「いや、入り口に置いたら車の出し入れがし難くなるだろう。邪魔になるから置いていけ」
「え~! だって可愛いでしょ?」
この凶悪な顔をした魔物の、一体どこをどう見たら可愛いなんて思えるんだ。
お前の美的感覚はどうなっている。
「可愛いとは思えないが……。魔石のないガーゴイルに需要はない」
「じゃあ、子供達の家の入口に飾るのはどうかな? ほら番犬代わりになりそう」
子供達も、こんな魔物を家の前に置かれたら困るだろう。
それより町の住人が腰を抜かしそうだ。
「5体しかないから、全部の家には置けないぞ?」
数の指摘をしてやると沙良は少し考えて言った。
「ミリオネの子供達の家なら5軒だし、ちょうどいいね!」
全然よくはないだろう。
ガーゴイルの置物をもらっても、子供達は喜ばないと思うぞ?
むしろ有難迷惑だ。
納得している様子の沙良に何も言う事はせず、収納した魔物を忘れてくれる事を切に願う。
その後再びミリオネの町を訪れた時に、沙良はすっかりガーゴイルの事を忘れてしまっていたので俺は口を閉ざした。
もう一生思い出さないでくれたらいい。
安全地帯に戻ると、例の6人組は疲労困憊した様子でテント前で休憩していた。
まさかダンジョン内で駆けずり回る羽目になるとは、思っていなかったんだろう。
しかも魔物の討伐をしながらだ。
相当疲れているらしい。
俺達が安全地帯に戻ってくるのを確認していたが、他の冒険者がいる手前か行動には起こさなかった。
テントに入りホームの自宅で食事をする。
今日のお弁当は、チーズ入りミニハンバーグ・少量のナポリタン・海藻サラダ・ひじき煮だった。
インスタントのコーンスープと一緒に大盛ご飯を完食する。
俺はハンバーグにチーズが入っている物が好きだ。
なんかこうガツンとして食べた感じがするだろう?
沙良はさっぱりと食べたいのか、大根おろしを付けて青じそドレッシングで食べる方が好きみたいだけどな。
それでも、お弁当は俺の好みに合わせてくれている。
本当によいお嫁さんになりそうだ。
だが俺の目の黒い内は、認めた相手じゃないと結婚は許可しないぞ。
俺達には秘密が山程あるんだからな。
食事を終えてテントから出ると、後を追いかけるのを諦めたのか例の6人組はテント内に引っ込んでしまった。
なんだ体力の限界か?
情けないな。
翌日。
安全地帯から出ると、6人組のテントは消えていた。
ダンジョン内で襲う事は無理だと悟ったらしい。
普通ならこの時点で、相手に敵わないと気付きそうなものだが……。
欲望が下半身に直結しているやつらには無理だろうな。
タイミングとしては、冒険者ギルドからの帰り道が一番可能性がありそうだ。
その後5日間の攻略を終えて冒険者ギルドに換金に行った。
そして俺は再び腹を壊す事になる。
沙良が本当に大丈夫か心配して尋ねてきたが、大丈夫だと言って解体場に急いだ。
解体場の親父の隣にいるのが宝石店の店主だろう。
「冒険者ギルドまで足を運んでもらって済まない。妹の20歳の誕生日に、ペンダントをプレゼントしてやりたいと思っているんだ。ペンダントトップに付ける宝石は俺が加工するので、チェーンと宝石を嵌める台座部分を依頼したい」
あまり時間がないので店の店主に用件のみを簡潔に告げると、出来上がった宝石の状態を見て作成してくれると言う。
一応現時点で一番出来の良いエメラルドカットを施した宝石を見せると、店主が感心したように頷く。
これ程の出来なら修正する必要もないと言われ密かに喜んだ。
まぁ見本にしたカット技術は地球の物だから、俺の実力とは言い難いが……。
ペンダントと合わせてイヤリングも一緒にプレゼントしてはどうかと提案されて、御揃いの方がいいだろうと作成を依頼する。
まだ数年先の事だが宝石の数は5個ある。
5セットもあれば、宝飾品に沙良も困らないだろう。
商談を済ませて、冒険者ギルドの受付近くで待っている沙良のもとに戻る。
ギルドを出ると案の定、6人組の冒険者達が後をつけてきた。
これはもう目的を遂げるまで諦めないだろう。
沙良を危険な目に遭わせる訳にはいかない。
仕方なく俺は全員不能にしてやった。
明日、目覚めた時に自分達の行いを反省するんだな。
沙良のホームで自宅に帰り、後何回繰り返す事になるのか溜息を吐いた。
本当に人の悪意に終わりはない。
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