「聖。お前、迷宮都市に知り合いがいるんだよな?」
父がそう、セイさんへ尋ねた。
「はい。20年程前は迷宮都市で活動していましたから、その時お世話になったクランの人がいます」
「その人、ダンクさんのお父さんだよ。石化した人達は治療され、今は地下19階を元気に攻略してる。それに、うちの従業員にもジョンさんのクランメンバーだった人達がいるの」
「そうか……。接点が何もないと理由を考えるのは難しいが、当時のクランリーダーが生きていたと連絡を受け迷宮都市へ戻ってきた所、俺と再会した設定にすればなんとか辻褄は合うだろう。問題は、誰がお前に連絡したのかという話だが……」
「じゃあ、『製麺店』のバスクさんから冒険者ギルドの早馬で手紙を送ってもらおう。セイさんも、バスクさんは知ってるよね?」
「その前に『製麺店』って何ですか? バスクさんはパーティーリーダーだった人です」
あぁ、そうだ。
バスクさんは、ジョンさんのクランでNO.2の立場だと母親達から聞いたな。
ならセイさんは地下19階を当時攻略していたのか……。
「迷宮都市では『肉うどん店』と『製麺店』を、私が経営してるんです。バスクさんは『製麺店』の従業員の1人ですね。他にも2人ジョンさんのクランメンバーだった人がいますよ」
「異世界で、うどん店を経営するとは驚きました。響さん、沙良さんは遣り手ですね」
「あぁ、俺も娘の意外な才能に驚いている」
そうなんだ……。
父からは何も言われなかったため、お店に関しどう思っているか初めて聞いたよ。
「じゃあ、沙良。そのバスクさんに頼んでくれるか? 冒険者ギルドの早馬なら、手紙が届くのは2週間後だな。手紙を見た聖が馬車で移動するとなると、迷宮都市に到着するのは1ヶ月掛かる。最短で1ヶ月半か……。まぁ、2ヶ月後を目安に偶然町で会った事にしよう」
「うん。それなら、お兄ちゃん達も不審に思わないと思う」
良かった。
セイさんのパーティー加入は問題なく説明出来そう。
「あの……。その流れだと、普通はジョンのクランへ入るんじゃ? 連絡をもらい会いにいったのに、別のパーティーへ加入すると不義理をした感じになってしまいますが……」
「そこは大丈夫。実は、ジョンさん達の石化治療をしたのは兄達だからね!」
「えっ!? 教会の枢機卿に依頼したのではなく?」
「あ~、その件は秘密にしてくれると助かる。俺の息子も少し規格外なんだ……」
「たっ、大変ですね……。教会組織は厄介なので、注意した方がいいですよ」
セイさんは、驚きながらも父へ教会について注意を促す。
まぁ、あの魔法習得の仕方を考えれば無理はない。
他言無用の儀式に魔法陣が描かれた本がセットじゃないと、魔法を覚えられないなんて不自然過ぎるからね。
どう考えても、教会組織が一枚噛んでそうだ。
心配事が解決したから、セイさんに質問をしてみよう。
「セイさん。手紙では30歳の時に異世界へ転移されたと書いてありましたが、今は何歳なんですか? 私は56歳です」
「う~ん。迷宮都市で15年、摩天楼に20年だから……65歳くらいかな?」
「見えませんね~。Lvが高いと寿命が延びると聞きましたが、成長もゆっくりになるんでしょうか?」
セイさんは40代後半にしか見えない。
「それを言うなら、沙良さんもね。高Lvになると比較的、老いるのが遅くなるようだよ。響さんは何歳になったんですか?」
「俺は78歳だ。沙良から召喚され、42歳に若返っているがな」
「じゃあ全員が若作りの集団ですね!」
そう笑って落ちを付けたセイさんに父が苦笑する。
冒険者をするなら肉体年齢は若い方が良い。
それにしても、65歳とは……。
S級以上の冒険者は、見た目年齢と実年齢が比例しないのかも知れない。
あれ?
じゃあ今からLv上げをする私は、ずっと若いままの状態なのかな?
それは良いのか悪いのか……。
「摩天楼のダンジョンに宝箱や隠し部屋はありますか?」
次にずっと聞きたかった質問をしてみた。
「宝箱ならありますよ。出現方法が、かなり特殊ですが……。現在分かっているのは、30階層で30回目の攻略日に出現するという話です。隠し部屋については、発見した事がないので何とも言えません」
「それはまた、ロマン溢れる出現方法ですね~。他にも試せばありそう。ちなみに宝箱には何が入ってるんですか?」
「私が見付けた時は魔法の鎧でした。火魔法を無効にする効果が付与された鎧です。他に魔法を付与された剣や槍や斧が見付かったと聞いた覚えがあります。いずれも入手困難な貴重品だから、換金される事はまずないですね」
おおっ!
それは宝箱を是非とも発見しなくては!
早く30階まで攻略しよう。
楽しみが増えた!
隠し部屋も、きっとどこかにある筈。
マッピングを3Dの状態で展開すれば、いつか見付かるだろう。
「沙良。良かったな、30階に宝箱があるそうだ。30日攻略する必要があるみたいだから、31階は31日目に出現するかも知れないぞ?」
「それは聞いた事が……。たっ……試してみるのも、いいかも知れませんね!」
うん?
何やら、父とセイさんがアイコンタクトを交わしているような……。
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