【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第722話 旭 樹 再召喚 14 娘に懐くガルム達&白狼族、族長の娘ゼリア様

公開日時: 2024年3月11日(月) 12:05
更新日時: 2024年7月3日(水) 09:08
文字数:2,351

 ガルムに騎乗したかったのだろう。

 ガーグ老に止めた方がいいと言われた沙良ちゃんが、しょんぼりしている。

 そんな娘へ騎獣担当の男性が、庭にいる従魔達を見て尋ねた。


「その、ここにいる従魔達は誰がテイムされたのですか?」


「私と、彼女です」


 自分と妻であると話し従魔達を紹介する。


「私の従魔は5匹ですね。シルバー、フォレスト、泰雅たいが黄金こがね山吹やまぶき


 娘が従魔達の名前を呼ぶと、5匹が整列し尻尾を振っていた。


「あら、じゃあ私の従魔も紹介するわ。アレク・源五郎げんごろう・マリー」


 妻も同じように名前を呼び従魔達を紹介する。

 3匹のフォレストウサギが飛び跳ねながらやってきた。

 テイムには魔力が必要だと知っている騎獣担当者は、2人でテイムしたと知り顔を引きらせている。

 特に娘の従魔は種族が違うから驚いたかもな。


「どれも皆、よく調教されているようですね」


 主人の指示に従い、大人しくしている従魔達を見て感心していた。

 すると娘がフリスビーを出し遠くへ投げる。

 フリスビーをジャンプして口にくわえた従魔達が戻ると、次に1m程の壁を出す。

 壁を従魔達が飛び越える姿を見せて得意げだ。


「いや……あの、そういった意味ではなく……」


 娘は調教の意味をはき違えているらしい。

 それは芸だな……。

 王族に対し訂正するのを躊躇ためらう男性が、困った様子でガーグ老へ視線を送る。


「おぉ! サラ……ちゃんの従魔達は皆賢いようだわ!」


 ガーグ老が空気を読みめてくれた。

 機嫌を良くした娘がにっこり笑う。

 

「ガルム達に名前は付いているんですか?」


「いえ、この子達は繁殖はんしょくした魔物ですから名付けはしておりません」


「名前がないなんて可哀想かわいそう……。ガルちゃんも名前が欲しいよね~」


 娘がそう言った瞬間、ガルム達が一斉に尻尾を振った。

 んんんっ?

 ガルムが娘の言葉に反応しているように見えるんだが……。


「あのっ、繁殖した魔物ならテイムはされていないんでしょうか?」


 少しあせったように、騎獣担当者へ質問している。


「騎獣用に調教はしてありますが、直接テイムはしておりません。MPが沢山必要になりますから」


「それなら、どうやって言う事を聞かせているんですか?」


「調教用の笛の音を組み合わせ、指示を出すのです」


 ガルム達へ指示を出す方法を聞き安心したのか、落ち着いた表情になった。

 しかし、その後にガルム達が首を上下に動かしうなずくような仕草しぐさをしている。

 更に言うと、その中の一匹が明らかに大きくなっていた。

 まさか、この短時間で10匹のガルムをテイムしたんじゃないだろうな?

 娘になついているガルム達を見て疑問に思う。

 ひびきが娘のテイム方法は特殊だと言っていたが、見ていた限り特に何かをした様子はない。

 強いて言えば、名前を呼んだ事くらいだろう。

 そんな方法でテイム出来る訳がないよなぁ~。


 娘が食事の準備を始めると、ガーグ老が騎獣担当者と工房内へ入っていく。

 俺の事情を上手く説明してくれよ?

 娘が作った料理を三男役が配膳しているが、四男・五男・嫁役の2人は微動だにしない。

 影衆達に演技を期待するのは無駄らしく、娘が変に思わないか心配だ。

 将棋を指してした手を止め、俺達も席に着いた。


「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『酢豚』と『肉まん』です。『肉まん』は蒸し立てで熱いから注意して下さいね。それでは頂きましょう」


「頂きます!」

 

 全員が一斉に珍しい『肉まん』を手にした。

 

「おおっ! これが『肉まん』かぁ。姫様が冬になると食べたがっておったわい」


 そう言ってガーグ老がかぶり付くと、


「この白いモチモチとした部分が美味しいのぅ~。さぁ、お前も遠慮せず食べるがよい。サラ……ちゃんの料理は絶品だぞ?」

  

 騎獣担当の男性へ勧めていた。


「お言葉に甘えて頂きます」


 王族が作った料理に恐縮きょうしゅくしながら、彼は一口食べる。


「美味しい!」


 その味に驚いたのか直ぐに完食してしまった。


「姫様が食べたがっていた理由が分かりました。……良かったですね」


 いや、目をうるませながら俺の方を見られても返事に困る。

 出来るだけ無表情でいよう。

 彼は既に2個目を手にしていた。

 この機会に沢山食べてくれ。

 俺も熱々の『肉まん』を口に頬張ほおば堪能たんのうする。

 これは旨い! 幾らでも入りそうだ。

 そう思っていると、何かが落ちる音が聞こえる。

 音がした方へ視線を向けると、木から落ちた『万象ばんしょう』達がいて唖然あぜんとなった。


結花ゆか? バスケットに何を入れたんだ?」


「今日はホットドックと果物よ~」


 あぁ、朝食に出てきた激辛のホットドックか……。

 そりゃ異世界人にはキツイだろう。

 あれを食べたなら、悶絶もんぜつして木から落ちるのも無理はない。


「そっ、そうか朝食と同じなんだな……」


「『ホットドック』も、姫様から聞いた事のある食べ物ですね」


 『肉まん』を食べた彼が、『ホットドック』にも興味を示している。


「あら、まだ残っているから食べますか?」


「沙良ちゃんの料理が冷めちゃうから、彼が食べ終えてまだお腹に入るようなら出してあげなさい」


 俺はすかさず、妻の迷惑な行為こういさえぎった。

 そして小さな声で忠告する。


「妻の料理は刺激が強いから食べない方がいい」


!? ……あぁ、そうでいらしたのですか」


 妻がいると知り、妙に納得した表情をしうなずいていた。

 ヒルダ時代、男性に関心を示さなかった俺は、女性が好きだと思われていたんだろうか?

 食後に将棋を指す俺達を残し、沙良ちゃん達は一度ホームへ戻るようだ。

 俺と響は、この時間を利用して薬師ギルドへ行こう。

 薬師ギルドへは、泰雅たいがに2人乗りし移動する。

 マリーは乗り心地がちょっとな……。


 薬師ギルドに到着すると、響を見た受付嬢が応接室へ案内してくれた。

 少し待つと、見覚えのある人物が部屋に入ってくる。


「ゼリア様! どうして、ここにいらっしゃるの?」


 世界樹の精霊王と親交がある白狼族の族長の娘に、思わず声を上げた。

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