日曜日。
私達が子供達の炊き出しをしている間、奏伯父さんが黄金に騎乗し家へ魔術書を取りにいった。
その後サヨさんに教会の儀式を受けてもらい、魔法習得をする予定でいる。
子供達を見送りガーグ老の工房へ向かう。
稽古中ガーグ老に槍術がLv5になった報告をすると、来週から地下5階の魔物を倒しても良いと許可が出た。
地下5階はハイオークが出現するので、肉の確保を兼ねLvを上げよう!
先週、王都で妖精さんが犯人を捕まえてくれたからと雫ちゃんのお母さんは朝から張り切り、お供え物を沢山作ってきたらしい。
バスケットが2個に増えていた……。
そして作り過ぎたからと、食事前にガーグ老達へ渡している。
私は、その様子を横目で見ながら昼食の準備を始めた。
サヨさんが倒したマジックキノコを消費するため、『和風きのこパスタ』と『唐揚げ』を作る。
それとアイテムBOXに収納してある、『ポテトサラダ』を出せば足りるだろう。
作り始めて直ぐ、ドサドサと何かが落下する音が聞こえてきた。
木の下に3人の妖精さんが見える……。
ガーグ老達は大丈夫だろうかと心配し視線を移すと、全員が紅茶をがぶ飲みしている所だった。
あぁもう、何かすみません。
雫ちゃんのお母さんは、『フレンチトースト』に何を入れたんだろう?
料理を作り終え、木の下へお供えにいく。
すると1枚の羊皮紙が置かれていた。
『ユカ様。もう本当に果物だけで充分です!』
……。
妖精さんの心の叫びが聞こえる文面だ。
「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『和風きのこパスタ』と『唐揚げ』に『ポテトサラダ』です。それでは頂きましょう」
「頂きます!」
ガーグ老達はフォークでクルクルと巻き、パスタを上手に食べていた。
店で『ミートパスタ』を食べた事があるらしい。
大皿に盛った『唐揚げ』も、先を競うように自分の皿へ載せている。
相変わらずご老人達は、よく食べるなぁ~。
食事を済ませ、妖精さんからお礼の手紙を受け取りガーグ老の工房を後にした。
家に戻ると奏伯父さんとサヨさんが待っている。
「サヨさん。魔法の習得は出来ましたか?」
「ええ、3種類とも覚えられたわよ」
やはり転生者は適性とか関係なく習得可能のようだ。
MP値が高いから、Lv0でも威力は充分ある。
魔法はイメージですと伝え、試しにウォーターボールをバスケットボールの大きさで出してみて下さいと言うと、サヨさんは言葉通りの魔法を出した。
次はボールではなく水鉄砲のようにイメージをお願いすると、水が勢い良く発射される。
初めて魔法を使用したサヨさんは形状を変える水を珍しそうに見て、私が何かを言う前にシャワー状へ切り替えた。
「まぁ、便利ね~」
「ファイアーボールは、料理にも使用出来ますよ」
「それは助かるわ!」
魔法を習得出来たサヨさんは、満足気に微笑む。
これから、ファイアーボールの魔法が活躍しそうね。
「えっと、私達は今から王都へいくんですが、サヨさんも一緒にどうですか?」
槍を購入したいと言っていたから、ドワーフのいる店に連れていきたい。
注文した武器も、そろそろ出来上がっている頃だろう。
それに、捕まった犯人達がどうなったかも気になっている。
「まぁ、王都へいくの? じゃあ、お願いしようかしら」
「じゃあ、武器屋を紹介しますね」
そのまま家の庭から王都へ移動すると、門の入口には今日も衛兵達が5人いて警戒態勢を取っていた。
前回同様、奏伯父さんのお陰で私達は優先的に中へ入る。
貴族特権ってやつかしら?
父の案内で『バールの店』へ到着すると、従魔達を外で待機させ店内へと入った。
「こんにちは」
店内にいたドワーフの店主へ挨拶をする。
「おお、嬢ちゃん。注文の槍は出来ているぞ。待ってな、今持ってきてやる」
そう言い、バールさんは店の奥へ商品を取りにいく。
「お兄ちゃん。ここの武器屋はドワーフの店なの。今の人は、全然見えないけどドワーフなんだよ~」
「想像と違う種族だな……。2mもある巨体を持つドワーフか……」
「髭もないじゃん!」
兄と旭が驚いている。
王都でダンジョンを攻略していた雫ちゃんとお母さんと奏伯父さんは、ドワーフを知っていたのか普通にしていた。
数分後、槍を片手にバールさんが戻ってくる。
「使用した鉱物はアダマンタイトだ。金貨10枚(一千万円)でいい」
アダマンタイト!?
それを聞いた、兄と旭の目が輝いている。
あぁ、男のロマン武器だよね~。
「ありがとうございます」
私は店主に金貨10枚支払い、槍を受け取った。
穂先を見ると、なんかキラキラしてるんだけど……。
これがアダマンタイトかぁ。
サヨさんは店内を見て回り、武器を探しているようだ。
長槍を1本ずつ手に取り、感触を確かめては戻している。
中々、しっくりくる物がないのか溜息を吐きながら零す。
「やっぱり薙刀は、ないわよね……」
その言葉に、店主のバールさんが反応する。
「薙刀だって? その武器を知っているのか? ちょっと親父を呼んでくる」
バールさんは再び店の奥へ父親を呼びにいってしまった。
ガーグ老から渡された姫様の形見の剣を鍛えたシュウゲンさんは、やはり日本人なんだろうか?
薙刀を知っていそうだ。
バールさんと共に、こちらも2mを超す体躯の老人が現れた。
そして私を見るなり大声で叫ぶ。
「ヒルダちゃん!」
それは姫様の名前では?
何故、私をそう呼ぶのか分からず首を傾げた。
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