【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第778話 迷宮都市 ガーグ老達との昼食『ビーフシチュー』&茜の家をホームに設定

公開日時: 2024年5月6日(月) 12:05
更新日時: 2024年8月28日(水) 14:26
文字数:2,426

 結婚式で現れた妖精さんの人数を考えると、多目に作った方がいい。

 槍のLv上げで倒したミノタウロスの肉を消費するため、メニューは『ビーフシチュー』にした。

 茜には人数分の『ナン』を焼いてもらう。

 お代わり出来るよう、業務用寸動鍋を出し大量の具材を赤ワインで煮込む。

 時々、灰汁あくをすくいながら1時間後。

 ルーを加え、とろみが付くまでかき混ぜれば完成。


 工房内にいる父達に食事の用意が出来た事を伝え、私は木の下へお供えに向かった。

 『ビーフシチュー』を器に入れた後、冷めないよう順番に取って下さいねと声を掛ける。

 すると器が次々消えていく。

 妖精さんの生態は謎だな……。

 50枚の『ナン』を置いて戻ると、三男のキースさんがテーブルと椅子を庭に設置しているところだった。

 配膳を任せ席に着く。

 待っている間に、工房からガーグ老達が出てきた。


「サラ……ちゃん、食事を作ってもらい悪いの」


「お代わりもありますから、沢山食べて下さい。それでは頂きましょう」


「頂きます!」


 父といつきおじさんの表情が思わしくない。

 ガーグ老と相談した内容が解決しなかったんだろうか?

 家具職人のお爺さん達が早々にお代わりをする中、ガーグ老と長男のゼンさんは考え込んでいる様子だった。

 食事を済ませ、木の下へ器を回収にいく。

 お礼が書かれた羊皮紙には人数分の署名? があった。

 妖精さん達の名前かな?


「沙良。少し時間が掛かりそうだから、夕方迎えに来てほしい」


 父にそう言われ、私は茜と工房を後にした。

 魔法陣の件で忘れていた奏屋かなでやへ果物を卸し、一度ホームに戻る。

 通信の魔道具を起動させ、兄と連絡を取った。


『お兄ちゃん、何処どこにいる?』


『病院で旭と勉強中だ』


『お昼は済ませた?』


『あぁ、もう食べた。何かあったか?』


『薬師ギルドに行くのを忘れてたよ』


『……今から戻る』


 父達の騒動があり、兄も忘れていたようだ。

 病院からは10分もあればマンションへ着く。

 その間に、雫ちゃんのお母さんを呼んでこよう。

 幸い、お母さんは家にいた。

 薬師ギルドへ向かうと伝え、兄達と異世界に移転する。


 遅い時間になったけど、薬師ギルドの受付嬢は嫌な顔も見せず応接室へ案内してくれた。

 テーブルの上に準備されたポーションへ、3人が浄化とヒールを掛けていく。

 浄化で淡く光るポーション瓶をながめながら、召喚するあかねの旦那さんの事を考える。

 早崎さんは異世界に驚くだろうな。

 一緒に冒険者をすると言ってくれるだろうか?

 ゼリアさんが部屋にきて、浄化とヒール代を3人へ渡す。

 私もハニー達が採取した薬草を換金してもらい、代金を受け取った。


 薬師ギルドを出てホームに戻ると、茜が住んでいたマンションへ向かう。

 早崎さんを召喚するなら、家をホームに設定する必要がある。

 兄のマンションから、50km離れた場所にあるマンションは10階建て。

 こちらは賃貸で、ごく普通のマンション。

 茜は私達の住んでいる空き部屋に住めばいいと言っていたけど、自宅がなくなったら不便だろう。

 預金も使えるようになるし、お気に入りの物もあるはずだ。


「じゃあ、ホームに設定するね!」


 設定した瞬間、目の前のマンションが劇的に変わる。

 原状回復で外壁が新築の状態になった。

 妹が住んでいた5階の部屋へ入ると、茜は早速さっそく財布を仕舞っていた。

 それから幾つかの日用品に洋服や下着を、アイテムBOXへ入れている。

 うん?


「茜、そんなに家から持ち出してどうするの?」


「私は姉さんと一緒に住むから、必要な物を回収しただけだよ」 


「えっ!? 早崎さんと暮らさないの?」


「家は寝に帰るだけだったし、別にあいつと一緒じゃなきゃいけない理由がない」


 偽装結婚なら2人共、割り切った共同生活をしていたのかなぁ。

 本人達がそれでいいなら、私は別に口出ししないけど……。

 茜の部屋を用意した方がいいか。

 ベッドや家具はどうするか聞くと、アイテムBOXがあるから必要ないらしい。

 ずっと客用布団で寝るのはどうかと思ったけど、張り込みをして車の中で寝るのが多い妹は、横になり眠れるだけましだと笑っていた。

 

 茜の家以外のマンションの部屋から劣化を防ぐため、ある物をアイテムBOXに回収する。

 全部で49部屋分。

 駐車場の車も全てアイテムBOXに入れた。 

 兄のマンションで回収した物も、まだ忙しく調べてない。

 生活に不便を感じないから、詳しく調べるのは当分先だろうな。


 用事を済ませた私達は自宅に戻り、商業ギルドで貰った世界地図と魔法陣の移転先を見比べてみた。

 獣人が住む中央大陸を中心に、ドワーフの国がある北大陸、アシュカナ帝国がある南大陸、カルドサリ王国がある西大陸、まだ行った事のない東大陸がある。

 大きな大陸は5つあり、他に大小様々な島も記載されている。

 国名が書かれていない場所は、商業ギルドも把握していない国かしら?

 交易を行っていない国もありそうだ。

 玄武げんぶがいた北大陸の上にある島はなかったから、地図に追加しておこう。


「132階からは、この南大陸がある国の可能性が高いな」


 茜が地図を見ながら南大陸を指す。

 アシュカナ帝国以外に、30は国名が書かれていた。

 その中でも国名の後に(属国)とあるのは、既に侵略されたと思っていい。

 属国となっている国が20か……。

 帝国は、かなり軍事力があるんだな。

 カルドサリ王国へ戦争を仕掛けるなら、属国になっている国の兵も戦力と考えないと駄目だろう。

 移転先が属国の場合は、帝国人がいるかも知れない。

 国名を把握したら長居は無用だ。


「茜。結婚式に襲撃してきた帝国人は、どの程度の強さか分かる?」


「冒険者でいえば、Lv50くらいじゃないかな?」


「Lv50か……」


 ステータス的には500前後なのか。

 私達ならLv10の値だ。

 

「ケスラーの民は、どうだった?」


「あれは、相当強い種族だな。Lvは150を超えてると思う」


 帝国人の3倍!?

 

「茜が見て一番強い人は誰?」


「多分、セイさんだ。あの人は、ガーグ老より強い」


「えっ、そうなの?」


 私は意外な答えに驚いた。

 一番強いのはガーグ老だと思っていたのに……。

ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート