【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第448話 迷宮都市 滞在時間、僅か1時間だったウトバリの町&家の完成

公開日時: 2023年6月8日(木) 12:05
更新日時: 2023年8月30日(水) 21:52
文字数:3,568

 薬師ギルドを後にして、私達はウトバリの町まで兄の先導に従い次々と移転していく。

 カマラさんからもらった地図が、本当に正確で役に立っているよ。


 迷宮都市から馬車で2週間程の距離があると言われていたけど、私のマッピングを使用したら1時間で到着した。


 町に入り前回同様、まずは冒険者ギルドへ向かう。

 今回もパーティー募集の張り紙を依頼する心算つもりだ。


 ギルド内に入ると、カウンターにとても美人な受付嬢が3人いる。

 冒険者ギルドの受付嬢は若くて綺麗な人が多いけど、それにしても彼女達はレベルが段違いに見える。


 う~ん?


 これはもしやと思い兄達へ目配せすると2人が軽くうなずいたので、あぁやはりハーフエルフなのだと確信した。


 なんかやたらハーフエルフと遭遇そうぐうする確率が上がっているのは、気の所為せいなのかしら?


 先週に引き続き、オリビアさんを含めこれで7人だ。

 ウトバリの男性冒険者達は、受付嬢の心を射止めようと頑張るかも知れないけどね。


「こんにちは。パーティー募集をしたいんですけど、お願い出来ますか?」


「はい、この町は初めてのようですね。ギルドカードをお見せ下さい」


 私は言われた通り、冒険者ギルドカードを受付嬢に手渡した。

 カードが身分証になっているので、確認の意味もあるのだろう。


「サラさんですね。手紙が届いていますので、少々お待ち下さい」


 ギルドカードを返却されながら、そう言われた私はきょとんとする。

 ウトバリの町に来る事を知っているのは、先週行ったガウトの冒険者だけのはずだけど?


 しばらく待っていると、羊皮紙を手に持った受付嬢が戻ってきた。

 渡された手紙の差出人は、ガウトの冒険者ギルド職員からだった。


 サの付く女性冒険者を探している事を、あの女性冒険者のリーダーが親切にも受付嬢になんとか探してあげてほしいと願い出たそうだ。


 紹介状の文字がかすれて見えず、困っているからと言ってくれたらしい。

 そこで次に行く予定にしているウトバリの町へ、早馬を飛ばし手紙を送ってくれたみたいだ。


 手紙にはギルド職員に内容が伝えてあるので、サの付く名前の女性冒険者がいないか探してくれているだろうと書いてある。


 なんて優しい人なんだろう!


 でもギルド職員が冒険者の情報を開示するのは、個人情報の観点から見ると問題がある気がするんだけど……。


 異世界では個人情報をそこまで重要視していないのかな?

 まぁ確かに、冒険者に聞くより職員に聞いた方が持っている情報は多い。


「ガウトの町で人を探していたんですけど、サの付く女性冒険者の方はウトバリの町にいますか?」


「こちらで既に確認をしております。残念ですが該当人物はいませんでした。パーティー募集は、どうされますか?」


 彼女の返答を聞いて、雫ちゃんがいる場所は王都だったか……とガッカリした。

 この町にいないのなら、これ以上探すのは時間の無駄だ。


「いえ、申請は取りやめます。確認ありがとうございました」


「またのお越しをお待ちしています」

    

 何故なぜか非常に笑顔の受付嬢3人から見送られ、私達はウトバリの町から迷宮都市へと帰った。


 今回も雫ちゃんに会えず悲しんでいる旭の事は、もう兄に任せておこう。

 2人をホームの自宅に送り、私は空いた時間で商業ギルドのカマラさんに会いにいく。 

 

 1週間後に迫ったクリスマス会の会場を確保出来るか心配だった。

 依頼した家は今どんな状態だろう?


 商業ギルドの中に入ると、私の顔を見て受付嬢が直ぐに部屋へ案内してくれる。

 部屋に入り数分も待つ事なく、カマラさんがやってきた。


「いつもお世話になっております。家の進捗を確認しにきたのですが、現在はどこまで出来ていますか?」


「こちらこそ大変お世話になっております。ご注文頂いておりました新築の家は、昨日完成致しました。本日でも引き渡しは可能ですが、これから見にいかれますか?」


 なんと、既に家は完成したらしい。

 料金を上乗せして、魔法士に依頼した甲斐かいがあったわね!


「はい、是非ぜひお願いします」


 カマラさんの後を付いて商業ギルドを出ると、馬車で移動するようだ。

 正直、知らない土地にマッピングで移転するのは精神的に疲れるので、歩かなくて済む事にほっとする。

  

 短時間で、馬車だと往復4週間の距離を移動したからね。


 カマラさんが手配してくれた馬車は、普段私達が乗る乗合馬車とは違い振動が少なかった。

 これは、旭が言っていた貴族が使用する魔道具が使われた物だろう。


 サスペンションのような働きがあるのかな?

