翌日、火曜日。
迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯のテント内に移転し、それぞれ攻略開始。
地下16階の果物を収穫したら、私と茜は内緒で摩天楼ダンジョン99階へ。
隠し部屋の小屋へ入り、床へ描かれた魔法陣の上に乗る。
行き先を表示されている画面から111階を選んだ。
いつも午前中は槍のLv上げをしているけど、父達が戻ってくる前になるべく多くの階層先を調べておこう。
異世界では何があるか分からないため、持てる手段は多い方がいい。
マッピングは一度の移動距離が限られているから、別大陸へいけるこの移転陣の存在は本当に助かるのだ。
ブンっという音がし、画面が111階の表示に切り替わる。
エレベーターに乗った時のような浮遊感もなく、私が使用する移転と同じで何も感じない。
小屋の扉を開け、現在位置を把握しようと従魔に騎乗し浮かびあがる。
上空から見える景色は、辺り一面森だった。
こんな場所に人はいるのかしら?
111階のダンジョンは随分、辺鄙な所にあるのね。
近くに町もなさそうなので少し移動しよう。
マッピングを使用し、俯瞰で見た範囲に建物がある。
拡大すると、結構広い王宮みたいだった。
あって当然の王都や城下町がないのは不思議だな。
茜にその事を伝え、人がいると思われる王宮近くへ移転する。
シルバーから降り、王宮へ続く舗装されていない道を歩き出した。
「何で誰もいないんだろう?」
「滅亡した国かな?」
「えっ!? じゃあ、あの王宮内にはアンデッドがいるの?」
「姉さん、冗談だよ。廃れた国なら、もっと建物が老朽化してるし雰囲気も違う」
妹はそう言いながら笑っている。
でも人の気配がしないから、少し怖いんだけど……。
王宮には門を守る者もおらず、私達はそのまま中へ入っていく。
王宮内にも人の姿はなく、引き返そうと思った所でシルバーが進み出した。
案内に従い付いていくと広い部屋へ辿り着く。
部屋の中央には、15mほどの体長をした黒い甲羅を持つ老いた亀がいた。
大きな瞳は白濁しており、目はもう見えていないのかも知れない。
シルバーとダイアンが警戒した様子を見せず、茜が動こうとしないのを不思議に思いながら言葉を漏らす。
「魔物かしら?」
『おや? 懐かしい御方に会えたの』
直接、脳に響く声に驚いて茜と顔を見合わせた。
魔物ではなさそう。
「私の言葉は、分かりますか?」
『ああ、大陸共通語なら理解出来る』
「ええっと、貴方は亀族の方ですか?」
異世界なら亀の姿をした亀族もいるだろう。
『いや、聖獣じゃ。前も同じ遣り取りをしたが、貴女は変わらぬの』
いや、会ったのは初めてです。
リーシャの姿を知っているなら、ヒルダさんと間違えられているのかしらね。
聖獣とは玄武みたいなものだろうか?
「ここには、誰もいないんですか?」
『あぁ、もう直ぐ眠りに就く儂の霊廟となる場所だからの』
目の前の玄武は、もう先が長くないらしい。
聖獣にも寿命があるようだ。
「お休みの所、お邪魔してしまいすみません。どこか、お辛い場所はありませんか?」
少しでも安らげるよう、習得したヒールが役に立てばいいなと思い言葉を掛ける。
『そうさな……。首の辺りに少し痛みがあるが時期、感じなくなるだろう』
せっかく会えた玄武だ。
私は近付き、言われた場所へヒールを唱えた。
序に目の治療も施す。
首の方は見た目の変化はなかったけど、白濁していた瞳は漆黒に変り美しい眼球が表れた。
これで見えるようになっただろう。
兄のような医療知識がないので、時を戻すイメージで掛けた。
『こりゃ驚いた。また目が見えるようになるとはなぁ。首の痛みもなくなっておる。お礼に甲羅の一部を差し上げよう』
玄武はそう言って、甲羅の一部を浮かせ私の前に置く。
六角形をした艶のある黒い一枚の甲羅は、私の背より大きい。
これは、かなり貴重な物じゃないかしら?
受け取った甲羅はアイテムBOXへ収納する。
「ありがとうございます。あの此処は、どの大陸にある場所でしょう?」
お礼を伝え、場所も尋ねてみた。
『北大陸のその上にある、島じゃな』
玄武は北を守る四神とも言われる。
この世界でも、同じような役割を持っているのだろうか……。
だとすれば朱雀・青龍・白虎にも会えるかしら?
まぁ、異世界が同じ設定だとは限らないんだけど。
『その甲羅で、ドワーフ王に剣を鍛えてもらえば良い武器になるぞ。次はセイとセキも一緒に訪ねて下され』
セイとセキ?
セイさんの事じゃないわよね~。
セキ……、知らない名前だけど懐かしいと感じるのは何故?
私達は玄武に一礼し、王宮を離れた。
111階は、聖獣が住む島だったようだ。
再び迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯に戻り、ホームの実家で昼食を取る。
貰った甲羅をシュウゲンさんに渡すのは、出所を言う必要があるため出来ない。
父達へ隠し部屋の存在を明かしてから、お願いしよう。
南大陸にあるアシュカナ帝国から、いつ帰ってくるのかしら?
セイさんとも連絡が付かず、やきもきしながらお昼を食べた。
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