異世界の家からシルバー・フォレスト・泰雅の背にそれぞれが乗り、薬師ギルドへ向かった。
従魔が1匹増えたから、いつも2人乗りをしていた兄達も今日は1人で騎乗する。
旭は泰雅ではなく可愛がっているシルバーに乗りたかったようだけど、シルバーが主人である私を優先させたため、寂しそうな表情をし泰雅へお願いしていた。
基本的に私の騎獣はシルバーなので、任されている事への矜持《きょうじ》があるのかも知れない。
薬師ギルドに到着後、3匹にはギルドの外で待機をお願いする。
冒険者ギルドと違い薬師ギルド内は広くないので、体長3mもある従魔が3匹もいたら他の客に迷惑が掛かってしまうだろう。
受付嬢へ挨拶すると、何も言わずに応接室へ案内される。
本当は昨日が約束の日だけど、テーブルの上にはポーションが60本置いてあった。
兄達はギルドマスターのゼリアさんを待たず、次々と浄化を掛けていく。
浄化されたポーション瓶が淡く光るのは、何度見ても綺麗だなぁ。
私がその光景をぼ~っとしながら見ていると、ゼリアさんが部屋に入ってきた。
慌てて席を立ち挨拶を交わす。
「相変わらず仕事が早くて助かるよ。浄化代も渡しておこうかね。それより、昨日は何かあったのかい?」
約束していた日に、こなかった理由を聞かれる。
ゼリアさんはアシュカナ帝国の件も知っているし、毒消しポーションの販売にも許可をくれた。
ここは正直に話しておこう。
「実は昨日、誘拐されたんです。兄達が助けてくれたから無事だったんですけど……」
「それは……アシュカナ帝国の仕業かい?」
「いえ、犯人は若い少年でした。私の姿を見掛けて、犯行に及んだみたいです」
それを聞いたゼリアさんが、渋い表情をする。
勿論、場所が王都だった事や犯人が他国の留学生であるのは伏せた。
「うちの次代は何をしておるのかねぇ。まだその時ではないのか……」
時代?
またボケだしてしまったのか、会話が噛み合わない。
「他には何もなかったかい?」
「ええっと、アシュカナ帝国の王から9番目の妻に狙われているみたいです」
どうせ盛大に結婚式を挙げるから、事情を知ってもらった方がいいと話した。
「それは……、何としても阻止せねばならんな。対策は考えておるかえ?」
「はい。知り合いにとても強い方がいるので、その方と偽装結婚をする心算です」
「あぁ、暗殺者を送り込まれるだろうからね。あの国の王も、体裁は気になるだろうよ。これから、あんた達も充分警戒おし。まだ人数が揃わないようだからね」
ゼリアさんは壁を見つめながらそう言って、最後に意味が分からない言葉を残し部屋を出た。
人数って……何の?
私達は、お互い顔を見合わせ首を傾げる。
「お兄ちゃん。ゼリアさんは、何か知っているのかな? それとも今日はボケまくりだったの?」
「それは……俺にも分からん」
「あ~俺は、ボケてる方に一票!」
兄は回答を避け、旭はボケている方だと言った。
普段はとてもしっかりしてみえる彼女が、いつも突然ボケてしまうから対応に困る。
それでも薬師ギルドマスターを続けられるなら、仕事の方は問題なく出来るんだろう。
今日は、亡くなったお爺さん相手の独り言ではなかったようだけど……。
浄化代を私と旭がアイテムBOXに入れ、薬師ギルドを出た。
帰り道は従魔に乗らず徒歩で歩く。
偶には自分の脚で歩かないと運動不足になるからね。
「そう言えば沙良。昨日は何故、王都にいったんだ?」
「ドワーフの武器屋にいったんだよ~。お父さんが、ガーグ老に教えてもらったみたい」
兄から王都にいた理由を聞かれて、ドワーフを見にいったと伝える。
「王都には、ドワーフの鍛冶師がいるのか?」
「うん、初めて会ったけど全然分からなかった! あれ? お父さんはどうして、ドワーフだと分かったのかな?」
少し疑問に思っていると、旭がドワーフに会いたいと言う。
あ~それは、少し待った方がいいかも?
あまり短期間に王都と迷宮都市を移動するのは、移動手段が限られている異世界で拙い。
誤魔化すにも限度がありそうだし……。
ただ、近い内に王都の冒険者ギルドで従魔登録をする必要はありそうだ。
今のままだと、迷宮都市以外では従魔達を連れ歩けず困ってしまう。
ドワーフの鍛冶師に会うのは、その時までお預けだと答えると2人がガッカリした表情を見せる。
男性は武器を見るのが好きだよね~。
またロマン武器が見付かるといいなぁ。
今度は捕捉した相手に対し自動追跡機能があればいう事なしだ!
それなら、きっと私でも使い熟せるだろう。
まだ見ぬ戦利品に想いを馳せ、異世界の家からホームへ戻る。
まだ時間があるからと、2人はこれからジムにいくらしい。
私は3人の女性陣と合流しようか迷ったけど、特に買いたい物もないし止めておいた。
久し振りに、喫茶店でウインナーコーヒーを飲みながら読書でもしよう。
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