【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第772話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(111階) 聖獣の住む島

公開日時: 2024年4月30日(火) 12:05
文字数:2,009

 翌日、火曜日。

 迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯のテント内に移転し、それぞれ攻略開始。

 地下16階の果物を収穫したら、私とあかねは内緒で摩天楼まてんろうダンジョン99階へ。

 隠し部屋の小屋へ入り、床へ描かれた魔法陣の上に乗る。

 行き先を表示されている画面から111階を選んだ。


 いつも午前中は槍のLv上げをしているけど、父達が戻ってくる前になるべく多くの階層先を調べておこう。

 異世界では何があるか分からないため、持てる手段は多い方がいい。

 マッピングは一度の移動距離が限られているから、別大陸へいけるこの移転陣の存在は本当に助かるのだ。

 ブンっという音がし、画面が111階の表示に切り替わる。

 エレベーターに乗った時のような浮遊感もなく、私が使用する移転と同じで何も感じない。


 小屋の扉を開け、現在位置を把握しようと従魔に騎乗し浮かびあがる。

 上空から見える景色は、辺り一面森だった。

 こんな場所に人はいるのかしら?

 111階のダンジョンは随分ずいぶん辺鄙へんぴな所にあるのね。

 近くに町もなさそうなので少し移動しよう。


 マッピングを使用し、俯瞰ふかんで見た範囲に建物がある。

 拡大すると、結構広い王宮みたいだった。

 あって当然の王都や城下町がないのは不思議だな。

 あかねにその事を伝え、人がいると思われる王宮近くへ移転する。

 シルバーから降り、王宮へ続く舗装されていない道を歩き出した。


「何で誰もいないんだろう?」


「滅亡した国かな?」


「えっ!? じゃあ、あの王宮内にはアンデッドがいるの?」


「姉さん、冗談だよ。すたれた国なら、もっと建物が老朽化してるし雰囲気ふんいきも違う」


 妹はそう言いながら笑っている。

 でも人の気配がしないから、少し怖いんだけど……。

 王宮には門を守る者もおらず、私達はそのまま中へ入っていく。

 王宮内にも人の姿はなく、引き返そうと思った所でシルバーが進み出した。


 案内に従い付いていくと広い部屋へ辿たどり着く。

 部屋の中央には、15mほどの体長をした黒い甲羅を持つ老いた亀がいた。

 大きな瞳は白濁はくだくしており、目はもう見えていないのかも知れない。

 シルバーとダイアンが警戒した様子を見せず、茜が動こうとしないのを不思議に思いながら言葉を漏らす。


「魔物かしら?」


『おや? 懐かしい御方に会えたの』


 直接、脳に響く声に驚いて茜と顔を見合わせた。

 魔物ではなさそう。 


「私の言葉は、分かりますか?」


『ああ、大陸共通語なら理解出来る』


「ええっと、貴方は亀族の方ですか?」


 異世界なら亀の姿をした亀族もいるだろう。


『いや、聖獣じゃ。前も同じ遣り取りをしたが、貴女は変わらぬの』


 いや、会ったのは初めてです。

 リーシャの姿を知っているなら、ヒルダさんと間違えられているのかしらね。

 聖獣とは玄武げんぶみたいなものだろうか?


「ここには、誰もいないんですか?」


『あぁ、もう直ぐ眠りにく儂の霊廟れいびょうとなる場所だからの』


 目の前の玄武は、もう先が長くないらしい。

 聖獣にも寿命があるようだ。


「お休みの所、お邪魔してしまいすみません。どこか、おつらい場所はありませんか?」


 少しでも安らげるよう、習得したヒールが役に立てばいいなと思い言葉を掛ける。


『そうさな……。首の辺りに少し痛みがあるが時期、感じなくなるだろう』

 

 せっかく会えた玄武だ。

 私は近付き、言われた場所へヒールを唱えた。

 ついでに目の治療もほどこす。

 首の方は見た目の変化はなかったけど、白濁していた瞳は漆黒に変り美しい眼球が表れた。 

 これで見えるようになっただろう。

 兄のような医療知識がないので、時を戻すイメージで掛けた。

 

『こりゃ驚いた。また目が見えるようになるとはなぁ。首の痛みもなくなっておる。お礼に甲羅の一部を差し上げよう』


 玄武はそう言って、甲羅の一部を浮かせ私の前に置く。

 六角形をしたつやのある黒い一枚の甲羅は、私の背より大きい。

 これは、かなり貴重な物じゃないかしら?

 受け取った甲羅はアイテムBOXへ収納する。


「ありがとうございます。あの此処ここは、どの大陸にある場所でしょう?」


 お礼を伝え、場所も尋ねてみた。


『北大陸のその上にある、島じゃな』


 玄武は北を守る四神とも言われる。

 この世界でも、同じような役割を持っているのだろうか……。

 だとすれば朱雀・青龍・白虎にも会えるかしら?

 まぁ、異世界が同じ設定だとは限らないんだけど。


『その甲羅で、ドワーフ王に剣を鍛えてもらえば良い武器になるぞ。次はセイとセキも一緒に訪ねて下され』


 セイとセキ?

 セイさんの事じゃないわよね~。

 セキ……、知らない名前だけど懐かしいと感じるのは何故なぜ

 私達は玄武に一礼し、王宮を離れた。

 111階は、聖獣が住む島だったようだ。

 

 再び迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯に戻り、ホームの実家で昼食を取る。

 貰った甲羅をシュウゲンさんに渡すのは、出所を言う必要があるため出来ない。

 父達へ隠し部屋の存在を明かしてから、お願いしよう。

 南大陸にあるアシュカナ帝国から、いつ帰ってくるのかしら?

 セイさんとも連絡が付かず、やきもきしながらお昼を食べた。

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