【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第520話 冒険者ギルドマスター オリビア・ハーレイの災難 5 マケイラ家の当主ガリア様への連絡&簀巻きにされた犯人への尋問

公開日時: 2023年8月19日(土) 12:05
更新日時: 2024年3月2日(土) 14:10
文字数:2,032

 念話用の魔道具を握り締め魔力を注ぎ起動させると、数秒で相手の声が聞こえた。


「オリビア、久し振りだね。こんな時間にどうしたんだい? まだ冒険者ギルドにいる時間だろう」


 マケイラ家の当主、ガリア様の声は男性にしては少し高く優しい感じがする。


「ご無沙汰ぶさたしております。迷宮都市にて問題が起きたため連絡させて頂きました。ダンジョン内にアシュカナ帝国の者が複数の呪具を設置し、魔物の数が異様に増える事態となっています。現在呪具の解除作業中で、これは一両日中に解決する見込みです」


「なんだと!? ダンジョンに呪具を設置するとは……。あの国が西大陸を狙っている事は把握していたが、今回は戦力の様子見だろうな。既に呪具の解除中であるなら、司教を手配済みなのか? 良く教会が、そんなに早く動いたものだ」


「あっいえ、教会の司教は呼んでおりません。呪具を解除出来る品を冒険者に渡し、人海戦術で早期収拾を図る心算つもりです」


「呪具を解除出来る品?」


「それに関しては薬師ギルドの秘匿ひとく事項となりますので、いずれ改めてご連絡致します。呪具を設置した犯人は、現在王族を護衛している影衆達が捕縛しました。これから尋問を行い、アシュカナ帝国の狙いを調べる所です」


「オリビア、何故なぜカーサから連絡がないんだ?」


「父は現在他国に出張中でございます」


「こんな時に当主不在とはな。アシュカナ帝国の諜報員なら、そう簡単に口は割らないだろう。私も、急ぎそちらに向かう。それまで犯人は死なせないよう注意してほしい」


「了解しました。ご到着をお待ちしております」


 会話の終了と共に魔道具へ魔力を注ぐのを止め、急いでハイエーテルを飲み干し魔力を回復させる。


 本当に、この念話の魔道具は燃費が悪い。

 ステータスのMP値を見ながら使用しないと、直ぐにでも魔力が0になり昏倒しそうだ。

 少々魔力酔いの症状が出ているな……。

 

 父が不在だと聞き、マケイラ家の当主ガリア様が迷宮都市へきて下さるようだが……。

 あぁ、あの方は確か魅惑魔法を使用出来るのだったな。

 諜報系の名家にはよく現れる血統魔法らしい。


 先程の会話は、尋問を任せろという意味だろうか?

 

 摩天楼のダンジョンがある場所から迷宮都市まで、グリフォンなら5日前後。

 ガリア様が到着する前に、なるべく私の方で多くの情報を引き出したい。


 部屋から出ると、屋敷の地下へ続く階段を降りていった。

 この地下には監禁部屋が幾つかある。

 今回、簀巻きの状態で届けられた犯人達はその部屋にいるだろう。


 階段を降りて直ぐ、待機していたまとめ役に声を掛けた。


「進展はあったか?」


 既に尋問を始めているだろうと思い尋ねる。


「まだ、一言も話をしません」


 返ってきた返答に、まぁそうだろうと思う。

 そんなに簡単に口を割るようでは、他国に潜入は出来まい。


「私もその者達に会ってみよう」


「はっ。その……多少、お目汚しかと思いますが……」


 拷問で、ひどい状態になっているという事だろうか?


「構わない。案内してくれ」


 纏め役は一瞬迷うような表情を見せたが、あきらめたのか短く溜息を吐き、


「こちらです」


 と言い監禁している部屋へと足を進めた。


 案内された部屋には、簀巻きにされた12人の男性が床に横たわっている。

 見た瞬間、絶句した……。


「これは……かなり酷いな……」


 自決しないよう猿轡さるぐつわを噛まされた状態なのは分かるとして、簀巻きにされた体は暗器を警戒してか服を脱がされていた。

 そして何故なぜか、ある一部分だけ露出ろしゅつしている。


 これは羞恥心をあおる狙いだろうか?

 影衆達は何を考えて、息子をさらした状態にされたのか……。


 この部分は鍛えようがないから、容赦ようしゃなく踏ん付けろと?

 いや、それは私の方にもダメージがきそうだ!


 隠す事も出来ず女の私に見られる事を避けたいのか、12人が仰向けの状態からうつ伏せになろうと身をよじる。

 が、残念な事に影衆達の仕事は完璧で全員が数珠繋じゅずつなぎにされていたため、それも叶わなかった。


 弱点をさらしたままの状態でいるのは、かなりの恐怖だろう。

 目に楽しい光景ではないが……。


 12人の容姿は、アシュカナ帝国人そのものだった。

 今までは姿変えの魔道具を使用し人族の姿になっていたのだろう。

 

 浅黒い肌で耳は少しとがり、赤い瞳が特徴的な種族だ。

 カルドサリ王国内では見かける事がない色彩をしている。

 またエルフ同様、長命であると聞く。


「目的は何だ?」


 私は簡潔に質問をした。

 当然、彼らは無言のままだ。


「鞭を持ってこい」


 纏め役に指示を出し、私は彼らの表情が強張った事を確認する。

 影衆達が、ここまでお膳立てしてくれたのに何の成果も出せないままでは困るからな。


 手渡された鞭を一振りし、一点目掛けて大きく振り上げ打ち下ろした。

 打たれた男性が苦痛に喘ぎ、目から涙を零している。


 悪いが、手加減はなしだ。

 この程度で死にはしない。


 お前達がやった事に比べれば、可愛いものだろう。

 呪具を解除する手段がなければ、今頃冒険者達に大量の死人が出ていたはずだ。


 サラ様が、巻き込まれたと思うとゾッとする。


 王族を危険にさらした罪は重いぞ?

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