 この馬車に乗って町へ行くなら移動も楽かも知れないなぁ。


 契約したA地区の土地に入ると、馬車の窓から見える建物に変化を感じる。

 ここは迷宮都市でも富裕層が住む場所だから、庶民が住む家とは異なっていた。


 1軒、1軒の土地が広く、家も大きいし外観が凝っている。

 私は完成した自分の家がどんな状態になっているか、とてもわくわくしていた。


 人生で初めての持ち家だ。

 アパートは賃貸だったからね。


 ホームになってからは、持ち家というより拠点の意味合いが強かったし……。


 馬車が止まった先にあるのは、10mくらいの塀で周りを囲われた中身が全く見えない家だった。

 

 うんんっ?

 塀なんて注文した覚えはないんだけどなぁ~。


 家の門には、何やら複雑な意匠いしょうが描かれている。

 想像もしなかった外観に、私は唖然あぜんとなった。


 なんか、どこぞの要塞かと思う雰囲気ふんいきただよっている。


 周囲の家との違いは歴然だった。 

 私の家だけ完全に浮いているんですけど!?


 馬車を降りた私達は、固く閉ざされた重厚な門の前に立つ。

 

「扉の魔石に登録した人間しか中に入る事は出来ませんので、登録をお願いします」


 カマラさんが、私に血液を採取する針を手渡してきた。

 成程、マジックテントの侵入者防止結界と同じ仕様になっているのか……。


 私は針で中指を刺して魔石に登録した。

 次にカマラさんも別の針で指を刺したので、私が登録の処理をする。


 権限は家の持ち主にあるため、登録する事と解除が出来るのは私だけらしい。

 但し、他に2人まで同様の権限を持つ事が出来ると教えてもらった。

 忘れずに兄と旭にも渡しておこう。


 門は観音開きではなく、横にスライドするようになっていた。

 とても大きいので、前に開くと道を塞いでしまうからだろう。


 しかし、こんなに厳重にする必要はあったのかしら?

 目立って仕方ないんですけど……。


 中に入ると300坪の敷地の前方は何もない状態で、後方150坪に2階建ての家が完成していた。

 2階建てなのに、4階建てくらいの高さがある。


 天井を高く取り、建てられたようだ。

 そして左右の壁際には、注文通り5個ずつトイレが設置されている。


 奥に進み家の玄関を開けると、何もない広い部屋が見渡せた。

 うん、150坪もある1部屋だからね。


 しかも天井が高い! 

 まるで学校の体育館のようだ。

 これなら、子供達全員が入っても酸欠にはならないだろう。


 採光のためのガラス窓も大きく、室内はとても明るかった。

 夜になれば、天井に設置された灯りを付ける魔道具で室内を照らし出す事が出来るそうだ。


 スイッチと魔石を入れる場所を教えてもらい、右奥にある階段を上っていった。

 2階には中央に廊下があり、左右に3部屋ずつ同じ広さの部屋がある。


 これも注文通りだったけど、1部屋毎に侵入者防止結界の魔石が扉に付いていた。

 かなり厳重なセキュリティにしてくれている。


 部屋の中にはまだ何もない状態なので、1部屋見た後はもう必要がないだろうと1階に降りてきた。

 

「お客様、完成した家でどこか不具合はありましたでしょうか?」 

 

「いえ、注文通り出来ています。ただ、あの塀は……」


「あぁ、塀でございますね。子供達を家に招く時に近隣の住民達から苦情が出ないよう、誠に勝手ながら注文にはない物でございましたが、防音を兼ねて付けさせて頂きました」


「そうですか……。それは、こちらも気付かずありがとうございます」


 A地区に住んでいるのは富裕層なので、うるさいと迷惑が掛かる可能性があるのか……。

 子供の声は大人より甲高いので、気になる人はいるかも知れないな。


「それで塀に使用したトレントの木材が足らず、以前こちらで購入した分を転用したので相殺後の返却分がない状態になってしまいました……」


 大変申し訳なさそうな表情をするカマラさんに私は答えを返す。


「あぁ、構いませんよ。事前に渡したお金で足りたのなら特に問題ありません」


「そう言って頂けると助かります。では引き渡しは完了でございますね」


「はい、間に合って良かったです」


「ちなみに内装は、もう依頼済みでしょうか?」


「えぇ、紹介して頂いたガーグ老の工房へ家具は注文済みです。仕事が早いので助かりました」


「そうでございましたか。ガーグ老なら、お客様に相応ふさわしい家具を作成する事が可能でしょう」


 カマラさんはそう言って、安心したように微笑んだ。


 後でガーグ老の工房に注文した家具が完成しているか見に行ってこよう。

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