実家から少し離れた場所にある畑には水源がなく、母はペットボトルに入れた水を運ぶのが大変だと言っていたからね。
100坪もある畑の水遣りは、確かに骨が折れそうだ。
他にも畑に使用出来る魔法を、後で幾つか教えてあげよう。
まぁ要はイメージを強く持てば、大抵なんとか出来るのが魔法の良い所。
きっと重たい耕運機をかける必要もなくなると思う。
畝を起こすのも魔法でなんとか出来るかも知れない。
畑の状態に問題がなかった事を確認し、再びミリオネの森へと移転する。
午後から3時間程。
両親に、ベア・ウルフ・ボアを積極的に狩ってもらった。
次にダンジョンの魔物である、リザードマンとファングボアをアイテムBOXから出して2人に討伐をお願いする。
多分、迷宮都市でのC級昇級試験の魔物は、この2匹じゃないかと踏んでいるのだ。
ダンジョンの外で狩れる魔物では、C級冒険者になれない気がする。
ゴブリン・スライム・モグラ・ドブネズミだと、E級冒険者が狩る魔物だからね。
迷宮都市で冒険者になった子供達は、一度都市を離れ地下10階までのダンジョンがある町で経験を積む必要がありそうだ。
リザードマンを出した瞬間、兄がピクリと動いたので笑ってしまう。
もう本当に大嫌いらしい。
父の剣術は、それはもう鮮やかでLvが2だとは到底思えない。
日本にいた時、どれくらい鍛錬をしていたんだろう?
母は小豆の種を使用し、一度拘束をしてから魔法や槍で倒している。
接近戦を父のようにする必要はないので、安全に考慮した方法で倒す事が出来るならそれでいい。
最後にナイトメア(男性体)を出し、母に魅了の魔法を受けてもらった。
ふらふらと魔物に近付いていく姿を見て、父が母を腕の中に抱き締める。
母が魅了の魔法を習得した所で、兄が浄化をし魔石だけ残して魔物は消えた。
それを見た父が、顎が外れるんじゃないかと思うくらい口を大きく開けて絶句している。
「……賢也。沙良の能力も大概だが、お前のその浄化能力もヤバ過ぎるぞ! 何で魔物が跡形もなく消えるんだ!? いいか、浄化の能力は知られないように注意しろ」
父が珍しく兄に警告をしていた。
浄化をする事が出来るのは教会の司教しかいない。
でもそれを父は知らない筈なのに……。
これも父親の勘だろうか?
「あぁ、分かってる。人前では使用しないから大丈夫だ。知っている人間も、信用出来る冒険者だし問題ない」
父からの注意に兄はそう答えると、再び不安げな表情を見せる母の両手を軽く握り締めた。
すると母がほっとしたような顔になる。
「賢也がそう言うのなら大丈夫ね」
おや?
私の時と随分対応が違うような……。
「これでテイムが出来るようになったから、何の魔物にするか考えておいてね」
「はあっ!? それはどういう意味なんだ?」
父が驚いているので、説明するのを忘れていた事に気付く。
「魅了の魔法を覚えると、魔物がテイム出来るんだよ! でもナイトメアは男性体だから、女性しか魅了の魔法を習得出来ないのが残念なんだよね~」
私の説明を聞いた父が、理解出来ないとばかりに頭を抱えてしまった。
簡単にテイム出来るなら、それでいいと思うんだけどなぁ。
一体、何が問題なんだろう?
「なんかもう、秘密にする事が多すぎて俺には不安しかないんだが……。もう他には何もないよな?」
そう父に言われたけど、私には思い付かず首を傾げる。
「お兄ちゃん、何かある?」
こういう時は兄に丸投げするに限る。
「さぁ、他には特にないと思う。一番厄介なのは、沙良の時空魔法だろう」
自分の能力の事は棚に上げ、私だけ引き合いに出すとは……。
それを聞いた父が、じっと私の事を見つめてくる。
「沙良、可能な限り大人しくするんだぞ。出来れば、ホーム内に監禁したいくらいだ」
父が怖い事を言う。
娘が大事なのは分かるけど、その発言はちょっとどうかと思うよ!
兄と旭と母が、父の言葉を聞いて苦笑している。
もう!
男性陣が私に過保護過ぎる。
本日のLv上げを終了した時点で、両親のステータスを確認した。
【椎名 響 42歳】
レベル 10
HP 858
MP 858
魔法 特殊魔法(換金・交易・鑑定)
剣術 Lv2
【椎名 美佐子 42歳】
レベル 15
HP 1,248
MP 1,248
魔法 緑魔法(成長Lv0・光合成Lv0・交配Lv0)
魔法 火魔法(ファイアーボールLv0)
魔法 水魔法(ウォーターボールLv0)
魔法 土魔法(アースボールLv1)
魔法 風魔法(ウィンドボールLv0)
魔法 魅了魔法(魅了Lv0)
父は私達がミリオネの町を出る時と同じLvになった。
母は迷宮都市のダンジョン地下10階にいるナイトメア(男性体)を倒したので、Lvが15と一気に上がっている。
属性スライムから受けた4属性魔法も習得済みだ。
2人のLv差は、これから一緒にダンジョンを攻略すればなくなるだろう。
1日で沢山の魔物を倒し精神的にも疲れていると思い、夕方4時にはホームの自宅に戻ってきた。
明日はオリビアさん立ち合いの下で、C級冒険者のスキップ制度を受ける予定。
これだけLvが上がれば、問題なく合格するに違いない。
両親を実家に送り届け夕食の準備をしようとした所、兄に呼び止められる。
「沙良、色々あって少し遅くなってしまったが……。成人おめでとう。プレゼントを渡すから、後ろを向いてくれないか?」
すっかり忘れていたけど、私の誕生日が過ぎていた。
リーシャになってから、何故か誕生日が12月24日に変わったんだよね。
これは私が召喚した兄と旭も同じだ。
きっと両親も誕生日が12月24日になっている事だろう。
全員一緒に誕生日会が出来そう……。
兄に言われて素直に後ろを向くと、首に何かを掛けられた。
感触的にネックレスかなと思い胸元を見ると、ブルーの宝石が付いたペンダントだった。
サファイアだろうか?
高い宝石を買ってくれたみたい。
「お兄ちゃんありがとう! いつ購入したの?」
私が渡したお小遣いでは買えない筈。
マンションをホームに設定した後、自分のお金で購入してくれたんだと思うけど……。
「いや、それは俺がカーバンクルの宝石を加工して作った物だ。イヤリングもあるから、着けてみるといい」
手渡された一対のイヤリングにも、ブルーの宝石が付いていた。
ペンダントと御揃いにしてくれたようだ。
イヤリングを両耳に着け姿見に映してみる。
カーバンクルの額に付いた宝石を加工したとは思えない。
「ああ、それと色違いで他に4セットあるから、服装に合わせて使用してくれ。どうだ? 気に入ったか?」
「うん、勿論だよ! 凄いね~。どうやって加工したの?」
兄に話を聞くと、ライトボールでカーバンクルの宝石を切り出し宝石の本を見ながらカットしたらしい。
満足出来る状態になるまで、数年掛かったと言い笑っていた。
私は、そんなに前からプレゼントを準備してくれているなんて想像もしなかった。
兄の優しさに胸が熱くなり、自然と涙が零れる。
「お兄ちゃん、本当にありがとう! 大切にするね!」
泣き顔を隠すように、兄へ思い切り抱き着いた。
大好きな兄を旭にあげちゃったのは、少し早かったかな?
ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!