魔法を付与した魔石を雫ちゃんへ渡し、習得していない飛翔魔法が使用出来るか試す事にした。
家から出て空き地へ移動後、飛翔魔法を発動してもらう。
ゆっくりと浮き上がった雫ちゃんの右手を、旭がしっかりと握り締め空へと先導していく。
これなら、雫ちゃんも習得していない全ての魔法が使用出来る。
接近戦が得意な樹おじさんも、娘のために魔法のLv上げを頑張ってくれるだろう。
「茜も今日、飛翔魔法を習得したでしょ? 少し練習してみたら?」
「あぁ、そういえば自分で飛べるんだった。ダイアン! アーサー!」
茜が従魔達の名前を呼ぶと、7匹の黒豹達が一瞬でその場に出現する。
テイム魔法に、従魔達の移転があるから便利だよね~。
500km以内なら何処にいても呼び出せるんだもん。
ホーム内の移動も簡単に出来そう。
茜は呼び出した従魔達を従え、一緒に浮上していった。
瞬く間に姿が小さくなる。
飛翔魔法を使用するのは初めてなのに、兄は茜を信用しているのか付き添う事もしない。
2人が練習している姿を見て私も空を飛びたくなった。
何があるか分からないから、飛翔魔法のLvは上げておいた方がいい。
そう思い30cm程体を浮かせた途端、右手を兄に左手を樹おじさんから掴まれ捕獲されてしまった。
一歩出遅れたのか、セイさんは私の腰に手を添えている。
何故だ! 茜は1人で飛んでるじゃん!
樹おじさんは、私より雫ちゃんの練習に付き合って下さい。
セイさんまで付き添う必要はないですよ?
そして私の体が浮き上がったのを見たシルバーが、
「ウォン!」
一声鋭く吠えると、どこからともなく私の従魔達が勢揃いし待機状態になった。
もうどれだけ厳戒態勢なの? 私が1人で自由に飛べる日はくるのだろうか……。
これじゃ自転車を、補助輪付きで走っているのと変わらないんですけど?
絶対離さないでねと言ったら、普通に離さないような気がする。
そこは成長を促すために、手を離す場面であっても……。
兄と樹おじさんにセイさんから捕獲された私は、10mの高さをのんびり移動する。
まぁこの高さでも、落ちたら怪我をするだけじゃ済まないから心配するのは分かるけどね。
私より相当高い場所を飛んでいる茜は、誰も心配していないの?
茜の傍にはダイアン達がいるとはいえ、なんとなく理不尽だと思いながら保護者付きで練習を終え地上に降りた。
おや? シルバー達が前より高く浮き上がっているような……。
従魔のステータスを確認すると、浮遊魔法Lvが5になっていた。
60cmじゃなかったから、倍々に増える仕様みたいだ。
Lv0で10cm、Lv5で320cmだとLv10なら10,240cmかしら?
私が心配で浮遊魔法を積極的に上げているんだろうなぁ。
なんだか、この魔法だけ直ぐLv10になりそう。
私には風の精霊王の加護があるから落ちたりしないのに……。
と考え、風の精霊王の加護って何? となった。
妖精さんの存在は見たから知っているけど、この世界には精霊もいるの?
ガーグ老達が作製してくれた天蓋付きのベッドの柱には、美しい女性の姿が彫られていた。
私はどうして、その女性達を四属性の精霊王だと思ったんだろう。
う~ん、やっぱり記憶がおかしい気がする。
風の精霊王か…。
本当にいるのなら姿を見てみたいな。
その瞬間、ふわりと私の周囲を暖かい風が纏り付く。
この風は……、以前にもダンジョンで感じた覚えがある。
エルフの血を引くリーシャには、本当に精霊王の加護があるのかも知れない。
彼女のお母さんと、カルドサリ王国の第二王妃はどんな関係だったのか……。
いつか、ガーグ老に姫様の話を聞いてみよう。
私が思いを巡らせている間に、2人が飛翔魔法の練習から戻ってきた。
結構遅い時間になってしまったな。
付与済みの魔石は全て雫ちゃんに渡し、樹おじさんに実験のお礼を伝え自宅へ帰る。
今夜も私の家に兄とセイさんがやって来た。
旭は実家に泊まると言ってしまったから今日はいない。
シルバーとフォレストを呼び竜の卵を取り出す。
毎日魔力を与えているけど、この子はいつ孵化するんだろう。
ダチョウの卵より大きいから1ヶ月以上は掛かるだろうか。
卵の表面へ手を触れ「早く元気な姿を見せてね」と伝えると、答えるように卵がほんのり光った。
私の言葉が分かったようで嬉しい。
その後は記憶が途切れ寝てしまった。
翌日、木曜日。
旭家に行くと、全員の唇が少し赤いような? よく見たら旭の唇が少し腫れている。
昨日の夕食の鍋が、一体何だったのかは非常に気になる所だけど質問するのは止めておこう。
どうやら激辛鍋を朝から食べたらしい。
迷宮都市ダンジョン地下15階のテントへ移転し、ダンクさんとアマンダさんパーティーに挨拶をしたら攻略開始。
地下16階の果物採取をした後は、地下7階で槍のLv上げをする。
今日もターンラカネリの槍は魔物に当たらず、ダンジョンの壁に刺さり戻ってきた。
それを見た茜が手元に戻る槍は便利そうだから貸してほしいと言うから渡すと、簡単に魔物を仕留めていた。
私と違い槍術Lv150だからね。
「姉さん、この槍はどこで手に入るんだ?」
「地下28階にいる魔物からよ。茜も欲しいの?」
「出来れば持っておきたい武器だ」
「レアな武器だから中々見付からないと思うけど、今から攻略しに行こうか」
「さっ沙良。攻略階層を簡単に変えるのは、どうかな? 明日にしよう!」
すかさず父から反対され首を捻る。
「茜は今から行きたいよね?」
「あ~、明日の方がいいかな?」
妹の返事を不審に思い、父の方を見ると首を激しく横へ振っていた。
父は何だか階層間を移動する事へ、異常に拘りがあるらしい。
従魔達も父の意見に賛成なのか、地面をタシタシと叩き同意している。
私は不思議に思いながらも、まぁいいかと地下28階を攻略するのは明日にした。
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