【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第634話 迷宮都市 樹おじさんの召喚 8 武術稽古 お礼の『五目あんかけうどん』と『カツ煮』

公開日時: 2023年12月14日(木) 12:05
更新日時: 2024年7月2日(火) 20:34
文字数:2,313

 ガーグ老といつきおじさん相手に槍を繰り出す。

 2人はゆっくりした動きで対応してくれたから、なんとか相対稽古の体を成した。

 いきなり2人相手は難しい。

 槍術Lvが6に上がり、Lv55のお陰でなんとかついていける感じかな。

 稽古中、樹おじさんに微笑ましいものでも見るかのような視線を向けられ、落ち着かない気分になった。

 旭家と椎名家は子供の頃からの付き合いだから、私も可愛がってもらった記憶があるけど……。

 おじさんの私を見る目が、それとは微妙に違う感じがする。

 なんだろう?


 2時間後、稽古が終了。

 ガーグ老は父と樹おじさんの3人で工房内へ向かっていった。

 私は昼食の準備を始める。

 2月でまだ寒いから、今日は体が温かくなる食べ物にしようかな?

 シュウゲンさんも食べるのは久し振りだろう。


 材料を刻み冷凍うどんをで、麺つゆで作った汁に溶かした片栗粉でとろみを付ける。

 うどんだけじゃ足らないだろうと、カツ煮を用意した。

 アイテムBOXには兄の好きな豚カツが、揚げたての状態で沢山入っている。

 料理中は誰も気にしないから出しても大丈夫だろう。

 お米がないからカツ丼には出来ず残念だ。

 茹で上がったうどんに五目あんを掛けると、三男のキースさんが配膳してくれる。

 相変わらず、四男と五男にそのお嫁さん達は動かない。

 兄弟間の序列は一体どうなっているの?


 出来上がった料理を、木の下へお供えにいく。

 しずくちゃんのお母さんは、先日作った激甘カレーの残りと食パン一斤にダンジョン産の果物を持ってきたらしい。

 カレーを食べた事がなければ、最初からそういう味だと思うだろうか?


「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『五目あんかけうどん』と『カツ煮』です。『五目あんかけうどん』は非常に熱いので、取り皿に入れ食べて下さいね。それでは頂きましょう」


「頂きます!」


「これは期間限定の『うどん』だな。あれは50食しかないで、まだ一度も食べた事がないのだ」


 そう言ってガーグ老が嬉しそうに、『五目あんかけうどん』をすくい取り皿に分けている。

 

「おおっ、なんだかほっとする味だわ。どれ『カツ煮』とやらも食べてみよう。これはっ! 甘辛くてうどんによう合うわい」


 どうやらご老人の口に合ったようだ。

 シュウゲンさんは、『カツ煮』を食べて懐かしそうに目を細める。


小夜さよの味そっくりだなぁ。美佐子みさこは、良い母親だったようじゃ」


 満足そうにうなずき、孫の私を笑顔で見た。

 長命なドワーフに転生したシュウゲンさんは、ずっと祖母の料理が食べたかったんだろうな……。

 いつもは私の隣に座るガーグ老が、今日は樹おじさんの隣にいる。

 そしておじさんに色々と話しかけているようだ。


「姫様の食べたがっておった料理を、サラ……ちゃんが作ってくれての。『ハンバーガー』や『ピザ』や『フライドポテト』は、確かに太る食べ物であった。『うなぎの蒲焼』は、本当に美味しかったですぞ! 少しばかり効果があり過ぎて、いささか困り申したが……」


 人違いをした樹おじさんに、姫様の話をしているらしい。

 私はどうにも気になり仕方なかったため、正面に座っている樹おじさんへ尋ねてみた。


「ガーグ老は、樹おじさんをどうして姫様と勘違いしたの?」


「あぁ、それは……。俺の魔力が姫様に似ていたから、姿変えの魔道具で変装していると思ったみたいだ」


「ポチとタマがなついているのも、その所為せい?」


「元は姫様の従魔だから……そうだろう」


「ふ~ん。じゃあ、樹おじさんの言葉を理解出来るのかな?」


「今はガーグ老の従魔だから、いくら魔力が似ていても俺の言葉は分からないだろう」


 その返事を聞いた私は、今も樹おじさんの両肩から降りない2匹の従魔へ口を開かず質問してみた。


『樹おじさんの言葉が分かるなら、首を上下に振ってくれる?』


 すると私の言葉を理解している2匹は、おじさんと私の顔を交互に繰り返し見る。

 あ~これは、どちらの言う事を聞けばいいのか迷っている感じだね。

 賢い従魔達は樹おじさんの言葉を聞き、分かるとは答えられないんだろう。


『大丈夫。ポチとタマに会ったから、樹おじさんは照れてるだけだよ~。言葉が理解出来ると分かっても怒られないからね』


 安心させるようにそう言うと、2匹はこくりと頭を動かす。

 やっぱり、樹おじさんの言葉も分かるんだ!

 姫様と似ているのが魔力なら私も似ているんだろう。

 亡くなったという話は、食事時に聞くのは止めておいた方がいい。

 それでも、まだ疑問が残るけど……。

 王都で見た、数百年前の第二王妃の肖像画はリーシャそっくりだった。

 そして姫様と似た魔力か……、何かつながりそうで繋がらないな……。

 昼食後、木の下へいくと2通の羊皮紙が置かれている。


『ユカ様 四角いパンは美味しく頂きました。茶色のスープは甘いのですね。ですが、あまり無理をされぬよう果物だけで充分です』


 ……異世界のパンに比べたら、食パンはとても美味しいだろう。

 今回はサンドイッチではなく、そのまま渡したから変な味もしないだろうけど、カレーは妖精さんにも甘かったようだ。

 私宛の手紙には、料理のお礼とショートブレッドの追加が欲しいと書かれている。

 妖精さんは、本当に甘い物が好きみたい。


 最近仕事で忙しそうにしていたガーグ老達は、しばらく家具工房を休業するらしい。 

 今日は時間があると言うのでショートブレッドを渡しお礼を述べ、父と祖父にかなで伯父さんと樹おじさんを残し工房を後にした。

 あの4人は、かなり将棋が強いので良い対戦相手になると思う。

 槍での勝負が付かなかったからか、ガーグ老がシュウゲンさんに対局を申し込んでいたけど……祖父には勝てないだろうなぁ。 

 私達は樹おじさんの従魔をテイムしに、これからダンジョンへ向かう事にした。

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