軽食を口にし紅茶を飲み干すと、一息吐く。
さて、ガリア様の尋問はどれくらい掛かるだろう?
その場には、うちの纏め役も責任者としている筈だが……。
先程、魅惑魔法の効果が高い事を言われていたから、部屋にいない可能性もあるか。
そこまで考えて、あっ! と思い出す。
彼らは簀巻きにされ、とある部分が出しっぱなしである事に……。
これでは、ガリア様に私が変態だと思われてしまう!
それは影衆達の仕業で、私の趣味じゃありませんから~!!
内心非常に焦っていると、纏め役が顔を出した。
「オリビア様。マケイラ家当主の尋問が始まりました。近くにいると魔法の影響を受けるそうなので、私達は部屋から離れた場所に待機しております。そのっ……ガリア様が犯人の状態を見た瞬間、顔を顰められ下穿きをご要望です」
「そうか……。お待たせする訳にはいかないな。12人分となると数が多い。悪いが、お前達の物を1枚ずつ提供してくれ。後で、その分の金は渡そう」
「はっ、ではそのように」
ガリア様は余程、ソレを見ながら尋問される事がお嫌だったようだ。
意外と繊細でいらっしゃる。
同じ男性なら、見慣れているモノなのに……。
何かトラウマでもあるのだろうか?
良い機会だから、父親との仲違いをここで解消してほしい。
今まで理由が不明だったが、本人もいる事だし原因が分かれば蟠りを解く方法も考え付くかもしれない。
私は傍に控えている執事長に、父とガリア様が不仲になった原因を尋ねてみる事にした。
「私の父とガリア様は、どうして仲が悪いのだ? 以前、父に聞いた時は馬が合わないと言い、はぐらかされてしまった。その後、不機嫌になったので余程相手の事が嫌いなんだろうと思っていたが……。今回のような事があると、両家に情報が迅速に伝わらない可能性がある。このままの状態は良くない。何か原因があるのなら話してくれないか?」
執事長は私の言葉を聞き、一度顔を横に振る。
「父が口止めしてるのだろうが迷宮都市に王族がいる現在、秘密にする事ではない。王女様の安全が最優先事項だ」
私がじっと見つめ続けると、暫くして折れたのか小さく嘆息し重い口を開いた。
「オリビア様。どうか私が話した事は内密に願います」
「分かっている。聞いた話は、私の胸の中にしまっておく」
「お二人は学院で知り合われ、良き親友として共に勉学に励み切磋琢磨しておられたようでございます。学院卒業後も何かと連絡を取り合い、親しくされておりました」
何だ、昔は仲が良かったんじゃないか。
どうしてそれが、こんな険悪な状態になるんだ?
「そしてカーサ様が先代の後を継ぎ当主となられた頃、王よりカルドサリ王国行きを命じられたのです。そして仲の良かったガリア様に諜報を担って頂きたかったのでしょう。その場でプロポーズされたのでございます」
うん?
父はガリア様の事が好きだったのか?
まぁあれ程お綺麗な方だから、面食いな武の出身者である父が惚れるのは理解出来る。
「それをガリア様は、その場で断られました」
「何だ、父はプロポーズを断られてスネているだけじゃないか。相手がその気じゃなければ仕方ないだろう。何が問題なんだ?」
「その、カーサ様はガリア様の事を女性だと勘違いされておりまして……。エルフの国では、カルドサリ王国と違い同性婚される方は非常に稀なのです。これは王族が一夫一婦制を貫いている事もありますが、お国柄とでもいいましょう。当然ながら、女性と思われたガリア様は大変激怒されたのです」
「女性に間違われプロポーズされたくらいで、こんなに長く仲違いをする必要はあるのか?」
私は両家が不仲になった原因を聞き、あまりの馬鹿らしさに頭が痛くなった。
子供の喧嘩じゃあるまいし、いい大人がいつまでも引きずる内容じゃないだろう。
「そのぉ、ガリア様は男性だという証を直接見せられまして……。しかも、か……いやそれ以上お話し出来ません」
なんと、衆人観衆の前でアソコを出されたのか!?
それはまた、何とも大胆な……。
では女性だと思っていた父は、かなりショックを受けただろう。
執事長が途中で言いかけて止めた言葉が気になるが……。
か……?
なんにせよ数百年前の出来事だ。
その後、お互い結婚しヒューの許嫁になっていた時期もある。
2人目が生まれなかった事で私達の婚約は解消されたが、まだ遅くはない。
両当主が再婚して、子供を儲ければ済む話じゃないか。
子供同士が結婚すれば、顔を合わせる機会も増えるだろう。
なんなら当人同士結婚してくれても全然構わないんだが、それは無理というものか。
執事長から話を聞き、2人が仲直り出来る方法を考えているとガリア様が戻ってこられた。
かなり疲れた様子で椅子に座るなり、ぐったりとされる。
「お疲れ様です。何か飲み物を持ってこさせましょう」
「あぁ、ありがとう。冷たい方が助かる」
メイドが運んできた紅茶を飲み干し、ガリア様が口を開くのをじっと待つ。
アシュカナ帝国の狙いは聞き出せただろうか?
「オリビア。彼らは、相当強い誓約をしていたようだ。肝心な事を話そうとした瞬間、心臓が止まった。これはいずれかの精霊と契約を交わしている可能性が高い。エルフが信仰している精霊ではなさそうだが……。死亡する前に聞き出せたのは、ダンジョン内へ呪具を設置した者とは別に潜入している諜報員がいる事と、次に狙う場所が王都のダンジョンだという事だ。彼らは呪具が既に解除されている事を知らなかった。影衆達が良い仕事をしてくれたようだね」
「では、犯人達からアシュカナ帝国には連絡が入ってないという事ですか?」
「そうだと思う。まぁ他にも潜伏している諜報員がいるのなら、迷宮都市の状況に付いて連絡はされるだろうけど。目的は別らしいから、詳しい事は分からないんじゃないかな?」
ガリア様が聞き出された情報は多くないが、少なくとも次の狙いである王都のダンジョンに警告は出来る。
「私はこれから冒険者ギルド統括本部へ事の顛末を報告します。少し、お休みになって下さい」
「あぁ、そうさせてもらうよ。用意してもらった下穿きは……捨てた方がいいだろう」
最後に不穏な事を言われると、ガリア様は目を閉じて椅子の背に凭れかかった。
失禁でもしたのか……。
後日。
処理をした纏め役に聞いた所、全員が昇天していたらしい。
ガリア様?
魅惑魔法って、そっち系ですか?
犯人の遺体は、その日の夜に服を着せ道端に置いた。
その後、遺体の数が6人増えていたが影衆達の仕業だろう。
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