旭を探すと既にテント内にいたので私達も撤収する。
「ハニー、また後でね!」
シルバーに乗り安全地帯に向かう途中で、ダンクさんのパーティーに会った。
私はシルバーの背に乗ったまま手を振り「お先に失礼します」と声を掛けて、そのままテント前まで直行する。
テント前にフォレストが寝そべっていたので、おや? と思いながら中に入ると旭と一緒に兄もいた。
帰りもフォレストに乗ってきたのか……。
いつもより速い!
迷宮タイガーは騎獣として大活躍しているみたいだ。
虎と狼、同じ体長3mの魔物だけど走る速度はどっちが上なのかな?
でもそんな比べるような事を考えちゃ、ご主人様失格よね。
それぞれに良い所があるんだし、最終的に2匹はドラゴンになって空を飛ぶんだから一緒よ!
さて、ホームの自宅に戻って昼食だ。
今日は兄とは時間が合わないと思っていたので別に食べる予定で朝お弁当を渡しておいたんだけど、兄がカレーうどんを食べたいと言うので、お弁当はアイテムBOXに収納しカレーうどんを作る。
時間停止のアイテムBOXがあるお陰で、急なメニュー変更にも対応出来るんだけどね。
これを日本にいた時に言われたら、二度とお弁当なんか作らないって大喧嘩になる案件だよ!
最初からカレーを作る時間は無いので、レトルトカレーにネギ・揚げ・豚肉を追加して最後に麺つゆを入れれば、カレーうどんによく似た味になる。
それだけだと兄には物足りないので上に豚カツを乗せてあげた。
旭は唐揚げが良いらしい。
私はエビフライを2本トッピング。
エビフライカレー大好き!
カレーうどんを食べる時は服に付くと大変なので、紙エプロンを付けてもらう。
注意して食べている時程、何故か汁を飛ばすんだよね~。
カレーは服に付くと中々落ちないので洗濯が大変なのよ。
デザートに、コーヒーゼリーを食べて2回目の攻略開始。
3人共、見事に進む方向がバラバラだ。
確かに、こんな冒険者パーティーはいないだろう。
私は2匹と一緒に森の中で薬草採取。
癒し草を探して地面を見ながら歩いていると、革製の何かを発見する。
近付いてよく見てみると、マジックバッグだった。
魔道具のマジックバッグは、魔法処理をされているので通常の革製品に比べて劣化する事がない。
何時頃から放置された物か分からなかった。
以前、コカトリスに石化されたダンクさんのご両親のパーティーを見付けた事を思い出し、もしかして付近に亡骸があるかも知れないと慎重に辺りを見渡してみる。
マッピングを使用し周囲1kmを上空から見てみたけど、予想していた冒険者と見られる遺体は何処にもなくて安心した。
石化された冒険者を見付けた時は状態が良かったので比較的動揺せずに済んだけど、遺体となると話は違ってくる。
普段見る事がないから、適切な処置も出来ず兄の所へ泣きつきに移転してしまうだろう。
いやだって普通に怖いでしょ!
ダンジョン内は魔石を抜かれた魔物以外、吸収しない仕様になっているから人間の遺体はそのまま残るのだ。
私は幸いにも、これまで遭遇した事はなかった。
あれば兄や旭も報告してくれるだろう……多分。
でも過保護な兄は、私が怖がると思って内緒にするかも?
ダンジョン内での治療行為は何度も見てきたけど、人の死に立ち会った事は今まで一度もないんだよね。
きっとそれは偶然なんかじゃなくて、兄と旭が死なないように必死に治療し続けたからだと分かっている。
冒険者として当然覚悟しておかなければならない、不幸な死――。
その結果が、路上生活をしている子供達の現状だった。
2人は、私に見せたくないと思ってるんだろう。
私はあらゆる面で兄達に守られている事を、もう少し自覚するべきかも知れないなぁ。
で、これは地下14階で亡くなった冒険者の物だろうか?
マジックバッグを手に取ってみると、中に入っている物が頭の中に表示される。
食料・水・魔物・魔石・調理道具・日用品・お金……。
食料と水は廃棄する必要がありそうね。
魔物も時間停止の無いマジックバッグでは換金出来そうにない。
基本的にダンジョン内での拾得物は拾った人の物になるので、このマジックバッグに入っている物は私が換金しても良い事になっている。
後は羊皮紙が何枚かあるだけだ。
もしかしたら、持ち主が分かるかも知れないとマジックバッグから羊皮紙を取り出した。
名前とか書いてないかな?
1枚目の羊皮紙を読んだ瞬間、手が震えた!
これっ、この文字っ、日本語だよ!
やっぱり旭やサヨさんの他に、地球から『手紙の人』に転移もしくは転生させられた人がいたんだ。
しかもこの人は冒険者をしている。
まだ生きているのなら、サヨさんが知らない話を是非とも聞かせてほしい。
相手は一体どんな人だろうか?
サヨさんみたいに転生した人かな、それとも旭みたいに転移させられた人かしら?
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