2人はお風呂を堪能したみたいで、満足そうな表情をしている。
異世界にはない、香りの良いボディーソープやシャンプー等が使用出来て嬉しかったんだろう。
かなり長く入っていたからね。
完成したオムライスが冷めてしまいそうだったので、アイテムBOXに収納しましたよ!
2人が戻ってきた所で昼食を取る事にした。
お互いの事情説明後、お風呂待ちをしていた所為で、かなり遅い時間になってしまったけど……。
「いただきます!」
オムライスセットを前に、待ちきれない様子の雫ちゃんが真っ先に口を付けて声を出す。
「美味しい~! もうこの世界の何が苦痛かって、食事内容が酷過ぎる事だよ! 毎日代わり映えしないメニューばかりで本当に辛かった……。沙良お姉ちゃんの料理は最高だね!」
そう言うと満面の笑みを浮かべて、ハンバーグを切り分けている。
調味料が塩のみだと、私でも料理メニューの幅が少なくなるだろうなぁ。
「沙良ちゃん、相変わらず料理が上手ね。もううちに、いつでもお嫁にきていいわよ~」
いえもう貴方の息子さんは結婚済みなので嫁げませんとは言えず、私は曖昧に微笑んでおいた。
私が雫ちゃんと結婚する訳にはいかないし……。
そうなるとまた子供の問題が起きて、雫ちゃんに兄との子供を産んでもらう事になってしまう。
それなら素直に兄と雫ちゃん、旭と私が結婚した方が余程いい気がする。
子供が混乱しそうだよ。
そう上手くはいかないのが人生だ。
兄達の結婚報告は二度手間になるので、両親を召喚した後でする心算にしている。
両家が揃った状態の方がいいだろう。
出来れば旭の父親も一緒だと良かったんだけど……。
雫ちゃんと母親がこの世界にいるなら、もしかしたら父親の方も転生か転移してないかな?
「あの……。おじさんは日本で元気にしているんでしょうか?」
亡くなったか直接聞くのは憚られたため、遠回しな表現で尋ねてみた。
「うちの人は、ピンピンしてたから日本にいると思うわよ~。独りにさせちゃって申し訳ないわ。あっ! 沙良ちゃんの召喚能力で呼び出せたりするのかしら?」
「召喚する事は可能ですけど、現在私のLvでは2人までしか無理なんです。次は両親を召喚する予定なので……」
「まぁ、そうよね~。Lv10毎に1人しか呼び出せないんじゃ、家族を優先した方がいいわ。夫には悪いけど、日本で人生を全うしてもらう事にしましょう」
異世界で8年間を過ごした所為か、旭の母親に未練は感じられなかった。
雫ちゃんの方を見ると、少し寂しそうにしている。
日本で亡くなったのは18歳。
現在私と同じ19歳だとしても実際記憶が戻ったのが12歳の時なら、生きてきた年数は25年だ。
しかも12歳からのやり直し人生なので、まだ親が恋しいだろう。
両親を召喚した後で、旭の父親を召喚してあげたいなぁ。
それにはLvが40必要になる。
既にLvは45に上がっているけど、兄には内緒なので直ぐに召喚するのは無理なんだよね。
旭の母親や雫ちゃんのために、いつか召喚してあげようと思った。
Lv上げを頑張る理由が増えたから、摩天楼のダンジョン攻略も視野に入れておかないと。
気になっていた、今後について話をする。
「これからどうします? 私達は3人で迷宮都市のダンジョン攻略をしているんですけど、折角再会出来たので一緒にパーティーを組みませんか? 部屋は沢山あるから、ホーム内で生活する事も出来ますよ?」
「勿論、一緒にパーティーを組むわ! 日本と同じ生活が出来るなんて夢みたい」
「じゃあ、食事が済んだら引っ越しですね。一度、王都で宿泊している宿に荷物を取りに行きましょうか」
「まぁ、いいの? ありがとう! 尚人に会えて本当に良かったわ~」
「それ、俺じゃなくて沙良ちゃんに会えてでしょ?」
「あら? 同じパーティーなんだから一緒の事よ?」
旭は母親の言葉に納得いかない顔をしていたけど、口では勝てないと思ったのかそれ以上言葉を重ねたりしなかった。
方針が決まったのなら、善は急げとばかりに皆が無言で食事に集中する。
その後、再び王都へ移転し彼女達が宿泊している宿から荷物を回収した。
ちなみに2人が宿泊していた所は、1泊銀貨5枚(5万円)。
1ケ月を30日で換算すると、家賃が150万円とかなり高額だった。
2人は、それなりに稼いでいたみたい。
旭の母親はアイテムBOXの能力を持っているので、効率的に換金していたんだろう。
光魔法で怪我をしたら治療出来るし、ライトボールで遠距離から攻撃出来るなら、2人パーティーでも冒険者として優秀だった筈。
雫ちゃんは魔法学校に通っていないので、魔法は使用出来ないのかな?
