樹おじさんに何が食べたいか聞くと、外食ではなく私が作った料理がいいと言われた。
それを聞いた雫ちゃんが、途端に身を乗り出し料理をリクエストする。
「沙良お姉ちゃん。私、久し振りにオムライスセットが食べたい!」
彼女が言うオムライスセットは、子供の頃に双子達が大好きだったオムライスにエビフライとハンバーグが一緒になっているワンプレートの物だろう。
子供は、お子様セットが好きだよね~。
双子達は大人になっても、オムライスセットを作ってほしいとよく言ってきたけど……。
雫ちゃんにも作ってあげたから覚えているのかな?
「おじさん、オムライスセットでいいですか?」
「あぁ、沙良ちゃんの料理は何でも美味しいからな。雫の食べたい物でいいぞ」
一応、マジックバッグを作製してもらったお礼なので本人に確認を取る。
私は外食する心算だったんだよね。
まぁ、手料理が良いと言われれば作りますよ。
ハンバーグもエビフライも出来立ての状態でアイテムBOXに収納してあるから、作るのはオムライスだけだ。
コカトリスの肉を使用してチキンライスを作り、その上に卵2個使用したオムレツを載せ半分に割ったら、とろとろの半熟卵が掛かる状態になる。
今風のオムライスにエビフライとハンバーグを添え、上からデミグラスソースを掛ければ完成。
ちなみに旭は、上にケチャップが掛かっているのが良いのか卵で巻いた方が好きみたい。
「お待たせ~。オムライスセットだよ!」
「わぁ~、美味しそう! 頂きます!」
雫ちゃんが一番にスプーンでオムライスを食べ始め、ちゃっかり自分の飲み物はオレンジジュースにしている。
私はグラスにすかさずミネラルウォーターを注ぎ、一歩出遅れた樹おじさんは奥さんから色の濃い麦茶を出されていた。
見ただけで苦そうな味だなぁ~。
「エビフライとハンバーグも付いてるのか。なんだか得した気分だ」
そう言い、樹おじさんがエビフライを食べている。
「料理にアイテムBOXは便利よね~」
本来なら3種類の料理を作る必要があるオムライスセットを見て、雫ちゃんのお母さんが納得したように頷いていた。
作り置きが出来るのは本当に便利で助かるし、母もアイテムBOXが欲しいと言っている。
旭は料理をしないから単純に収納機能しか活用していないけど、子供が出来たらそれじゃ拙いと思う。
樹おじさんが言う子供の当ては何だろう? まぁ、兄達もまだ若いから当分先の話になるわよね。
アシュカナ帝国との戦争が無事に回避出来たら、私が産んであげればいいし……。
食後、お茶を一気飲みしていた樹おじさんへケーキを出してあげた。
これで口の中を中和して下さいな。
もう一度、マジックバッグのお礼を言って旭家を後にする。
兄達は病院で勉強するから奏伯父さんに付き合ってもらおうと実家へ寄り、サヨさんのLv上げに付いてきてほしいとお願いすると了承してくれた。
奏伯父さんと異世界の家へ移転し従魔に騎乗して華蘭へ向かい、呼び出したサヨさんは黄金に乗ってもらい再び家の庭へ戻った。
前回はマジックキノコでLv上げをしたけど、哺乳類も大丈夫か聞いてみる。
サヨさんに美味しい肉が食べたいわと笑顔で返事をされ、問題なさそうだと思いアイテムBOXからハイオークを出すと、祖父の鍛えた薙刀で首を一閃していた。
こちらも素材はアダマンタイトのようで、切れ味が鋭い!
そして、どうせなら牛肉がいいわねと希望されてしまった。
いきなり大丈夫だろうかと心配しつつ、ミノタウロスを出す。
危なそうなら昏倒させればいいか……。
SS級冒険者の奏伯父さんもいるし、サヨさんが怪我をする事はないだろう。
そう考えていたら、こちらも簡単に倒してしまった。
槍より使い慣れた薙刀が良かったのか武器の性能が良いのか、ミノタウロスは見事に首を刎ねられる。
夕食はすき焼きね~とサヨさんは嬉しそうだ。
母親の姿を隣で見ていた奏伯父さんは、全く動じていない。
流石、武闘派親子!
