【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第241話 椎名 賢也 58 ダンジョン 地下10階 親友との語らい 1

公開日時: 2023年2月20日(月) 18:29
更新日時: 2024年1月20日(土) 21:47
文字数:2,108

 旭に手渡された封筒を開けて、沙良と一緒に読んでみる。


『とても困った事になっている貴方へ。

 すべての元凶は私です。

 この責任を取り、出来うる限りの保障をさせて頂きました。

 まず、いま貴方がいる世界は地球ではありません。

 剣と魔法のファンタジーである所の異世界です。

 そしてとても残念ですがあさひ 尚人なおと様45歳は、お亡くなりになりました。

 貴方は現在カルドサリ王国のハンフリー公爵領にある、リースナー町のダンジョンマスター・・・・・・・・・です。


 あさひ 尚人なおと様の能力

【時空魔法】 

 ●アイテムBOX 容量無限・時間停止。

 ●ホーム このダンジョン内が貴方の拠点となります。ダンジョン内は全て移動可能です。

【召喚魔法】

 ●召喚 ダンジョン内に限り新たなモンスターを3個体、呼び出せます。

【光魔法】

 ●ヒール 怪我を治せますが、病気を治す事は出来ません。

 ●ホーリー HPを回復したり、アンデッド系を攻撃します。

 ●ライトボール 攻撃魔法。照明代わりにもなります。


 まずは「ステータス」と唱え、能力の確認をお勧めします。

 なお貴方様は現在食事が不要となっており、年を取りませんが不死ではないため、ご注意下さい。

 最後に、このような不幸な目にわせてしまいましたが、これからの貴方の人生が幸多き事でありますよう、お祈り申し上げます。』


 何だこれ……。

 旭がダンジョンマスターだって!?

 手紙を読み、ここにいる旭が本物だとようやく納得した。


「まじかっ!? これ沙良の時よりひどいじゃないか! ダンジョンマスターなら、ここから出られないんだろ?」


「あぁ、何度か試してみたけど無理だった。このダンジョンに11年間、閉じ込められてる状態だよ」


「でも、会えて良かった……。けど、奮発ふんぱつした香典こうでん返せこのヤロー!」


 会いたくて会いたくてたまらなかった親友が生きて目の前にいる。

 それだけで嬉しくて泣きそうになったのを誤魔化ごまかすために軽口を叩く。

 もう2度と会えないと思っていたんだ。

 お前が亡くなり、抜け殻のように過ごしてきたと知らないだろ?

 沙良がいなかったら、今でも立ち直れなかったかも知れないくらいだ。


 今日この場所で再び会えた事を、本当に感謝している。

 ドラゴン・・・・なんかより、ずっと価値のある俺の親友を取り戻せたんだからな。

 ダンジョンマスターなのは気掛きがかりだが、沙良の移転で毎日だってここにきてやるよ。


「やっぱり俺、死んだ事になってるんだ……。香典は直接受け取った訳じゃないから返せません。それより2人が元気そうで良かったよ」


 旭が笑顔でそう言った。

 少し目がうるんでいるのは気の所為せいにしてやるさ。


「今まで何してたんだ?」


 話したい事や聞いて欲しい事が沢山たくさんある。

 時間があれば1日中話していられるだろう。

 そんな俺達を見て、沙良は何も言わずにアイテムBOXからテーブルと椅子を出して設置し始めた。

 こういう所は、やっぱり妹だなぁと感じる。

 容姿や年齢が変わっても、本来の性格は変わらないんだろう。

 まぁ、そのお陰で大分苦労はしているが……。


 妹は自分の容姿に無頓着むとんちゃくなのか、人当たりがいいので多くの人間から(特に子供達)にれられている。

 中には熱烈にアタックする子供もミリオネの町にいたが、沙良は気付かなかったらしい。

 2人兄弟の弟の方だったが、沙良に突撃する姿を見て兄が毎回苦笑していたな……。

 中にはよこしまな思いを抱く連中をきつけてしまう程、現在の容姿は厄介やっかいだった。

 俺はこの先、何人撃退すればいいのか分からないくらいだ。


「お兄ちゃん。私コーヒーれてくるね」


「ありがとな。旭と話しながら待ってるよ」


 沙良がホームの自宅に戻り、この場に2人きりになる。


賢也けんや~! 俺1人で、すっごく寂しかったんだよ~。2人に会えて良かった~」

 

 沙良がいなくなった瞬間、我慢していた涙がこぼれだしたようだ。


「おいっ、男の癖に泣くな!」


「だって嬉しいんだもん! 11年も頑張ったんだからめてよ~」


「あ~、よしよし。よく1人で頑張ったな。滅多めったにない事だが、褒めてやるよ」 

   

「えへへっ。医大に受かった時以来だね! められちゃった」


 そう言って旭は、ふんわりと笑った。

 この空気感がなつかしい。

 昔から、どこか呑気のんきで憎めない所がある親友はガツガツしておらず、そばにいるとのんびりとして妙に落ち着くのだ。


 子供の頃、日本人離れした容姿のお陰で周りから嫌厭けんえんされがちだった俺に唯一、普通に接してくれた友人でもある。

 お目当ては妹の沙良だとしても、遠巻きに見られるのが多かった俺は嬉しかった。

 子供は正直な生き物だ。

 人と容姿が違うという理由で、当時普通に話してくれる友達が1人もいなかった。

 ちゃんと日本語を話しているにもかかわらず、容姿から受ける印象が強かったんだろう。


 ちなみに俺は、日本語しか話せなかったけどなっ!

 容姿が日本人じゃないからって、英語が話せると思うなよ!

 兄弟の面倒を見ているから一緒に遊べないんだと自分を納得させていたが、本当は寂しくて仕方なかったんだよなぁ。


 一緒に遊ぶようなり、周りの子供達とも親しくなれた。

 それは非常に感謝している。

 その後は、勉強の面倒を思い切り見させてもらったがな……。

 あっ、思い出した!

 5年間分の家庭教師代を請求してやろう!

 ついでに高校時代モテなかった原因に関しても、忘れず1発殴っておくか……。

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