飛翔魔法の練習を3時間程して、父と一緒にシュウゲンさんと奏伯父さんをガーグ老の工房へ迎えに行く。
兄達は、これからまた病院で勉強をするらしく、渋る旭の右手を兄が逃げられないよう掴み、覚えたばかりの飛翔魔法で飛び去っていった。
もう車もバイクも必要ないんじゃないかしら? ガソリン代も掛からないし経済的よね~。
それに何かあった時、逃げられる手段が増えるのは安心材料になる。
雫ちゃんは樹おじさんか旭が抱き抱えればいいし、シュウゲンさんは父が、奏伯父さんは兄が運べば問題ないだろう。
母は当分異世界へ行かないので、出産後に体調が戻ったらガルちゃんに会わせてあげよう。
飛翔魔法の習得は、その時までお預けだ。
ガーグ老の工房へ到着すると、10匹のガルムが私に気付き近付いてくる。
シルバーとフォレストは、仲間になったガルム達と何やら会話を交わしているようだ。
いつになったら、従魔達の声が聞けるようになるのかしら?
シルバーとハニーは進化したけど、そろそろフォレストが進化してもいい頃だよね。
そういえば毛並みが白いままで、ステータスにも進化中と表示されていなかったような?
シルバーの時は、徐々にゴールド色が数本混ざっていったんだけど……。
おかしいなぁ~。
リーダーのガルちゃん1号が、私の傍まで寄り体を擦り付けてきた。
犬系魔物だと思ったけど、猫のような仕草をする。
1週間会えずにいたから寂しかったのかしら?
それに1号だけ、少し体が大きく変化しちゃったみたい。
ガーグ老達は気付いただろうか?
こんなに懐く様子を見られたら、変に思われないか心配だ。
そう思い将棋を指しているガーグ老達を窺うと、10匹のガルム達が私に戯れる様子を父と微笑ましく見られていた。
ポチとタマも私に懐いているから変だとは感じないらしい。
きっとテイムしたガルちゃん達は、ガーグ老の笛の指示をちゃんと守ってくれたのね~。
従魔達が賢くて助かった。
対局が終了するまで、普段会えないガルちゃん達と遊んであげよう!
シルバー達が大好きなフリスビー投げを教え、10回連続で投げるとジャンプし口に咥え戻ってくる。
まぁ、初めてなのに凄く上手だわ。
この子達は飛翔魔法が使える分、フリスビーを何処に投げてもキャッチ出来そう。
私がガルちゃん達と遊んでいる間、シルバー・泰雅・黄金の3匹は顔を突き合わせ相談しているように見えた。
何を話しているんだろう?
シュウゲンさんが立ち上がったので、ガーグ老へお礼のショートブレッドを渡し工房を後にした。
ホームへ戻り、3人を実家に送って部屋へ帰る。
通信の魔道具を取り出して、セイさんからの連絡を確認するとピザが食べたいようだ。
そして、お風呂に入りたいと希望が書かれている。
あぁそうか異世界の宿には、お風呂が付いてないんだっけ……。
すっかり忘れてたよ。
セイさんの存在を知っているのは父と奏伯父さんだけなので、今日はどちらに、お願いしよう。
2週続けて父を連れ出したから、奏伯父さんに付いて来てもらおうかな?
再び実家に寄り、今日は奏伯父さんと外食してくると母に伝え異世界へ。
そこからセイさんがいる町へマッピングで移動し、宿泊先の部屋の中に移転する。
お風呂に入りたいというセイさんとホームに戻り、スーパー銭湯へ向かう。
1時間後に入口で待ち合わせをし、私も温泉を楽しんだ。
さっぱりしたらセイさんの宿に戻り、アイテムBOXから3種類のピザを取り出す。
「これが食べたかったんです! やっぱり日本の食べ物は美味しい!」
セイさんが嬉しそうにピザを食べる姿を見ながら、私達も一緒に頂いた。
「後一週間で迷宮都市に到着だな。それまで耐えろ」
奏伯父さんは、セイさんへ少々酷な事を言い笑っている。
「あ~もう、旅はいいんですけど食事が……」
事前にレトルトを大量購入しても、やはり大変だったのか情けない顔をしてセイさんが俯く。
まぁ、それでも随分ましだったとは思うけど。
可哀想だから、マンションの部屋の冷蔵庫に入っていた、冷えたビールを出してあげよう。
余程ビール好きだったのか、ビールサーバーまであったんだよね~。
缶ビールと瓶ビールに対応しているから、セイさんでも使えるんじゃないかな?
氷魔法で冷やせば、いつでも冷えたビールが飲めるだろう。
ビールサーバーを出すと、2人の目の色が変わった。
同じビールでも、サーバーを使用すると泡が違うらしい。
飲めない私には味の違いがさっぱり分からないんだけど、口当たりが良いのかしら?
2人がサーバーからグラスにビールを注ぎ、美味しそうに飲んでいる。
私はアイスティーで乾杯だ。
Lサイズのピザを3人で完食した後、セイさんにも見せてあげようと竜の卵をアイテムBOXから出す。
「摩天楼のダンジョンにある洞窟で竜の卵を発見したんです。石化した状態だったんですけど、兄達が毎日少しずつ解除してくれるから孵化するのを楽しみにしてるんですよ~」
翡翠色と黄金色が混ざった竜の卵は、半分くらい石化が解除されている。
セイさんも、1mある大きな卵を見るのは初めてだろう。
コカトリスはダチョウの卵サイズだからね。
「これは……風竜と光竜の番に出来た卵ですね。可哀想に、父親の属性で生まれてしまったのでしょう」
うんん? やけに詳しいなぁ。
「セイさんは竜の卵を見た事があるんですか?」
「いえ、ないです。そもそも竜は人前に姿を現しませんし、交流のある種族じゃないと見られないと思います」
そう言って、愛おしそうに卵へ触れる。
なんだかシュウゲンさんと奏伯父さんも、同じような反応だったな。
「この子は雌のようですね。大丈夫、お母さんがちゃんと育ててくれるよ」
「母親が見付かるんですか?」
「あっ、いや……何だろう? 沙良さんを言い間違えたみたいです」
えっ、まだ結婚もしてないのに、お母さん呼ばわりされるって……。
「人間の私が育てられると思いますか?」
「はい! 沙良さんなら絶対、大丈夫です!!」
何故かセイさんは胸を張り、太鼓判を押してくれたのだった。
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