「ところで、沙良ちゃん本当に別人になったんだね。前より美人さんになってビックリだよ!」
「それには俺も驚いた。今でも一瞬、妹だと思えない時がある。顔から受ける印象ってのは大事だな」
「公爵令嬢だっけ? なんか品のある顔立ちだよね。あれ? ダンジョンにきてるって事は冒険者になったの? 大貴族でしょ?」
「あ~まぁ、色々あったみたいでな。どうも元の体の持ち主が、継母に虐待されてたみたいで亡くなったんだ。沙良はその子の記憶もないし貴族の生活は無理だと思って、早々に家を抜け出したらしい」
「沙良ちゃんらしいね。きっとその子のために、継母に復讐してあげたんじゃない?」
「虐待を父親に告発して、連れ子と一緒に家を追い出したよ」
「やっぱり! 絶対、放っておかないと思った。その子も少しは報われたかも知れないね」
「そうだといいな。それよりお前、沙良が戻ってくる前にその人形片付けといた方がいいぞ」
俺はそう言って、部屋の隅に置いてあった2体の等身大人形を指さした。
1体は45歳当時の俺の姿、もう1体はセーラー服を着た高校生時代の沙良の姿をしている。
1人で寂しかったんだろうが、沙良が見たらちょっと引きそうだ。
そして、なんで俺だけ45歳の姿なのか物申したい。
「わぁ~やばい! 見られたかな?」
「いや、沙良もお前と会った衝撃が強くて部屋の隅まで見ている余裕はなかっただろう。今なら証拠隠滅出来る。まだ大丈夫だ」
俺のその言葉を聞き、旭は慌てて2体の等身大人形を収納した。
ちっ、こいつもアイテムBOX持ちか!
「良かった~、セーフ! 流石に、等身大人形を沙良ちゃんに見られたら恥ずかしい。でもよく出来てたでしょ? 何度も記憶を思い出して作り直した、俺の力作なんだよね」
「そうか、やっぱり沙良の事が好きだったんだな……」
「気付いてた? 初恋相手は沙良ちゃんだよ。実らなかったけどさぁ」
「あ~それは、うちの茜の所為か?」
「俺、滅茶苦茶マークされてたみたい。茜ちゃん、睨んでくるし。空手道場では完膚なきまでに叩きのめされるし。散々だったよ!」
「悪いな、茜はかなりのシスコンだ。姉に纏わりつく害虫だとでも思ってたんだろう」
「害虫は酷いよ! 幼馴染で賢也の親友なのに」
「だから余計に警戒されたんだろう。姉を取られると思ったのかも知れん。旭、茜の居ない異世界が最後のチャンスだ。頑張って告白してみろ」
「そうか! こっちには茜ちゃんはいないんだよね。俺、頑張ってみる!」
両手でファイトポーズを決める旭を見て、沙良に気付いてもらうのは難しいだろうなと思う。
あいつには直接はっきり言わないと、多分分からないだろう。
旭は性格的に積極的なアプローチが出来るタイプじゃないからな。
こりゃ相当時間が掛かりそうだ。
しかも、今は見た目の年齢差がある。
18歳の沙良と45歳の旭じゃ釣り合いが取れていない。
あぁ、忘れる所だった。
夢の中の出来事だったが、どうしても気になっていた内容を確認しよう。
「旭、お前Dカップで「FOXEY」の涼子ちゃんに心当たりはあるか?」
「えっ? 何で賢也が知ってるの? それ俺が死んだ? 日に、賢也に紹介しようと思ってた子だよ!?」
「本当か!? 何で紹介当日に亡くなるんだお前はっ! 紹介してから逝けよ!」
「ちょっと、その言い方は酷過ぎるんじゃないの? 確かに、俺の奢りで今までのお礼をしようとしてたけどさぁ。でもDカップ好きでしょ~」
「お前の好みも一緒だろうがっ!」
ちなみに日本に居た時の沙良はDカップだ。
旭が胸の下に手を当ててニヤニヤしながら、たゆんたゆんと表現しているのを見て笑う。
俺達は好みのサイズが一緒だった。
当然好きなAV女優も同じでよく被っていたな……。
そんな話をしていたら沙良が戻ってきた。
旭が慌てて手を下げる。
お互い目配せし、この話の続きは後でとなった。
ここら辺は長い付き合いで何も言わなくても分かる。
沙良がテーブルの上に、3人分のコーヒーとモンブランをセットしていた。
あぁ、旭の好きなケーキを覚えていてくれたんだな。
ダンジョンに閉じ込められていた旭のために用意したんだろう。
その旭は、モンブランを見て泣きそうな顔をしている。
これは自分の好物を沙良が覚えていてくれたのが嬉しいのか、単に日本のケーキを食べる事が出来るのが嬉しいのかどちらなんだろうな。
旭の表情を見て、沙良がもう1つ旭の前にモンブランを追加して置いた。
しっかり味わって食べてくれ。
ダンジョン内じゃ、碌な食べ物もなかっただろう。
それから俺達は、お互い異世界にきてからの話をした。
旭はダンジョンマスターになってから、1人で本当に苦労したようだ。
話を聞いて沙良のホームで日本と変わりない生活をしてきた俺は、申し訳ないと思ったくらいだ。
ダンジョンマスターとして転移させられたのに、仕事が何もないとは……。
まぁ召喚してくれた魔物で俺達は荒稼ぎさせてもらったがな。
オリハルコンゴーレムを召喚したのは、旭にしては良い一手だった。
メタルスライムがいたのはお前の所為か!
あの魔物だけ、妙に浮いていると思ったんだよ。
それでダンジョンマスターがいるんじゃないかと気付いた訳だが、旭だったとは……。
最後にハイオーガ。
正直言って、アレは酷い。
ダンジョンの設計を間違えてるとしか思えなかった。
天井に支えていたからなぁ。
あのままだと、頚椎ヘルニアコースだ。
身動き出来ないからいい的だったが。
俺達の話題は尽きる事なく色々な話をしたのだった。
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