【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第788話 迷宮都市 アマンダさんからの依頼 4 エンハルト王国へ

公開日時: 2024年5月16日(木) 14:03
更新日時: 2024年9月7日(土) 13:06
文字数:2,371

 アマンダさんの本当の身分と性別は、同行するメンバー以外秘密にする。

 依頼内容の青龍が秘匿ひとく事項に該当し、守秘義務が発生するからだ。

 彼が国へ戻ったあと、再びカルドサリ王国で冒険者をするかどうかは分からないけど……。

 いつわったままなら、私達もアマンダさんとして接した方がいい。

 ダンジョン攻略を終える金曜日まで、普段通り対応した。


 ダンクさんに私、兄、あかね、セイさんはしばらく休暇を取ると伝えておく。

 明日エンハルト王国へ移動し、2日で依頼を済ませ戻るのは無理だろう。

 『肉うどん店』の母親達に、日曜日の炊き出しをお願いしてホームへ戻る。

 同行するのはガーグ老達だけかと思ったら、話を聞いた女官長達もついてくるそうだ。

 相手がエルフの王族だと思っているなら、こちらもはくが必要らしい。

 そのため、待ち合わせ時間より早く家へ集合し服を着替える事になった。


 私達が不在の間、他のメンバーはホーム内を使用出来ないから旭はトイレが~となげいている。

 異世界生活が長いかなで伯父さんやしずくちゃんとお母さんは、仕方ないとあきらめたよう。

 母とシュウゲンさんは、ずっとホーム内にいるので問題なし。

 父はホームで生活出来ないと知っても普通だった。

 早崎さんは何が不便なのか、まだ分からないみたい。

 アイテムBOX持ちの2人がいるから、食事に関しては大丈夫だろう。

 何品か作り置きの料理を旭に渡し、収納した魔物も入れ替えてもらい早崎さんのLv上げを頼んでおいた。


 土曜日、朝6時。

 メンバーを連れ異世界の家へ移転。

 ヴィクターさんとの待ち合わせ時間は8時。

 それまでに同行するメンバーの衣装変えをする。

 既にガーグ老達と女官長達が正装し待機していた。

 早速さっそくいつきおじさんが2階の私の部屋へ連れていかれる。

 兄は別の部屋で着替えるようだ。


 1時間後。

 樹おじさんが、白を基調とし銀色・金色・紫色の刺繍ししゅうほどこされた衣身を身にまとい戻ってくる。

 髪は複雑に編み込まれ、紫色の宝石が付いた額飾りを着けていた。

 これはエルフの王族の正装なんだろうか?

 兄はガーグ老達と同じような衣装を着ている。

 2階の部屋へ行くと、女官長達に衣装を着替えさせられた。

 前にも経験しているので私は大人しく我慢する。

 リーシャはエルフの正装がよく似合うし、私もたまには綺麗な恰好かっこうがしたい。

 自分では出来ない髪型にしてもらえるのも嬉しいんだよね。

 着付け終わった女官長達が、満足そうにうなずいたのを確認し部屋から出た。


 1階にいたメンバー達に、行ってきますと別れを告げ庭へ出る。

 高額な依頼料金貨300枚(3億円)を聞いた雫ちゃんのお母さんは、にこにこ顔で樹おじさんを送り出す。

 茜もセイさんもエルフの正装に着替えていた。

 兄と茜は背が高く父によく似た容姿をしているから、衣装が映えるなぁ~。

 セイさんは童顔で背が低いから、騎士の衣装は似合ってない気がする。

 8時ちょうど、アマンダさんのパーティーメンバーが家の前に到着。

 姿変えの魔道具を解除したヴィクターさんは、かなりイケメンな男性だった。

 アマンダさんの姿をしている時より少し背が高い。

 全員エンハルト王国の正装なのか、青いマントを羽織はおっていた。

 ヴィクターさんだけ、マントに豪奢ごうしゃな金色の刺繍が入っている。


 王都までの移動方法は何だろうと思っていたら、ケンさんが騎獣を呼ぶ笛を吹いた。

 少し待つと、上空にワイバーンが現れ庭に降り立つ。

 初めてワイバーンを目にした私は興味津々だ。

 体長20mくらいありそう。

 その背にヴィクターさんのパーティーと、女官長達が騎乗する。

 ガーグ老達はガルちゃんで、私と茜はダイアンに兄と樹おじさんとセイさんはアーサー達の背に乗り浮き上がる。


 私がテイムしたのでガルちゃん達はLv100を超えているし、茜の従魔達はLv200超えだ。

 ワイバーンの飛翔速度に充分ついていけるだろう。

 シルバーとフォレストはアイテムBOX内にいる。

 もし依頼中、危険があれば外に出す心算つもりだ。

 茜も同様に残り3匹のアーサー達をアイテムBOXに入れている。

 何事もなければいいんだけど……。


 王都まで3時間程掛かり王宮へ。

 ヴィクターさんが門で身分証を見せ、私達は王宮内に入った。

 事前に魔法陣を使用する許可を得ていたのか、王宮の奥まで誰にもとがめられる事なく進む。

 人の姿がまばらになった頃、入り口を2人の騎士が守る建物へ着いた。

 ここに、他国へつながる移転陣があるんだろうか?

 ヴィクターさんが黒いカードのような物を騎士へ渡すと、それを機械に通し確認している。

 この場所は身分証だけじゃ入れないのか……。

 カードは鍵も兼ねているようで、建物の扉が開いた。


 ヴィクターさんの後に続き、中へ入っていく。

 そこには魔法陣を囲む6人の宮廷魔術師の姿があった。

 ダンジョンの魔法陣とは異なり、起動に魔力が必要らしい。

 床に描かれた大きな魔法陣の上へ移動すると、宮廷魔術師達が何かの呪文を唱え始めた。

 それを見た女官長達があきれた表情をするのは、魔法の行使に呪文を唱える必要がないエルフだからだろう。

 そういえば、女官長達はカルドサリ王国で宮廷魔術師をしていたんだった。

 全員が辞めてしまったようだけど……。

  

「遅い! 私が代わります」


 女官長が一喝いっかつすると、彼らは青ざめた表情になる。


「魔術師長……。これは私達の仕事です」


 それでも職務を果そうと、その場の責任者がおずおずと口を開く。

 今頃エンハルト王国でもタイミングを合わせ、魔術師達が魔法陣の前で呪文を唱えているはずよね? 中断して大丈夫かしら?

 私の心配をよそに女官長が片手を上げ振り下ろした瞬間、目の前の景色が変わった。

 どうやら、エンハルト王国の魔法陣へ移転したようだ。

 周囲にいた魔術師達が、口を大きく開け私達の姿を唖然あぜんと見ている。

 他国に着いて早々、やらかした感が強い。

 そして女官長は魔術師長だったのか……。

 カルドサリ王国の優秀な魔術師が、10人も一度にいなくなって問題ないのかなぁ~。

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