翌日、ダンジョンに長く潜る準備をして黒曜に騎乗しマクサルトへ向かった。
スレイプニルを借り王都まで来た時は1週間掛かったが、今回は30分で到着する。
そのままダンジョン前へ移動を続け、儂らを降ろそうとする黒曜に声を掛けた。
「従魔登録をしたから、一緒にダンジョンへ入ろう」
『私も付いて行きたいと思っておりました。ご主人様の、お役に立ってみせます!』
いつもダンジョン前に待機させておったが、黒曜も中に入りたかったようじゃ。
やる気をみせる黒曜の背をぽんぽんと叩き、ダンジョンの入口で入場料を払う。
竜馬を見たギルド職員が制止しようとして、首に付けられた従魔用の首輪に気付き唖然とするのを横目に中へ入っていった。
地下1階~地下10階は迷路状なので、黒曜に次の階層までの階段を指示し進んでいく。
会敵した魔物は黒曜が魔法を使用し即座に倒してくれた。
儂は騎乗したまま倒れた魔物をマジックバッグに収納するだけで済み、かなり楽が出来る。
これまでは全ての魔物を儂1人で倒しておったが、初めてパーティーを組んだ気持ちになった。
黒曜の使用する魔法は雷系なので、皮に傷も付かぬし相性がいいわい。
肉は多少焦げておろうが、皮の方が換金額が高いから収入が減る事もなさそうだ。
問題なく地下11階まで進み広い階層に出ると、魔物を回避するため空を飛び次の階段へ降りる事を繰り返す。
思った以上に攻略速度が上がり、1時間後にはマクサルトの最終攻略階層である地下49階へ辿り着いた。
地下50階以降はダンジョン地図も販売されておらず、常設依頼も出ていない。
儂もLvが100に上がり鍛冶職人になるの優先させたため、この先は進んだ事がなかった。
安全地帯で一度休憩し地下50階へ続く階段を下りると、突然雪が降る階層に変わっておる。
ダンジョン内で雪が降るとは驚きじゃ。
急に寒くなった気温に対応するべく、マジックバッグからマントを取り出し羽織った。
ドワーフの国では雪が降らず、防寒着等必要ないから持っておらんのだが……。
こりゃ、凍死する前に引き返した方がいいかも知れんな。
そう思い振り続ける雪を掌に載せ景色を楽しんでいると、記憶より寒さを感じない。
これは、火の精霊王の加護があるせいだろうか?
バールと黒曜に寒くはないか尋ねると、大丈夫だと言われるのでこのまま攻略を再開する。
地下50階の上空から階段を探し、魔物を倒さず次の階層へ移動した。
それから地下99階まで同様に進み、地下100階へ降りる階段の前に陣取る大きな魔物の姿を発見。
ふむ、この魔物を倒さん事には次の階層へ行けぬようじゃ。
頭に2本ツノを生やしたサイのような魔物は儂が倒そう。
黒曜に手出し無用と伝え、ひらりと飛び降り魔物の背中に着地して、角をがっしり両手で掴み両足を首に回し締め殺す。
邪魔な魔物を片付け階段を下りようと前方に視線を向けた瞬間、突然小屋が出現した。
なんじゃ、この胡散臭い小屋は……。
ダンジョンに似つかわしくないその小屋を見て、罠だろうかと思案する。
そんな現象が起きるとは聞いた事がない。
気になったが、小屋は無視して先に進もうと決めた。
地下100階は、ソレイユの町のダンジョン地下10階と同じような狭い空間で何もない。
どうやら、このダンジョンは地下100階が最終階層らしい。
ダンジョンボスはおらんのかの?
気落ちして地下99階へ上がり、先程無視した小屋が消えずにいるのを見て少し興味が湧いた。
まぁ、罠だとしても何とかなるじゃろ。
せっかくここまで来たのだから、何の収穫もなく帰るのは惜しい。
「バール、小屋の中に入るぞ」
「シュウゲン様の、お好きなようになさって下さい」
特に警戒した様子もない彼に、儂の考えすぎかと首を捻りながら小屋の扉を開けた。
開けた途端、魔物が出て来るかと身構えておったが小屋内は何もなく拍子抜けする。
唯一目に止まったのは床に描かれた魔法陣だけ。
以前、精霊召喚する時に見たものとは文字が違っている気がするが……。
用途の分からぬ魔法陣を調べようと、小屋内に足を踏み入れる。
魔法陣の中央に進んだら突如、半透明な画面が現れ文字が浮かび上がった。
『ホーンバッファロー討伐おめでとうございます! この画面に触れた時点で登録者となります。この移転陣で地下101階~地下150階まで移動可能になるので、引き続きダンジョン攻略をお楽しみ下さい』
おおっ、これは移転陣であったのか!
では儂が倒した魔物は、ダンジョンボスだったようだ。
何故、地下100階ではなく地下99階にいたのか疑問だが、討伐成功者への報酬らしい。
罠じゃなかった事に安堵し画面へ触れると、
『移動したい階を押して下さい』
文字が変化し、地下101階~地下150階までの数字が表示される。
ここは地下150階一択じゃ!
地下150階を押すと、ブンっと音が鳴り現在の階層表示に切り替わった。
今の一瞬で地下150階に着いたのかの? エレベーターのような仕組みじゃな。
半信半疑で変化のない小屋の扉を開け外に出る。
そこから見えた景色は、地下99階の雪が降るダンジョン内とは全く違っていた。
というより、ダンジョン内ではないのかも知れん。
太陽がある空の下だと思わせるくらいの明るさに、思わず上を見上げ固まった。
儂の目がおかしくなったのか? 太陽がある……。
「黒曜、上空を飛んでくれ」
『承知しました、ご主人様!』
居場所を特定しようと黒曜に頼み、上空から調べたが見知らぬ地形だった。
やがて都市のような建物に一際大きな塔が見えてくると、バールが驚いたような声を上げる。
「あれは摩天楼のダンジョン!? シュウゲン様、ここは西大陸にあるカルドサリ王国のようです」
「西大陸だと!!」
ドワーフの国がある北大陸ではなく、別の大陸に移転したと知り驚愕した。
これは冒険者ギルドへ報告する義務があるな……。
移転陣を使用して他国ばかりか別大陸へ行けるのは、かなり重要な問題じゃ。
もし他のダンジョンにも同じような移転陣があるなら、入国審査を得ず密入国が可能になる。
犯罪者が知れば逃亡先には困らぬであろう。
地下101階から全ての移転先を確認する必要がありそうだ。
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