【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第663話 迷宮都市 薬師ギルドで薬草を換金&竜の卵の石化解除

公開日時: 2024年1月12日(金) 12:05
更新日時: 2024年5月5日(日) 11:31
文字数:2,354

 土曜日。

 兄達と奏屋かなでやで果物を卸した後、しずくちゃんのお母さんと一緒に薬師ギルドへ向かう。

 受付嬢に応接室へ案内され、テーブルの上に置かれたポーションへ3人が浄化とヒールを掛けるのを横目で見ながら、私がヒールを掛けた場合また違う結果になりそうだなぁとぼんやり思っていた。

 癒し草の花が咲くなら、その原料で作られたポーションにも効果が表れるだろう。

 ただ、ここで試す訳にはいかない。

 1人の時に、こっそり実験してみよう。

 兄達の作業が終わる頃、ゼリアさんが部屋へ入ってきた。

 

「ゼリアさん、おはようございます。オリビアさんから話はあったと思いますが、薬草を換金しに来ました。沢山あるんですが、何処どこに出せばいいですか?」


「おはよう、サラちゃん。昨日、オリビアから連絡をもらっておるよ。先週もかなりの量だったけど、更に増えたみたいだね。マジックバッグを持ってきたから、これに入れておくれ」


 先週ならマジックバッグ11個分だ。

 今週はマジックバッグ21個分なので、ゼリアさんが持ってきたマジックバッグに入りきるか心配になる。


「あの~多分、先週の倍の量はあるんじゃないかと思います」


「倍の量とな!? まぁギルドとしては助かるが……、冒険者としてはどうかの。ダンジョンを攻略している事になっておるのか……。一応、薬師ギルドで最大容量のマジックバッグを持ってきたから問題なかろう」


 それならと、アイテムBOXから出した薬草をマジックバッグに入れ替え始める。

 一度テーブルの上に載る分量を出してからの作業だ。

 30分ほど坦々たんたんと繰り返すと、それ以上マジックバッグに入らなくなってしまう。


「ゼリアさん、マジックバッグが一杯になったようです。残りはどうしましょう?」


「100㎥のマジックバッグでも足らないとは……。オリビアは経費をしぶったようだな。こりゃうちのギルドで追加を購入する必要がありそうだわ。申し訳ないが残りは来週にしてもらえんかの」


「はい、分かりました。あと非常に言いにくいんですけど、来週は量が3倍になる予定です」


「そっ、そうかい……。サラちゃんは、薬草採取が相当好きとみえる。またポーションの価格を考えておこうかね」


「はい、是非ぜひよろしくお願いします!」


 実際に薬草を採取しているのは私じゃなくハニー達だけど、従魔登録していないからゼリアさんは存在を知らない。

 本当の事を言う必要もないため、私は提案された言葉に元気良く返事をしておく。

 幾らになるのか楽しみだなぁ~。

 各自代金を受け取り薬師ギルドを後にした。


 ホームへ戻り自室で竜の卵を取り出すと、兄達に最後の石化治療をお願いする。

 昨夜の時点で残り部分が20cmくらいになったから、今日で石化は解除されるだろう。

 兄達が卵にハイヒールを掛けるのをじっと見守る。

 2人が卵に手を触れた所から徐々に石化が治療され、表面に翡翠ひすい色と黄金色が現れ始めた。

 かなり魔力を持っていかれるのか、ハイエーテルを飲んだ2人が苦し気な表情に変わる。

 もう少しだから頑張って!

 5分後、全ての石化を解除した2人が肩で息をしている。 

 私は完全に石化が治療された卵に手を触れ、2人にお礼を言った。


「お兄ちゃん、旭。ありがとう! 後は、卵が孵化ふかするのを待つだけだね~。鳥の卵みたいに、温めた方がいいのかな? こんな大きな卵が入る、孵卵器ふらんきはなさそうだけど……」


「竜の卵だからなぁ。どうやって孵化するのか俺にも分からん」


「そのままよりは、温めた方が良いんじゃない?」


 と旭が言うのでシルバーを呼び卵を温めてもらう。

 兄は直ぐには孵化しないだろうと、旭を連れ病院に行ってしまった。

 私は卵を抱き締め温める事にする。


「頑張ってかえるんだよ」


 すると一瞬だけ卵が弱々しく光った。

 あぁ、大丈夫。

 この子はまだ生きている。

 魔力を与えれば、ちゃんと育つだろう。

 そう考えて、魔力を与えるのはどうしたらいいのか疑問に思った。


 魔法を使用する以外に魔力を使う方法が分からない。

 どうしたらいいのかな?

 私の魔力をあげられればいいのにねと思った途端とたん、急速に意識が薄れていく。

 あれ? 何かこれはやばい?

 次に目が覚めた時、心配そうな顔をする兄と旭とセイさんが近くにいた。


「沙良、目が覚めたのか? 何度呼んでも起きなかったから、心配したんだぞ。何があったんだ?」


「えっと、確か卵に魔力を与えられたらいいなと考えた後、意識がなくなったみたい」


「魔力を与える? そんな事が可能なのか?」


「私も方法は分からないけど、魔力欠乏で昏倒した状態だったんじゃないかな?」


「……理由ははっきりしないようだが、お前は半日以上寝ていた。今は日曜の朝だ」


「えっ! 嘘っ!」


 兄から言われた言葉に飛び起きる。

 時計を確認すると6時だった。

 体調は悪くないようだから炊き出しに行っても大丈夫そうね。

 きっと魔力欠乏になった後、エーテルで回復せず寝た所為せいで魔力酔いにならなかったんだろう。

 卵をアイテムBOXに収納し、一晩中付いてくれていた兄達にお礼を言いあわてて支度を整える。

 昨日のお昼から何も口にしていなかったため、お握りを2個急いで食べ皆を連れ異世界の家へ移転。


 3人は昏倒していた私を心配していたけど、特に問題ない事をアピールし母親達と炊き出しの準備を始めた。

 食事を終え、これから依頼を受けに行く子供達にマドレーヌを渡して見送る。

 家の中へ入りテーブルのひとつにおやつのマドレーヌを置き、お腹が空いたら食べるよう子供達に伝えた。

 クリスマス会の時ドーナツを渡したのを覚えていた子供達は、甘い食べ物だと気付き笑顔になる。

 

 先週教えた『きらきら星』と、『肉うどん店』の子供が教えた『カエルの歌』が弾けるようになったと演奏してくれた。

 皆、少ない時間でかなり練習したのかミスが一度もない。

 演奏を聞いてたメンバーと母親達が、その演奏にしみない拍手を送っていた。

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