2人で6人用のテントを使用するのは奇妙に見えるのかもな。
だが、前回感じた嫌な視線は感じない。
ここにも男性冒険者は居るが、真面な部類の人間なんだろう。
沙良は女性冒険者が料理をしているのを見て、使われている魔道具に興味を持ったようだ。
火が出ていないから電子調理器に近い物なのか?
ミリオネの町では見かけた事がない。
庶民は薪で料理をするから、やはり高価な魔道具なんだろう。
俺は小学生のキャンプで、飯盒炊爨をした時以外に薪を使用して料理をした事なんかない。
メニューは必ずと言っていい程カレーを作るんだが、ここで明暗が分かれる。
火の通っていない、人参やじゃがいもを食べる羽目になった班は結構いたな。
ご飯も、おかゆに近い状態だったり、なま米に近い状態だったりと様々だ。
俺達の班は幸いにも普通だった。
けれどあの時、自分達で作ったカレーは妙に美味しかったと記憶している。
もう40年は前の事なのに、未だ覚えているとは驚きだ。
そして、キャンプと言えば謎の告白タイムだ。
何故か修学旅行の時と同じで、皆やたら告白したがる。
イベントがきっかけになるのか?
まぁ、大抵そこで付き合う事になったカップルは、直ぐに別れるんだがな。
吊り橋効果に近いのか……。
また沙良が違う女性に、奴隷商に気を付けるように注意されている。
小さいと言われた沙良は複雑な表情をしていたが、これは相当違法な事をしているっぽいな。
この町にいる間は気を付けておこう。
俺が子供の頃のキャンプの思い出に浸っている間に、沙良は女性達から情報を集め終わったらしい。
テントから自宅に戻った時に集めた情報を話してくれた。
路上生活をしている大人と子供の現状、奴隷商の事、クランの事、攻略時間引き上げの件。
成程、色々と問題がありそうだ。
ダンジョンがあるだけで冒険者の人数が多くなり、必然そこには闇が生まれるんだろう。
全ての人間が善人だという訳じゃない。
当然楽をして稼ぎたい人間や、報酬の高い依頼を悪い事だと知りながら受ける人間だっている。
判断基準は自分に委ねられているのだから、一度足を踏み外した人間は際限なく落ちていくだけだ。
いくら軌道修正を図ろうとしても、一度誘惑に負けた人間はそう簡単には意識を変えられないだろうな。
ここには沙良を狙う人間が沢山いそうで、俺1人で守り切れるかどうか一瞬不安が過ぎる。
つい眉間に皺を寄せて考え込んでしまった……。
再び安全地帯に戻ってからは順調に狩りを続ける。
これは、初日の収入を大きく上回りそうだ。
朝5時出発の乗合馬車に乗って、冒険者ギルドで換金してもらう。
金貨1枚・銀貨52枚(152万円)の収入になった。
思った通りファングボアとリザードマンは、皮の状態が良いのでMAXの買取金額だ。
1日の収入が、ついに100万円を超えた!
やはり、ダンジョンは魔物の数が多いので効率が良い。
年収で換算すると、月20日ダンジョンに潜った場合は3億6千480万円にもなる。
この年収を日本で稼げる者は、そういないだろう。
地下1階でこの稼ぎなら、換金額が高い地下10階ではどうなるのか非常に期待出来る。
でもこれは、沙良がマッピングで魔物を見付けながら狩っているからだろう。
普通の冒険者は、そこまで収入は多くない筈だ。
リザードマンが使用していた槍は、状態が良い物は武器屋で売る事も出来るらしい。
沙良はミリオネの子供達に渡したいと、アイテムBOXに収納していた。
収入が増えたのでダンジョンに潜るのは月~金の週5日のみとし、土・日は休む事にした。
これまであまり休んでいなかったから、週休2日制にしてもらえると俺も助かる。
沙良もダンジョンで魔法を覚える事が出来て、Lv上げを楽しそうにしていた。
今はまだLv0でMP消費が1なので、どれだけ使用しても528ある魔力が尽きる事は無い。
ダンジョン内の地図だが、精度は極めて高い物で驚いた。
縮尺率も問題なく、銀貨10枚 (10万円)の価値はあった。
これは魔法的な何かで書かれた物なのか?
いまいちこの世界の文明レベルが分からない。
男性冒険者や奴隷商の事等、気がかりな面も多いがミリオネの町を出てダンジョン攻略に向かったのは英断だったと言えるだろう。
あとはLvをさくさく上げてもらい、俺のマンションを取り戻す事が当面の目標だ!
どうかPCのパスワード解除を依頼しないでいてくれよ~。
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