【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第737話 旭 樹 再召喚 29 魅惑魔法の効果 1&摩天楼のダンジョンで犯人の捜索

公開日時: 2024年3月26日(火) 12:05
更新日時: 2024年7月18日(木) 13:01
文字数:2,308

 火曜日。

 魅惑みわく魔法のLvを上げるため、ダンジョンへ行く前にひびきへ掛けてみた。

 すると彼は俺の顔を見るなり近付いてきて、


いつき。お前、何か香水を付けているのか?」


 そう言いながら首元の匂いをいでいる。

 おっ、ちゃんと効果が出ているみたいだ。

 Lv0の魔法なら、この程度なのかな? そもそも魅惑魔法の効果が、よく分からない。

 魔物は敵をき付ける目的で使用していると思うが……。

 そう考えると、相手をれさせる要素もありそうだ。

 言いなりの状態にして口を割らせるには、どれだけLvを上げればいいんだろう?

 効果を確認するためには、響が内緒にしている話を聞き出せば分かるか……。

 でも、あいつに隠し事はあるかな?

 

「香水は付けてない」


 更に近付いてくる響を押しのけると、


「変だな……。お前から甘い匂いがする」


 彼は不思議そうに首をかしげていた。

 一応、魅惑魔法は効いたようだから引き続き実験してみよう。

 午前中は迷宮モンキーばかりを倒す。

 これだけ沢山たくさん、同じ魔物を相手にするのは初めてだ。 

 いつか猿に呪われそうな気がする。


 お昼を食べにホームへ戻った。

 美佐子みさこさんが作る料理は、いつも美味しいなぁ。

 朝食の微妙な味を思い出し、げんなりした。

 残ったおでんの味を変えたと言い、出てきたのは真っ赤に染まった物だった。

 食べるとトマトの味がして、トマトジュースを入れたのが分かる。

 トマト味のおでんは、正直もう一度食べたいと思わない。

 妻は何を考え味を変えたんだろう?


 沙良ちゃん達は、午後から摩天楼まてんろうの冒険者ギルドで情報収集をするらしい。

 昨日発見した呪具の件で、潜入している帝国人が捕まったか確認する必要があるからな。

 俺は妻としずくの3人で、迷宮都市のダンジョンに戻る。

 3時間後にホームで休憩中、沙良ちゃんから帝国人が18人捕まった報告を受けた。

 しかし、まだダンジョン内に36人の犯人がいる可能性があると言われたら、何もしない訳にはいかない。


「それはそれは……。結花ゆか、雫と2人でも大丈夫だよな?」


「ええ、問題ないわ」


「という訳で、俺も一緒に摩天楼のダンジョンへ行くからよろしく!」


 一度、響がガーグ老達と攻略していたダンジョンに入ってみたいと思っていたから、一石二鳥いっせきにちょうだ。

 最終攻略階層に犯人達がいると予想したらしく、着いたのは50階の安全地帯。

 この階層の魔物ならLv上げも出来るだろう。

 そう思っていたが、娘から呪具対策に全ての魔物をアイテムBOXへ収納済みだと聞かされ、少しがっかりする。

 犯人を見付けるため、移動速度の速いシルバーに騎乗し捜索開始。

 しばらくすると、シルバーの動きが明確なものに変化した。

 どうやら犯人を見付けたらしい。

 俺は皆に分かるようハンドサインを送り後を付けた。


 前方には12人の冒険者が森の中へ入っていく姿が見える。

 魔物がいない階層で、安全地帯へ戻らないのは犯人に違いない。

 気付かれないよう距離を取り、俺達も森に入った。

 すると彼らは大きな木の前で立ち止まり、1人ずつ中に入り姿を消す。

 どうやら何らかの魔法を掛け、木の中を拠点にしているみたいだ。


 中に入る方法を模索していると、シルバーが木を前足で叩く。

 その途端、セイさんが目の前の木を燃やし出した。

 あぁ俺達が中へ入るより、犯人達に出てもらった方が早いと判断したのか。

 それにしても、一切躊躇ちゅうちょしないその行動に驚いた。

 このまま死なせてもよいと思っているのか?

 これには犯人達もたまらず、焼死体になる前に木から出てきた。

 そこへ仁王におう立ちした義祖父が立ちはだかる。

 正体がバレたと気付いた犯人達が一斉に剣を抜き、襲い掛かってきた。


 12人対5人。

 1人が2・3人倒せばいいかと考えていると、セイさんが大槍で5人をぎ倒す。

 その攻撃の速さに呆気あっけに取られ、ワンテンポ行動が遅れた。

 その間に、義祖父と義父が次々と敵を戦闘不能にしていく。

 5分後、1人も相手に出来ず戦いが終了。

 俺の活躍の場はなかった……。


 メンバーが強すぎる! せめてもと、地面に倒れた犯人を拘束するため縄を掛けた。

 つっ、次は遅れないよう頑張ろう。

 邪魔な犯人達は、娘がアイテムBOXに収納したのか消えた。

 残り24人。

 沙良ちゃんがマッピングで犯人を見付けたらしく、再びシルバーが走り出す。

 その時、上空からポチが降下し俺の右肩に止まった。

 ガルムに騎乗したガーグ老達が追いついたと分かり、響と笑顔を交わす。

 犯人達は50階から51階に逃げようとしているようだ。


 階段を上がり、安全地帯へ向かう彼らの後を追う。

 娘が事前に安全地帯へ逃げ込まれないよう、周囲を高い塀で囲んでいた。

 塀にはばまれた犯人達が右往左往している姿が見える。

 シルバーが敵の方へ駆け出すと、目の前で犯人達がバタバタ倒れ簀巻すまきにされていく。

 相変わらず見事な手際てぎわのよさに感心する。

 自殺防止のため猿轡さつぐつわもされると、姿変えの魔道具を解除されたのか帝国人特有の容姿に変化した。


 隠形おんぎょうした影衆達が、犯人達を捕縛する状態を見て義祖父達が驚いた表情をしている。

 俺と響は何が起きているか分かっているため普段通りだ。

 少しして、1枚の羊皮紙が落ちてくる。

 読むと残りの12人は既に捕縛し、50階の安全地帯に置いてきたと書かれてあった。

 なら、もう犯人は全員捕まったんだな。

 沙良ちゃんも内容を確認したようで、簀巻きにされた帝国人をアイテムBOXに収納したのか姿が消える。

 響が妖精の仕業しわざだとフォローをしていた。

 毎週、ガーグ老の工房にある庭の木へ娘達がお供えをしているから、助けてくれたんだろうと話している。


 実際の妖精は可愛らしい見た目に反し、甘くみると痛い目にう凶悪な種族だけどな……。

 愛玩あいがん動物のように、捕獲しようとすれば命を落とすだろう。

 俺達は再び50階の安全地帯へと戻った。

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