月曜日。
今日からまた5日間ダンジョン攻略開始だ。
安全地帯に設置したマジックテントの中で、沙良からカーバンクルの使用する魔法について話があった。
「お兄ちゃん。忘れてたけど、カーバンクルってサンダー系の魔法使わなかったっけ?」
これは俺も失念していた。
額に付いている宝石の事に気を取られていた所為か……。
「そうだな、多分沙良の言う通りの魔法を使う気がする」
「だよね~。じゃあ今日は初めてのサンダー系の魔法習得が出来そう! サンダー系だと金属ゴーレムを感電させて倒せるし、最初は私が倒してみせるよ!」
沙良はやる気満々だ。
妹が変にやる気を出すと、見ているこちらがハラハラするのであまりテンションを上げてほしくないんだが……。
今までゴーレムを倒す事が出来なかったので、新しい魔法を覚えて倒したいのだろう。
Lv上げの為に倒す事の出来る魔物が増えるのは歓迎だ。
しかしサンダー系の魔法は、体に受ける時に俺達も感電するんじゃないだろうか?
MPが高いので耐性はあるだろうが、これは先に俺が試した方が良さそうだ。
ホーム内の自宅でトイレ&休憩後、テントから出て攻略を開始する。
お目当ては当然カーバンクルだ。
沙良は迷いなく、マッピングで捕捉したカーバンクルの下へ走り出す。
カーバンクルからの魔法攻撃を待ってサンダーアローを体に受けると、パチッと音を立てて静電気が走った。
魔法耐性が良い仕事をしてくれているお陰で、体に僅かに違和感を覚えただけだった。
これなら沙良が受けても大丈夫だろう。
ステータスを確認すると、ちゃんとサンダーアローを覚えている。
これで4属性魔法以外の雷魔法を習得する事が出来た。
まぁ、あまり使う機会はなさそうだが。
俺にはライトボールが一番攻撃魔法として使用しやすいからな。
残りは氷魔法か?
光魔法があるのなら、闇魔法もありそうな気もする。
あぁ植物魔法なんてのも定番か。
その後、カーバンクルを魔法で倒すと俺の様子を確認した沙良が再び走り出す。
2匹目のカーバンクルに接近すると、今度は沙良が魔法を受ける。
同じように静電気が走り音を立てるが、沙良は受けた魔法の威力に身動ぎもしなかった。
左耳から右耳へアースボールを撃って倒すと、アイテムBOXに収納している。
ステータスを確認して満足そうな表情を浮かべると、お次はゴーレムとばかりに俺を置いて駆け出していく。
こらっ、2人しか居ないパーティーなんだから1人で行くんじゃない!
本当に、興味がある事には積極的に行動するので困ったものだ。
少し離れた場所でサンダーアローの光が見える。
既にアイアンゴーレムに使用しているみたいだ。
数分後、沙良に追いつくと魔物は横倒しになって地面に倒れていた。
見ると感電している状態で、魔物からはパチパチと音がする。
脳の神経回路が焼き切れて機能が停止したんだろう。
沙良はゴーレムを倒す事が出来てニコニコしている。
どうだ、私にも出来るんだぞと言わんばかりだ。
自分で倒す事が出来ない魔物がいた事が悔しかったのか?
負けず嫌いは異世界でも発揮されたようだ。
その割には魔石取りが俺任せなのはどうなんだ?
分かっているとは思うが、B級の昇格試験時に魔石を取る魔物が出たらちゃんと出来るんだろうな……。
C級冒険者の時とは違い俺の指導ありきで魔石取りをしたら、立ち合いの冒険者は合格させてくれないと思うぞ?
試験を受ける時には、冒険者になって通算9年だ。
1人で魔石取りが出来ないのは問題外だろう。
相変わらず残念な思考回路の妹だ。
B級昇格試験にはまだ数年あるから、それまでに苦手意識を克服出来るようにしないとな。
急にやれと言っても無理だろうから、なんとか自然な流れで自分から行うように調整しなければならない。
医療系ドラマの手術シーン(ニセモノ)さえ、目を逸らしてしまう程血を見るのが苦手だからなぁ~。
最初の相手は哺乳類じゃない方がいいだろう。
だとすると植物系の魔物か?
トレントやアウラウネ、マンドラゴラくらいしか思いつかないが……。
俺は心のメモに沙良の魔石取りの練習を追加しておいた。
その後は地下6階の魔物を全滅させて本日の攻略は終了。
安全地帯のテントに入りホームの自宅に戻る。
新しい魔法を覚えて沙良の機嫌がよいお陰で、夕飯は外食する事になった。
リクエストも聞いてきたので、俺は久し振りに鰻重が食べたいと希望。
沙良も鰻は好きなので、昔から行きつけの鰻屋に向かう事にした。
ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!