁ、槍を持った方がよくは見えるかもな」
「騎士って感じがする。幅の大きな廊下に左右並べて中心を歩いたら、なんか優越感に浸れそう。そう思わない?」
「全く全然思わない。さっさと仕舞って、次に行くぞ」
「お兄ちゃんには、私のロマンが理解出来ないんだね!」
理解出来てたまるか!
ぶ~ぶ~言いながら、ケンタウロスとリビングアーマを収納すると次の獲物を探し出す。
「ユニコーン発見! どうしよう私、懐かれちゃうかも?」
真っ白な一角の馬を見て、沙良は瞳をキラキラさせながら期待に胸を膨らませている。
どうせユニコーンに乗ってみたいんだろう。
が、魔物だからそれは無い。
嬉しそうに走り出す沙良の後を追って、ユニコーン体長4mの前に躍り出た。
沙良の期待は大きく外れ、ユニコーンは俺達を見ると襲ってくる。
ほらっ、そんなアホ面晒してないでさっさと魔法を撃たないと馬に蹴られるぞ?
襲いかかってくる魔物に身の危険を感じたのか、漸く沙良が魔法を撃った。
「おかしいな? 今は処女なのに……」
首を傾げながらそう呟く。
コメントし辛い会話は止めてくれ。
そんな事を言ったら俺も童貞だ。
それにしてもダンジョンにユニコーンとは、これ如何に?
不釣り合いな場所での出現は、ダンジョンマスターがいる可能性があるかもなぁ。
沙良は地下10階にいるのは、絶対ドラゴンだと言い張っているが……。
そもそもドラゴンが入るような大きな空間が、このダンジョンにはなさそうだ。
ドラゴンじゃなくてがっかりする沙良を、慰める方法を今から考えておいた方がいいか?
ダンジョンマスターがいたら、怒って殴りそうな気がする。
そんな事で怒られても相手が困るだろう。
地下10階の情報は何もないので、実際何がいるのかは不明だ。
俺はメタルスタイムやユニコーンを見て、地球の人間がいるんじゃないかと考えていた。
ファンタジー小説にもよく出てくるし、この世界は魔法にダンジョンがあるから確率は高い。
もし地球の人間が召喚されて、ダンジョンマスターをしているんだとしたら……。
俺は沙良に召喚されたので異世界生活を満喫しているが、ダンジョンに召喚された人間は多分外には出られないだろう。
それはとても哀れだ。
魔物が出てくる事を願おう。
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