ダンジョンから出てホームへ帰宅。
沙良が朝作った弁当を食べながら、トイレ事情が問題だと深刻に話し出す。
日本の清潔なトイレに慣れているので、確かに異世界の簡易トイレでするのは難しいだろう。
俺はマジックバッグがあるくらいだから、マジックテントがあるかも知れないと提案してみた。
ダンジョンからホームに移転する際、テント内で行えばいつでも問題なくホームに帰る事が出来るだろう。
沙良は俺から聞いた提案を呑んで、魔道具屋に行く事にしたようだ。
お弁当のおにぎりを4個食べると沙良が驚いていた。
いやこの体、若い所為かお腹が空いて仕方無いんだよ。
おかずも色々あるし、全部手作りで冷凍食品は一つもない。
毎日、お弁当を作るのは大変じゃないか? と一度聞いてみたが、時間停止のアイテムBOXがあるから作り置きした料理を詰めるだけで簡単だと言われた。
俺は正直、日本で居た頃より美味しい食事を食べる事が出来て幸せだ。
男の1人暮らしで外食や店屋物ばかりだったからな。
コンビニ弁当と比べるのもどうかと思うが、沙良の料理の腕は本当に母親譲りで助かっている。
俺の好物も把握しているし、味付けも俺好みに合わせてくれている優しい妹なのだ。
目の前の、他人としか思えない美少女の顔を見る。
未だに視覚が妹と認識するまでに、一瞬誤差が生じてしまうのはどうしたものか……。
元はリーシャ・ハンフリーという名前の公爵令嬢だったんだ。
両親の容姿が、とても優れていたんだろう。
沙良には無い品のようなものもある。
性格も話し方も妹には違いないんだが、いかんせん年齢と声や容姿が違い過ぎて戸惑う事が多い。
俺は妹としてだけじゃなく、人様の娘を預かるという責任を強く認識している。
絶対に何があっても妹を死なせる事はしない。
その為に、たとえ人を殺める事になろうとも……。
日本のように法律がしっかりと定められている世界じゃないんだ。
人を助けるという医者の信念とは真逆の行為だが、俺はもうその覚悟を決めていた。
もしも沙良に危険が及んだ場合、躊躇う事は一切無いだろう。
昼食を食べ終わり異世界のダンジョン前に移転する。
再び乗合馬車に乗り冒険者ギルドまで戻る事になった。
乗り合わせた4人組の冒険者は全員無言で、何を考えているのか分からない。
1時間は苦痛だった。
沙良も居心地が悪そうだ。
魔道具屋に寄ってテントを調べると、やはりマジックテントが置いてある。
普通のテントもあるが、マジックテントには侵入者防止の結界が付与されていた。
沙良の身の安全の為にも、ここはマジックテントを買うべきだろう。
「あった、これにしよう!」
そう言って沙良が指をさしたのは6人用のマジックテントだ。
「6人用って、必要か?」
「小さいより、大きい方がいいじゃん!」
「あ~、好きにしろ」
金の心配はいらないので、沙良の好きにさせる。
どうせテントで寝る事は無いんだから2人用で良かったのにな。
6人用のマジックテントに金貨3枚(300万円)支払うと、店主がランタンを1つおまけしてくれた。
燃料に使われているのは、ファイヤースライムの魔石らしい。
この世界の物に興味は無いが、魔道具がどういう風に作られているのかは少し知りたいと思った。
俺達が持っている魔道具はマジックバッグ6個。
角ウサギが10匹入る物2個・金貨1枚(100万円)。
ボア・ベアが1匹入る物2個・金貨2枚(200万円)。
先日購入したマジックバッグ10㎥2個・金貨30枚(3千万円)。
と、いずれも高額となっている。
ファイヤースライムの魔石を使う魔道具があるのなら、他の属性スライムを使用した魔道具もある筈だ。
例えば水が湧き出る水筒とか……。
ウォータースライムの魔石があれば、作れそうじゃないか?
それに冒険者には売れそうな商品だ。
馬車移動しか出来ない異世界では、コンビニも無いから必需品だろう。
他にもファイヤースライムの魔石を使用した料理道具があるかも知れない。
毎回、薪を使用しダンジョン内で料理を作るのは大変そうだ。
錬金術師か魔道具職人なんてのも、いるのかもな。
折り畳む事が出来ないマジックテントを、今日購入したマジックバッグ10㎥の中に一度入れる。
容量を圧迫するので、後で沙良のアイテムBOXに入れ替えてもらおう。
なるべくなら魔物を沢山狩って、マジックバッグ10㎥の方に入れておきたい。
マジックテントに付いている魔石に血を垂らし使用者登録をする。
これもギルドカードと一緒で、血液で個人を特定しているんだろう。
何気に、ここだけ技術が高い。
俺の常識では有り得ないんだが……。
魔法が使用出来ると予想外の発展を遂げるらしい。
最後にマジックバッグは形が一緒だけど容量の違いは魔法使いには分かるので、注意した方がよいとアドバイスを受けた。
1つ金貨15枚(1千500万円)もする高額商品だ。
盗まれないよう、心配してくれたんだろう。
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