【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第487話 迷宮都市 両親の召喚 1 事前準備&8年振りの両親との再会

公開日時: 2023年7月17日(月) 12:05
更新日時: 2023年9月2日(土) 23:04
文字数:2,191

 翌朝。

 目が覚める前、そばにある温かさに気付き、私はいつものように体をでた。

 

 あれ?

 もふもふの感触がない?


 ……お兄ちゃんは、いつも大きい猫ちゃんの姿をしているのに。

 手触りの良い毛を探しながらお腹の方を探っていくと、突然その手をつかまれた。


「沙良、それ以上は止めてくれ。なんでお前は俺の体を撫でまわしているんだ?」


 兄の声を聞き、意識が急浮上して目が覚める。


 私……、やっぱりおかしい気がする。

 兄の事を人間じゃないと思うなんて、どうかしてるわ!


 少し前シルバーとフォレストの間に埋もれて一緒に寝たから、記憶を混同しているのかしら?


「おはよう、お兄ちゃん。シルバーと勘違いしちゃったみたい」


「勘違いにも程があるだろう。くすぐったくて目が覚めたぞ?」


「ごめんなさい。もう起きたから! 今日は両親の召喚をする心算つもりなの。事情を説明した後で一緒に食事をしたら、お兄ちゃん達の結婚報告もしようね~」


「あぁ、やっと両親に会えるのか。突然行方不明になったから、さぞかし心配をかけただろうな。結婚報告は俺からする。お前は何も言わなくていい」


 お~、男前の発言だ。

 結婚式を済ませて、ようやく両親に報告する覚悟が決まったのか……。


 それでも、もし躊躇ためらうようだったら私から言ってあげよう。


 今朝は旭がいないので、兄と2人だけの朝食だ。

 旭も久し振りに母親の料理を食べる事が出来て、うれ……しくはないかも知れない。 


 トーストと目玉焼きくらいなら、そこまで味に違いは出ないだろう。

 日本の食材を使用出来る事で、母親が張り切って作らなければ……。


 私達は朝食の定番である焼き魚に卵焼きに味噌汁、作り置きした幾つかのおかず数品を一緒に食べた。

 

 兄達の部屋を出て自室に戻り、サヨさんを迎えにいかないと。

 お母さんと会えるのを、すごく楽しみにしていたからね。


 兄に、これからサヨさんの所に行くと言って出掛けた。

 異世界の自宅にある庭へ一度移転し、華蘭からんまで歩いて移動する。


 お店に到着して直ぐサヨさんを呼んでもらい、今日両親を召喚する事を話すと、とても喜び老紳士に私の家へ泊る事を伝えていた。


 すみません、奥様は外泊なさるそうです。

 今日1日、食事は我慢して下さいね。


 サヨさんを連れてホームの自宅に移動する。

 新しく拠点にした兄のマンションにくるのは初めてだったから、サヨさんが広くなった部屋に驚いていた。

 

 両親を召喚した後、夕食を一緒に食べる予定なので何の料理を作るか2人で決めていく。

 当然、迷宮ウナギは食べてもらう心算つもりだ。

 

 蒲焼と肝焼きの両方があった方がいいだろう。

 サヨさんは、お母さんの好物だった物を作るらしい。


 私はダンジョンで狩った食材を使用して、豪華なメニューにしよう。

 蟹・帆立ほたてあわびが使い放題だからね~。


 それから2人で料理をせっせと作っては、アイテムBOXに収納する事を繰り返す。

 このマンションはキッチンも広いから、2人同時に料理を作っていても動線が被らないので助かる。


 昼食は兄と一緒に外食する事にした。

 マンションから近いお店に愛車のスポーツカーで行く訳にはいかず、私のアパートにあったSUVに乗って向かう事にした。


 マッピングでも行けるけど、兄はホーム内では車を運転して移動する方が好きみたい。

 連れていかれたお店は、以前私がランチを食べに行った所で少し驚いてしまった。


 気付かれてないよね?


 前はメインを魚料理にしたので、今日はフィレステーキにしよう。

 サヨさんと兄は、魚と肉の両方が付いているコースを選んだようだ。


 電子メニューから注文し、テーブルに料理が並ぶと美味しいそうな匂いにお腹が空いてきた。

 3人で完食すると、再びマンションに戻って残りの料理を作る。


 召喚する場所は私達の実家にした。

 突然、全然知らない場所に召喚されるより衝撃も少なくて済むだろう。


 準備を済ませ旭達を呼びにいくと、雫ちゃんが夕食は私達と一緒に食べる事を知り大喜びしていた。


 朝食と昼食は一体何を食べたのかな?

 旭は今夜から兄の部屋に戻るそうだ。

 まぁ、新婚さんだからね~。

 母親の料理が食べたくないからじゃないと思うよ?


 全員そろって実家に行き、皆が召喚の時を今か今かと期待して待っている。

 時計の針が17時を指した瞬間、私は全員の視線を浴びながら両親の名前を呼んだ。


「召喚! 椎名しいな ひびき椎名しいな 美佐子みさこ!」


 すると目の前が光り出す。

 光の粒子が消えた後、部屋には若返った両親の姿があった。 


 8年振りに両親と会い、懐かしさで胸が一杯になって知らない内に涙をこぼす。

 きっと別人になっている私の事には気付いてもらえない。


 今ここで両親が分かるのは、兄と旭の2人だけだ。

 サヨさんや雫ちゃん、旭の母親と私は姿が変わっているから……。


 まず母が、若返っている息子の姿に気付いて口を開く。


賢也けんや……なの?」


「あぁ、俺だよ母さん」


「どうして、そんなに若い姿でいるのかしら? それに今まで連絡もしないで、何処どこにいたのよ!」 


 突然行方不明になり、本当に心配していたんだろう。

 母は兄が若返った姿より、連絡がなかった事に怒っていた。

 

 そして父の方は……。

 何故なぜか兄に目もくれず、私の顔をじっと見つめながら歩いてくる。


「生きていたのか!?」


 そう言って、いきなり抱き締められたから驚いてしまう。


 えっ!?

 別人になっている私の事が分かるの?


「お父さん! 気付いてくれてありがとう! 会いたかったよ~」


 私は何も言う前から娘と気付いてくれた事が嬉しくて、父を思いきり抱き締め返した。

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