お肉はこれ以上必要ないだろうと、Lv上げのため収納しておいた地下30階にいるリッチの上位種を出し昏倒させる。
骨で出来たアンデッドから魔石を取り出してもらい、現在のステータスを確認したらLv10からLv20に上がったらしい。
やはり深層の魔物はLvを上げるのに効率がいいな。
サヨさんをホームの実家へ送り届け、私達は注文した兄の武器を貰うため王都にあるバールの武器屋へ移動する。
サヨさんがいるから、祖父には夕食を実家で食べてほしいしね。
「こんにちは~。シュウゲンさんはいますか?」
「あぁ、ちょっと待ってな。親父~」
店内に入りバールさんへ声を掛けると彼が店の奥へ呼びにいき、少ししてシュウゲンさんが現れた。
「注文した武器を受け取りにきました」
「おぉ、槍は出来ておる。数百年振りに鍛えたわ!」
シュウゲンさんはヒルダさんを待っている間、武器を作製していなかったのかしら?
「ありがとうございます。お幾らですか?」
「孫から金を取る事はせんよ」
「あっ、じゃあこれから夕食を実家で一緒に食べませんか? 今日はサヨさんも一緒ですよ」
「小夜もおるのか、嬉しいのぅ。それは行かねばならん。バール、儂は出掛けてくるからな」
シュウゲンさんは早くサヨさんに会いたいのか、私達より先に店を出てしまった。
奏伯父さんが、そんな父親を見て苦笑している。
シュウゲンさんを連れホームへ戻ると、お風呂に入りたいと言うので奏伯父さんと一緒にスーパー銭湯へ連れていった。
サヨさんに清潔な状態で会いたいんだろう。
無精髭も剃りたいだろうと、アイテムBOXから男性用のT字剃刀を出し渡しておく。
1時間後に迎えにくる事を伝え実家へ戻った所、家ではサヨさんと母が夕食の準備をしていた。
「お母さん。お爺ちゃんも連れてきたから、1人分追加してね!」
「まぁ、あの人もくるの?」
私の言葉を聞いたサヨさんが、元夫に会うのはまだ思う所があるようで急にソワソワし出し、それに気付いた母が私へ視線を送ってくる。
「サヨさん。料理は母に任せて、こちらにきて下さい」
戸惑うサヨさんを連れ2階の寝室へ案内し、母の鏡台の前に座ってもらい化粧品を出した。
「お爺ちゃんを驚かせましょう!」
そう笑顔で伝えるとサヨさんがにっこりと笑う。
「じゃあ、変身しなくちゃね!」
沢山ある化粧品の使い方を教え、ナチュラルメ-クに仕上げた。
30分後。化粧をして60代に見えるサヨさんへ、母が若返ったわね~と褒めそやす。
確かに化粧の効果もあるんだろうけど、本当に肌の状態が違うような? もしかして、LvUPには寿命が延びる以外にも効果があるのかしら?
スーパー銭湯へ2人を迎えにいくと、シュウゲンさんの顔はすっきりとし男前になっていた。
実家へ戻り2週間振りに会った元夫婦が、お互いの姿を眩しそうに見ている様子が微笑ましく映る。
夕食のすき焼きは、シュウゲンさんの好物らしく年齢に似合わない量の肉を食べ出し、若返った父も沢山口にするから追加の肉を慌てて切る事になった。
食後にダンジョン産の桃を出して、家を留守に出来ないサヨさんを華蘭へ送り届ける。
シュウゲンさんは、このまま実家に泊まるみたいだ。
ホーム内で生活しないか提案すると、娘の家に世話になっても大丈夫かと心配している祖父へ、母が一緒に住んでと言い安心させていた。
義父と義兄と住む事になる父は肩身が狭いだろうか? 新婚じゃないから大丈夫だよね?
少し気になりながら、兄の槍を受け取り私は自分の家へ戻った。
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