【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第230話 椎名 賢也 47 ダンジョン 地下8階 ホーリーの効果 2

公開日時: 2023年2月15日(水) 12:05
更新日時: 2023年7月19日(水) 23:58
文字数:2,106

 マッピングを使用して周囲の魔物分布を見たのだろう。

 沙良が嫌な顔をして言った。


「お兄ちゃん、まかせた!!」

 

まかされた!!」


 俺は最初に索敵した、ゾンビ姿の魔物にLv2(消費MP20)のホーリーを掛けた。

 ゲームのような血塗れな姿ではないが、緑色の肌をした動く死体だ。


 一瞬魔物の姿が光ったと思ったら、ゾンビは跡形も無く消え去り床には魔石だけが落ちている。


 これは魔石取りの手間が省けるな。


 やはり光魔法は、アンデッドにはダメージがデカいらしい。

 と言うか、き過ぎのような気がするが魔物も天国に向かうのだろうか?

 

 続いて出てきたグールは、肌の色が紫色をしている動く死体だ。

 これもホーリーLv2で魔石を残して消え去る。


 この2種類の魔物はにおいが強烈だったが、ホーリーを掛けた後は周囲から悪臭も消え去った。

 沙良はマッピングを見て、アンデッドとグールが近付いてくると分かると少し離れた場所に移動している。


 確かにこのにおいは慣れていないとキツイだろう。

 俺は昔、遺体の病理解剖を散々したお陰で多少耐性がある。


 しかしこの階層は換金出来るのが、リッチの杖とリビングアーマの鎧を除けば魔石のみだ。

 沙良にオリハルコンゴーレムを見付けて貰わないと割に合わない。


 その後に出現したスケルトン体長2mは、名前の通り全身が骨で出来ていた。

 筋肉も無いのに、一体どうやって動いているのか非常に気になる生物だ。


 沙良が興味津々の様子で見ている。

 またおかしな事を考えてるんじゃないよな?


「骨合わせ……」


 呟く声が聞こえたが無視した。


 止めてくれ、貝合わせと勘違いするんじゃない!

 ホーリーを掛けると魔石のみを残して消える魔物で良かった……。


 実体の骨が残ったら、妹は絶対アイテムBOXに収納して遊びそうだ。

 そして俺が付き合わされる未来しか思い浮かばない。


 しかし、人体の仕組みに詳しい俺にはどうやったって勝てないぞ?


 ゴースト体長2mは実体が無い。

 半透明に見えるよく分からない魔物だ。

 両方ともLv2のホーリーで魔石を残して消えた。


 リビングアーマは体長3m。

 金属製の動く鎧だ。


 これならサンダーアローで感電死するんじゃないかと思ったが、中身が無いので分からない。

 沙良は試す事もせず俺の後ろで待機していた。


 まぁホーリーのLv上げをするのに、地下8階は俺にとって最適だから良いか。


 ホーリーLv2を掛けると崩れ落ちる。

 中身? の魔物が昇天したんだろう。


 この金属鎧と魔石で金貨5枚(500万円)。

 沙良は魔石以外の獲物を前に、また何かを考え込んでいた。


 非常に嫌な予感がする。


「お兄ちゃん。リビングアーマを部屋に飾ったら、夜動き出したりするかな?」


 やっぱりか!


 どうしてそんな発想をするんだ妹よ。


「沙良。今その魔物はホーリーで消えて亡く・・なった。今あるのはただの金属鎧だ。動き出したりはしない」


「また幽霊が中に入ってくれるかも知れないでしょ?」


 幽霊じゃなくて魔物だぞ?


「家に飾りたいなら自分の部屋だけにしてくれ。俺は要らん。そもそも500万円もする金属鎧を、どの部屋に置くつもりだ? そして無いとは思うが万が一動きだしたら、お前はどう対処する心算つもりだった」


「それは、隣の部屋で寝ているお兄ちゃんを起こして……」


「沙良、夜中に寝ている俺をそんなくだらない理由で起こすのか?」


 少し声を低くして問い詰める。

 妹は何に興味を持つか本当に予想出来ない。


 今後同じような迷惑を掛けられないために、しっかり言い含めておく必要がある。


「えぇっと……、起こしたら駄目だと思います」


 首をかしげていくら可愛らしく言っても、俺には効果ないからな。


 目が思いっきり泳いでいるぞ?


 まったく、旭がいないと俺1人でこの馬鹿娘に対処しなきゃならないじゃないか。


「そもそもの問題だが、リビングアーマは体長3mある。お前の部屋の天井はそんなに高くないだろう。精々あっても2.5mだ。どうやって飾るんだ?」


 沙良が俺の話を聞いて唖然あぜんとした顔をする。

 気付いてなかったな?


「体操座りとか、どうかな?」


 リビングアーマを体操座りの状態で飾るのか!?

 シュールすぎる……。


「どうしても飾りたければ、誰も居ない部屋に鍵を掛けておくんだ。そうしたら、幽霊? が中に入っても部屋からは出られないだろう」


「了解しました!」


 返事だけはいいんだよ……。


 次のリッチは、スケルトンがマントを羽織って杖を持った体長2mの魔物だった。

 ホーリーLv2でスケルトンが消えると、マントと杖と魔石が残る。


 マントは買取対象になっていないが、沙良はアイテムBOXに収納していた。


 最後は待望のオリハルコンゴーレム体長3mだ。

 見た瞬間、沙良がサンダーアローを楽しそうに撃って倒す。

 これ1体で金貨200枚(2億円)だ。


 何故なぜ、ふふふっと笑いながら悪人面になっているのか……。

 嬉しいのは分かるが、その顔は子供達に見せるなよ。


 泣くぞ?


 今にもテンプレの言葉を言い出しそうだ。


越後屋えちごや、お主も悪だのう」


 そして予想通りの言葉を吐く。

 時代劇の見過ぎだ!


 そして俺が越後屋えちごやかいっ!


 俺は沙良には付き合わず、とっとと安全地帯を目指したのだった。 

 後ろから「え~! ノリ悪~い!」と聞こえるが無視だ。


 本当に幾つになっても、妹のお守りは疲れるよ。

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