【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第733話 旭 樹 再召喚 25 王都の隠れ家

公開日時: 2024年3月22日(金) 12:05
更新日時: 2024年7月14日(日) 11:22
文字数:2,301

 工房を出ると、沙良ちゃんの作ったカルボナーラがテーブルの上に置いてあった。

 ガーグ老達が初めて食べるパスタを、ものすごい勢いで食べ始める。

 皿に1.5人前は盛られた量が、見る見るうちになくなった。

 うんうん、娘の料理は美味しいよなぁ~。

 妻が妖精に準備したのはホットケーキなので、今日は木から落ちずに済んだようだ。


 娘達が工房を後にして直ぐ俺達も行動を開始する。

 義祖父達へ出掛ける事を伝え、ガーグ老と工房から出た。

 ポチを変態させるには広い場所が必要となる。

 ガルムに乗り迷宮都市から離れた場所へ移動して、ポチを風竜に変態させた。

 影衆達の『迷彩めいさい』は、自分が触れている物も見えなくなる便利な魔法だ。

 ガーグ老の体に接触している間、風竜の姿も消える。

 体長20mもある竜の姿が人目に付くと騒ぎになるので、『迷彩』が掛かった状態で空を飛ぶ。


 ガーグ老と同Lvになったポチの移動速度は、かなり速い!

 このままだと風圧で吹き飛ばされそうだから、俺はあわてて風魔法を使用し相殺する。

 わずか10分で王都へ着く頃には、目まぐるしく変わる景色で眩暈めまいがしていた。

 地上に降りた後も、ふらふらする。

 

「姫様。大丈夫かの?」


「ええ、少し驚きました」


 ガーグ老が心配し言葉を掛けてくれたのは、俺が青い顔をしていたからだと思う。

 ひびきは平然としているようだ。

 この速度の竜に乗った経験があるらしい。

 ヒルダは王族だったので、あまり無茶な飛行はさせなかったんだろう。

 男性姿の俺なら問題ないと思ったのか?


 隠れ家まで案内する響の後を付いていく。

 その家は貴族街ではなく王都の閑静かんせいな住宅街にあった。

 4m程ある塀で囲まれているため、少し周囲から浮いていたが……。

 門の扉は使用者登録の魔石があり、血液の登録が必要になる。

 親指をナイフで切り魔石に血を垂らし、習得したヒールで直ぐに治療した。

 中に入ると100坪くらいの敷地面積があり2階建ての家が見える。

 150年経過しても劣化したように見えないのは、トレント資材を使用し建てたからみたいだ。


 第二王妃の予算は思った以上にあったらしい。

 渡された小遣いは、ほんの極一部だったのか……。

 女はドレスや装飾品に金が掛かるからなぁ。

 俺は王都の飲み屋で、酌婦しゃくふの胸元に金を入れるくらいしか使わなかった。

 ガーグ老は良い顔をしなかったが、それくらい楽しみがあってもいいよな?

 いや妻にバレたらまずいから、異世界の出来事は封印しておこう。

 

 家の中に入ろうとしたら、響にもう一度魔石に登録する必要があると言われる。

 おいっ、最初に言えよ!

 2度も痛い思いをする羽目はめになったじゃないか!

 俺は誰かさんのお陰で、痛いのが嫌いなんだ!

 渋々しぶしぶもう一度、親指を切り速攻でヒールを掛けた。

 ガーグ老は以前、隠れ家に来た事があるのか魔石に登録する様子がない。

 俺より先に知っているのは少し釈然しゃくぜんとしないな。


 響が地図を持ってくると言うから、1階のリビングにある大きなテーブル席でガーグ老と待つ。

 普通の家に見えるが、どこから王宮へ行けるんだろう? 地下に続く隠し扉でもあるのか?

 5分後、地図を片手に響が戻ってきた。

 王宮の見取り図をテーブルの上に広げ、第二王妃の肖像画が飾られている場所を示す。

 見覚えがなく、何の建物か聞いたら貴族がサロンに使用している所らしい。

 王宮内に住んでいたが、俺はほとんど第二王妃の宮を出る機会がなかったからなぁ。

 知らない場所の方が多いかも……。


「問題がひとつ。家から通じる道は王の書斎だ。そこから出るには扉を開ける必要があるんだが、当然使用者登録の魔石があり、更に扉の前には近衛が待機しているだろう。中に現国王がいた場合、扉を開けるのは難しい。不在の時を狙う必要がある。中からは魔石へ登録出来ないから、俺も一緒に付いていこう。扉を開ける前に、待機している近衛をドレイン魔法で昏倒させた方がいいんだが……。姿が見えない人物に魔法を掛けるのは無理だろうな。なるべく騒ぎにならないよう、迅速じんそくに処理したい」


「そこは儂の出番だな。意識を失わせるくらい訳もないわ」


「……そうか。では任せよう」


 それから詳細な道順を伝え、王宮警備を担当している騎士達の巡回経路を話していく。

 基本的に響は書斎で待機し、ガーグ老達が肖像画を盗み出し戻るまで動かないみたいだ。


「私は何もする必要がないのですか?」


「姫様は、我らの帰りを家で待って下され。少ない人数で動いた方が良いのでな」


 何だか蚊帳かやの外に置かれたような気分になる。

 

「王が書斎にいるか、どうやって確かめるの?」


「まぁ余程上手く気配を隠していなければ、儂が気付けるであろう。念のため、風の精霊に見てくれるよう頼めばよい」


 あぁ、実体を伴わない精霊なら可能か。

 

「これから、王宮に続く道へ行ってみよう。俺も通った事がないから、利用出来るか確認した方がいい」


 響の言葉にワクワクする。

 秘密の抜け道なんて楽しそうだ。

 彼が部屋の隠し扉を開けると、地下に続く階段が見えた。

 中は真っ暗で光がないと歩くのは困難だろう。

 ライトボールで光源を作り出し付いていこうとしたら、入り口で待てと言われた。


「お前が実際行く必要はない。俺達だけで充分だ」


「姫様。誰も入った事がない道は危険かも知れぬ。ここは大人しく待って下され」


 ええぇ~! 俺だけ、お預けにされるのか!?

 思いっきり不満を顔に出しても響はうなずかない。

 ガーグ老に至っては、ポチに見張るよう頼んでいる。

 はいはい、1人で待てばいいんだろ?

 従魔を見張りに置くなんて、俺はどれだけ信用がないんだ……。

 ちぇっ、俺も一緒に行きたかったな~。

 ここから王の書斎がある場所までは、かなりの距離がある。

 時間を潰そうと、母親の王妃に通じる念話の魔道具を取り出した。

ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート