【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第562話 迷宮都市 地下15階 車が鞄に……&秘密のLv上げ8 摩天楼のダンジョンへ

公開日時: 2023年9月30日(土) 12:05
更新日時: 2024年1月21日(日) 22:26
文字数:2,995

 翌日、火曜日。

 安全地帯のテントへいく前に、母達へ買い物の件を聞いてみた。

 すると何故なぜか3人が黙り込んでしまう。

 これは何かあったな……。

 誰か言い出すまで待っていると、しずくちゃんが2人の顔色をうかがいながら、おずおずと口を開いた。

 

「沙良お姉ちゃん。貸してくれた車なんだけど……。お母さんが少しぶつけて、動かなくなったみたいなの。高い車なのに、ごめんなさい!」

 

 そう言って勢いよく頭を下げる。

 あぁ、やっぱりか……。

 運転経験のない左ハンドルの車だから、不安だったんだよね~。

 すると雫ちゃんのお母さんが、何かをアイテムBOXから取り出し手渡してきた。


「あのっ、本当にごめんなさい! これ、おびにはならないかも知れないけど……」


 見ると、有名なブランド品だった。

 うとい私でも知っている高級鞄。

 これ1個で百万円以上するんじゃ?

 まぁ確かに貸した〇ンツは、このタワーマンションの住人が所有していた車なので1台数千万円はするだろう。

 しかもホーム内には人がいないため、修理不可能だ。


「ぶつけちゃったのは残念ですが仕方ないです。この鞄は気持ちだけ受け取りますね」


 返そうとしたら、逆にそれを固辞こじされた。

 どうしても受け取ってほしいらしい。

 私は苦笑し、使用する機会はないだろうなぁと思いながら貰う事にする。

 まぁ、3人とも怪我がなくて良かった。


 ただ次に貸す時は、最初からファミリーカーを出そう。

 話を聞いていた兄達が何の車か知りたがったため、〇ンツだと教えたら口を大きく開け固まっていた。

 私の車じゃないし、お金は山程あるから買い替えれば済む話だよ。

 そんなに沢山、車は必要ないと思うけどね。

 兄のスポーツカーより、早く移動出来る従魔達がいれば充分だ。

 そもそも私には運転免許がないし……。


 さぁ気を取り直して、ダンジョンに出発だ!

 安全地帯のテントから出て、アマンダさんダンクさんパーティーと挨拶を交わす。

 午前中は、いつもの薬草採取と地下16階の果物採取。

 そして今日は攻略するダンジョンを変える予定だ。

 私のLvが、もうこのダンジョンでは上がらない気がする。


 アシュカナ帝国との戦争に備え、なるべく移動距離を長くしたいのでLvを上げたい。

 午後から父に摩天楼まてんろうのダンジョンへいきたいと言ったら、けわしい顔になる。

 私が戦争回避のために考えている作戦を伝えると、渋々しぶしぶ了解してくれた。

 兄とは通信の魔道具があるから、いつでも連絡が取れるし大丈夫だよ。


「お父さん。私、摩天楼のダンジョンにいった事がないの。この地図を見ながら案内してくれる?」


 商業ギルドのカマラさんがくれた詳細な地図を父に手渡す。

 父は地図を見るなり、


「軍事機密が……」


 と言い顔色を変えてしまった。

 軍事機密?

 ただの地図だよ?


「沙良、この地図は何処どこで手にいれた」


「商業ギルドの担当者で、カマラさんっていう人がくれたの」


「迷宮都市の商業ギルド? 聞いてないな……」


 それっきり、また黙り込んでしまう。

 父は異世界にきてから考え事が多くなった気がする。

 知らない世界だから、日本との違いに驚いているんだろうか……。

 数分後、渡した地図を直ぐにアイテムBOXへ仕舞しまえと言われ収納した。


 そして父の指示した方角へ、48kmずつ移動を始める。

 一度見ただけで、父には摩天楼のダンジョンがある都市が分かるらしい。

 以前ダンクさんは、迷宮都市から南へ1ヶ月以上離れていると言っていた。

 この世界の主な移動手段は馬車だから、1ヶ月ならそんなに離れている訳じゃないんだろう。

 父は最短距離を選んだのか、30分くらいで到着。

 おぉ、ここが大型ダンジョンのある都市かぁ~。


 今までダンジョンは地下へ潜るタイプだったから、天高くそびえる塔のダンジョンを見るのは新鮮だなぁ。

 まずは冒険者ギルドにいき、シルバーと泰雅たいがの従魔登録をしておこう。

 冒険者ギルドの建物は、どの町でも似たような作りになっているからマッピングで調べれば場所が分かる。

 発見した後に2匹を連れ歩き向かった。


 冒険者ギルド内へ入ると迷宮都市より、更に中が広い!

 受付嬢の数も多く10人いた。

 わぁ~、綺麗な人ばかり。

 ここにはハーフエルフの人が沢山いるみたい。

 右端の受付嬢へ従魔登録の申請をすると、冒険者ギルドカードを確認される。


「では、お部屋にご案内します」


 そう微笑んで言われ、後ろを付いていく。

 従魔登録はギルドマスターがするんだろうか?

 案内された部屋で待つ事数分、ノックの音がした後これまた美しい男性が入ってくる。

 

「私は摩天楼の冒険者ギルドマスターをしております、ヒューと申します」


 なんというか物腰の柔らかなギルドマスターだ。


「沙良と申します」


「父のひびきです」


「従魔登録の申請と伺いましたが、迷宮都市にて登録済みのようですね。情報を変更しますので、従魔の首輪を外して頂けますか?」


 言われた通り2匹の首輪を外して手渡すと、それを何かの器械に通し返却された。

 

「従魔登録されましたから、都市内は騎乗しての移動が可能です。そのぉサラさんは、まだB級冒険者ですから摩天楼のダンジョンには入れませんが……」


 申し訳なさそうに話す男性に、私は笑顔で答える。


「観光にきただけなので大丈夫です」


 本当は内緒で攻略する心算つもりだけどね。

 入場料を誤魔化すのは大変申し訳ないです。

 いずれA級冒険者になり、状態の良い魔物を沢山換金するから許して下さい。


「そうですか……。では、都市を楽しんで下さい」


 目的を果たし冒険者ギルドを後にする。

 ギルドを出てダンジョンへ向かう途中、上空から白ふくろうが降りてきた。

 父の右肩に止まったので、これはポチの方だろう。


「おっ、今日は摩天楼にいたのか。遠くまで大変だな……」


 ガーグ老は、従魔をかなり自由にさせているみたいだ。

 数日前は王都にいたのに……。

 父を見付けると直ぐに飛んでくるなんて、可愛いなぁ~。

 ここまでなつかれたら、父も悪い気はしないだろう。


「あ~、沙良。今日は何階層にいく予定なんだ?」


「摩天楼のダンジョンは100階層以上あるらしいから、もう100階でいいと思う」


 すると、誰かが咳き込む声がした。

 周囲を見渡しても誰もいないのに……。


「待て待て、それは無理だ。幾ら何でも早すぎる。ここは様子を見ながら、1階層から順番に上がっていこう!」


 父の言葉に呼応するように、ポチが激しく頭を上下させている。

 A級冒険者の資格が必要なダンジョンだから、1階層の魔物でも強いのかな?


「そう? 問題ないと思うけど……。初日だから言う通りにするね」


 その後、人気のない場所へ移動し摩天楼のダンジョン1階へ移転。

 あっ、ポチが父の肩に止まったままだった。


「ポチも一緒にダンジョン攻略する?」


 私の言葉が分かる賢い従魔に尋ねると、「ホー」と一声鳴き答えてくれた。

 これは一緒で良いと言う意味だろう。

 さて、先ずは地下1階の安全地帯に移動だ。

 マッピングを使用してシルバーを先導する。

 安全地帯に到着後、テントを設置しポチをテント内で待機させた。


 時間を考え一度、迷宮都市の地下15階まで戻ろう。

 地味に往復時間が掛かるなぁ。

 慣れたら往復10分くらいでいけるかしら?

 Lvが上がれば移動距離も長くなるから、短時間での移動も可能だろうか……。

 パーティーメンバーとホームに戻り、15分休憩したら3回目の攻略開始。

 再び摩天楼のダンジョンへ。


 宝箱はあるのかな?

 隠し部屋は?

 S級冒険者のセイさんには会えるかしら?

 私は新しいダンジョンに期待しながら、テント内へ戻った。

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