一緒にパーティーを組むなら、後でステータスも聞いておいた方が良いか……。
兄のマンションに戻り、旭の部屋だった場所へ2人で住む事に決定する。
本当は住み慣れた自宅の方がいいとは思う。
でもホームに設定出来るのはLv10毎に1ケ所なため、マンションで我慢してもらう事にした。
それでも異世界の宿屋より、遥かに良い生活環境だろう。
ここなら、家賃・水道光熱費は無料だしTVも見る事が出来る。
ホーム内で買い物する事も、飲食店で外食する事も可能だ。
暫く冒険者活動は休む予定でいるので、ホーム内でリフレッシュしてほしい。
あっ、日本円!
2人は持っていないから、ある程度のお金を先に渡しておこう。
部屋に必要な物を設置していると、旭が自分の家だった部屋を眺めながら恨めし気に呟いた。
「聞きたいんだけど……。俺の遺産は、どうなったのかな?」
「貴方は独身だったから、私とお父さんで分けたわよ? マンションは自宅があるから必要ないし、売却したわね。車はお父さんが乗ってたわ。預金が意外に多くてビックリしたのよ? 尚人はお金持ちだったのね~」
そうあっけらかんと言われた旭は、ショックで声も出ないようだ。
「俺、マンション買って半年も住んでないのに! 何で売っちゃったの!?」
「そんな事言われても、誰も住まないのにそのままにしておく訳にはいかないじゃない」
「じゃあ、家にあった物は?」
「家具や電化製品は、全部処分しました。もしかして、尚人が収集してたお宝が気になるの? それ、雫と沙良ちゃんの前で言ってもいいのかしら?」
「いや、それは……内緒にして下さい」
おや?
旭は一体、何を集めていたのかしら?
私と雫ちゃんの前で言えない品なら……、って答え言っちゃってますよ!
案の定、旭は顔を真っ赤にし俯いてしまった。
遺品整理をする時に、家族に見られたくない物もあるわよね~。
まぁ、もう結婚した2人にはきっと不要な物だろう……多分。
女性と違いアノ日もないし、でもYes・No枕は必要かな?
大体必要な物を部屋に設置すると、結構な時間が過ぎていた。
夕食は旭の母親からお寿司を食べたいと希望されたので、兄達行きつけのお寿司屋さんへ外食にいく事に……。
これには2人が大喜びして、1人だけズルいと旭が責められている。
いやいや、その旭だって11年間ダンジョンマスターをしていたから、ホーム内で生活出来たのはここ数年の事ですよ?
しかも独りきりで、ダンジョンから出る事も不可能だったんだけど……。
言われた旭は、2人にダンジョンマスター生活を語っていた。
日本酒を飲み饒舌になっている所為か、いらない事まで話している。
話の途中で、兄が慌てて口を塞いだ。
話を聞いた雫ちゃんが、「尚人兄、独りで大変だったんだね! 可哀想……」と言って旭を慰めてあげている。
そうか……、不能になっちゃったんだね。
男性には、かなりショックな出来事だろうなぁ。
お寿司に刺身、天麩羅に茶碗蒸しと和食を楽しんだ後、マンションに戻ってくる。
今夜は3人一緒に同じ部屋で眠るそうだ。
家族水入らずの時間を、ゆっくり過ごして下さい。
お互い積もる話もあるだろう。
旭が雫ちゃんとお母さんに会えて本当に良かった。
出来れば、結婚も祝福してもらえるといいね。
そう思いながら、私も眠りに就いた。
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