いつもとは違う温かさを感じ目覚めると、隣に兄がいた。
ふおっ! これは、どういう状況なの?
昨日は茜に運ばれベッドで寝てから記憶がない。
何故、兄が一緒に寝ているか分からず首を傾げた。
取り敢えず起きようと身動きしたら、兄が目を覚ます。
「おはよう沙良。お前、昨日はうなされて大変だったぞ」
「えっ、そうなの?」
「寝たばかりで、突然大声を上げるから驚いた。『毒が~』と何度も叫んでたよ。俺がホーリーで浄化してやると言ったら大人しくなったが、そのまま抱き着かれて今に至る」
「わぁ、ごめんね~。お騒がせしました」
どうやら白雪姫が毒で倒れた後、どう生還するか夢の中で考えていたらしい。
全然、覚えていないけど……。
兄が提示した解決策は使えないだろう。
皆で朝食を食べ冒険者の恰好に着替えた後、メンバーと異世界へ移転した。
月曜日。
今日から5日間またダンジョン攻略。
地下11階で兄&フォレストと別れ、私達は地下15階まで駆け抜けた。
安全地帯に着いてマジックテントを設置後、休憩したら攻略開始。
アマンダさんダンクさんと挨拶を交わしながら、子供達の話を併せ伝えていく。
ダンクさん達は、犯人が捕まり盗まれたマジックバッグも回収出来たので、再びダンジョン攻略をする事にしたようだ。
それでも1週間休むと、体が鈍ると笑っていた。
家に1人でいた母親は新しい政策が施行されたのを知り、大丈夫だと言って息子を送り出したみたい。
地下14階のハニーの下にいき、マジックバッグの中身を回収する。
先週、従魔達にもHP/MP値が上がる丸い玉の効果があると分かり、土日は会えないハニーに両方の玉を1日1個ずつ飲んでねと渡してある。
赤と紫の色が区別出来るか心配だったのでHPが上がるのはどっち? と聞いたら、ちゃんと赤い玉を選んだ。
色の違いか魔力で判断しているのかは分からないけどね。
同じ玉を2個飲んでも効果は1個分しかないため、ハニーが両方を飲んでくれれば問題ない。
ちゃんとHP/MPの両方が上がっているのをステータスで確認し、地下19階~21階のキングビー達からも薬草を回収した。
毎日いるシルバー達にも当然、両方の玉を飲ませている。
ガルちゃん達だけは、ガーグ老の騎獣なのでステータス値を上げるのは止めておく。
勿論、私もあれから毎日丸い玉を舐めているよ!
兄と旭に、ポーションを『MAXポーション』へしてもらってね。
地下16階の果物採取をしたら、地下10階へ移動し槍術のLv上げを行う。
Lv50になった雫ちゃんは上限が開放され、槍術のLvが20になったそうだから私も負けていられない。
兄と旭も、槍術と剣術がLv20に上がっていると言う。
摩天楼のダンジョンでは、安全地帯から出ずアイテムBOXとマッピングを使用した討伐しかしていないため、なかなか槍術のLvが上がらないのだ。
ガーグ老から許可をもらった地下10階で頑張ろう。
アラクネを発見。
上半身が女性の体をしている蜘蛛の魔物へ向かい、シルバーが駆け出す。
糸で絡め取られる前に、飛び上がったシルバーの動きと合わせ短槍を振るう。
首を半ばまで切断された魔物は絶命した。
アウラウネを発見。
上半身が女性の体をしている植物の魔物は、男性しか魅惑魔法を使用しないため魔法を警戒する必要もなく、ターンラカネリの槍を投擲する。
それを見たシルバーが、すかさずアイスボールの魔法を撃つ。
フォローしてくれてありがとう。
槍が当たらないと思われているのは複雑な気分だけど……。
シルバーは自分が仕留めた魔物をポシェットへ収納し、満足そうに尻尾を振っていた。
気を取り直してナイトメア(男性体)を探す。
魔石が金貨5枚(5百万円)する魔物だから、Lvも高いのかしら?
実体がないナイトメア(男性体)は、ドレインで昏倒させる方法しか倒した事がない。
アンデッドはホーリーの魔法があれば簡単なのになぁ。
浄化の魔法は兄と旭、雫ちゃんのお母さんしか使用出来ないんだよね~。
どうしようか考えていると、セイさんが大槍を構え投げつけた。
狙い過たず、大槍はナイトメア(男性体)を貫通して地面に刺さる。
その瞬間、ナイトメア(男性体)は魔石に変わった。
何で!?
「セイさん、その大槍には何か効果が付いているんですか?」
「宝箱から出たアイテイムだけど、聖魔法が付与された魔石が嵌っているんですよ」
聖魔法? 光魔法とは違うのかしら?
聞いた感じだと、光魔法の上位魔法に当たるのかも知れない。
「へぇ~、便利な槍ですね」
アンデッドには効果絶大だし、地下8階なら無双状態だ。
その後、出現したワイルドウルフとシルバーウルフを槍で倒しLv上げを続ける。
3時間したら地下15階へ移動し、安全地帯のテント内からホームの実家へ。
母が作った昼食を食べたら、シュウゲンさんを連れ摩天楼のダンジョン31階へ移転する。
茜に内緒のLv上げが父にバレた事を伝えると、がっかりしながらも渡したDVDプレイヤーで録画したTVドラマを大人しくテント内で見ていた。
私はマッピングで魔物を索敵して倒しアイテムBOXに収納する作業と並行し、ショートブレッドを作っていく。
安全なテント内で茜と2人、のんびりしながら紅茶を飲んでいた。
来週で多分、兄がLv60になると思う。
そうなれば茜の旦那さんを召喚出来るだろう。
早崎さんは、結婚式が終わった後に召喚した方がいいかな?
妻が突然いなくなり心配していると思うけど、ちょっとこちらはバタバタしているからね。
私を狙う相手を撃退しない事には落ち着かない。
「茜。早崎さんの召喚だけど、結婚式の後になると思う」
「あいつは、呼ばなくても本当にいいんだけどな。まぁ、母さんに言われたから召喚するか……」
旦那さんの召喚に乗り気じゃない妹を見て心配になる。
盆や正月に家族で集まった時、夫婦仲は良かったのに……。
「旦那さんと仲が悪かったの?」
「いや、別にそうじゃない。相棒と結婚したのは、お互い都合が良かったからだよ。私は誰とも結婚する気がなく、相棒の恋愛相手は同性なんだ。条件に合った相手というだけで、愛情はない。だから孫を期待され困ってる」
いきなりぶっちゃけた妹の話に目が点になった。
それは偽装結婚じゃ? 孫を待ち望んでいる母には、とても言えないわね。
常に男装していた妹の性癖がずっと気になっていたからこの際、思い切って聞いてみよう。
「そっ、そうだったの。気付かなくて驚いたわ。2人が納得して結婚したのなら、どうこう言う心算はないけど……。もしかして、茜の好きな相手は女性なの?」
「あ~、そういう訳でもない。ただ、特別な誰かを待っている感じに近いかな?」
何だか身近に同じような事を言った人がいるよ。
「それは運命の相手?」
セイさんが、ずっと探している相手だ。
運命を感じた相手が私と兄と旭だったのは、どうかと思うけど……。
「運命の相手か……、いつか出逢えるといいな」
茜はそうぽつりと零し、どこか懐かしい記憶を思い出すかのように微笑んだ。
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