俺が気付いたくらいだ当然、娘の護衛をする影衆達も知っているだろう。
何の報告もないのは害がないと判断したからか?
俺は響が持っている念話の魔道具を借り、ガーグ老へ連絡をした。
『ガーグ老。アマンダ嬢のパーティーメンバーは、冒険者ではないようですね。調べていますか?』
『姫様、気付きなさったか。彼女はリザルト公爵令嬢を名乗っておるが、現在の公爵に娘はいないようでの。前公爵は息子以外、全員亡くなっている記録がある。まぁ、その息子も現在行方不明で消息は分からぬが……。数百年前の公爵夫人が他国から嫁いだ第三王女という縁があり、リザルト公爵を頼ってカルドサリ王国に来たようですな。護衛と一緒なのは王族の可能性が高いとみておる。御子が迷宮都市で冒険者をする10年以上前からダンジョン攻略をしている事から、問題ないと報告せんかった』
『そうですか……。最近、迷宮都市に来た冒険者ではないのですね』
『アマンダ嬢なら心配いりませんぞ? 御子にも好意的で、何かと気に掛けておられるようだしの』
『分かりました。念のため連絡が取れるよう、私にも念話の魔道具を用意して下さい』
ダンジョン攻略中は響と別行動になる。
ガーグ老達は常に護衛しているだろうが、姿の見えない相手へ独り言を話していれば妻が不審に思うだろう。
口に出さずとも会話が可能な魔道具で話した方がいい。
『明日、お渡し致そう』
アマンダ嬢がどういった理由でカルドサリ王国へ来たのかは分からないが、10年以上前から迷宮都市で冒険者をしてるなら娘とは無関係だろう。
前公爵が家族と一緒に亡くなっているのは、少し気になるが……。
それに行方が分からない息子とは……、何があったんだ?
出来れば、娘と仲の良い冒険者を疑う事はしたくないな。
響に念話の魔道具を返し、俺達は沙良ちゃんの移転で自宅へ戻った。
精霊王から貰った世界樹の苗木を庭に植えておこう。
美佐子さんに成長の魔法を掛けてもらえば、少しは大きくなるだろうか?
現在20cmくらいの小さな世界樹から【エルフの秘伝薬】も作りたいしな。
今夜も三人目を欲しがる意欲的な妻を眠りに就かせ、寝不足気味の朝を迎える。
その後は金曜日までダンジョン攻略をし、午前中は果物採取をする妻と娘に代わり迷宮モンキーを倒しまくった。
3時間毎に安全地帯へ戻る際、怪我人の治療をする妻へ冒険者のお礼の話を響から聞いた俺は夫だと触れ回る。
こんな可愛らしい少女姿の妻へ、お礼と称し不埒な真似するのは許さない!
夫の俺だって、まだ手を出してないんだぞ!
20歳の妻が心配で仕方ないな。
もういっそ3人目を作り、家で留守番してもらう方がいいか?
ダンジョンから地上に戻り、娘の経営している3店舗の従業員へ挨拶をした。
雇っているのは路上生活者だったと聞き、継続した支援を行っていると知る。
「優秀な娘だなぁ~」
きっと、美佐子さんの育て方が良かったんだろう。
娘を大切に育ててくれたのは感謝しかない。
夕食は『製麺店』の従業員と食べるみたいだ。
元冒険者の彼らは腕や足を失っている。
それでも働けるようにと職を与え、住み込みで雇っていた。
年齢層が高いのは、冒険者として活動出来ない高齢者を優先的に選んだのだと思う。
沙良ちゃんが料理をしている間、男性陣は囲碁の相手をする。
漢字が読めない異世界人には囲碁の方が覚え易い。
これは義父が一番強かった。
夕食の『ミートパスタ』と具沢山の『シチュー』を食べながら、新しくメンバーになるセイという人物の話題が出る。
ティーナの契約竜か……。
本人に記憶はないようだが竜族に会うのは初めてだ。
どんな姿をしているのか興味が湧く。
本体が竜なら人間に変態した時は、かなり大きいんじゃないだろうか?
あぁ、でも今は日本人姿のままだから見た目じゃ分からないかもな。
翌日、土曜日。
妻は沙良ちゃんと一緒に薬師ギルドへ出掛けた。
俺も薬師ギルドに行きたい用があるんだが……。
精霊王に記してもらった、ポーションを作ってほしい。
異世界へ行くには娘の移転が必要なので、武術稽古の後が絶好の機会だ。
妻が不在の間、美佐子さんに世界樹の苗木へ成長の魔法を掛けてもらおう。
お願いすると快諾してくれ、彼女が苗木に手をかざす。
すると一瞬で1m程の高さに成長し、一斉に白い花を咲かせる。
世界樹に花が咲くとは知らなかった。
葉とは違う効能があるんだろうか?
「この植物……。どこかで見覚えがあるような気がするんだけど、名前が思い出せないわ。何だったかしら?」
「俺も知らないんだ。先週、ガーグ老から貰った苗木だからね」
と言う事にしておこう。
美佐子さんは前世で世界樹を見たのかも知れないな。
お礼を言うと家に帰っていった。
薬師ギルドで仕事を終えた妻達が戻ってくる。
やけに結花の機嫌がいい。
薬師ギルドの仕事は割がいいのか?
「おじさん。Lvは上がった?」
「おう! 30になったぞ! ダンジョンの魔物は強いなぁ」
娘から今のLvを聞かれ、早くLv70になっておきたい俺は30と答えた。
「貴方、本当にLv30になったの? 私と一緒なんておかしいわよ!」
おっと、そりゃ拙い。
「……あれ? ステータスの見方を間違えたのかな? あぁ、Lv20の間違いだった!」
妻のLvを聞き慌てて訂正する。
「Lv20で間違いないですか? じゃあ、MPは1,638ですよね」
「Lv20で合ってるよ」
MPの計算が面倒くさいな……。
「じゃあ、このポシェットに空間魔法をお願いします。魔力が0になると昏倒してしまうので、ステータスを確認しながら魔力回復用のハイエーテルを飲んで下さいね」
「よし、マジックバッグを作ろう」
娘から10個のポシェットとハイエーテルを渡される。
Lv20だと8個しか作れないから、残りはハイエーテルを飲む必要があるんだな。
俺は数を間違えないよう慎重に空間魔法を掛けていく。
全てのポシェットをマジックバッグにしたら、娘からお昼をご馳走すると言われ、俺だけ外食するのは雫に悪いと思い手料理を希望した。
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