【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第400話 ガーグ老 15 治癒術師の講義&姫様の想い人

公開日時: 2023年5月11日(木) 20:05
更新日時: 2023年8月27日(日) 23:42
文字数:2,005

 その後、ハーフエルフの御方が怪我人を運ぶ際に注意する事を講義なさったそうだ。


 儂らも初めて聞く担架たんかで運ぶ事は、なるほど理にかなった運搬の仕方だ。

 なるべく怪我人を動かさないようにする事は重要である。


 ダンジョンで攻略している冒険者に怪我は付き物だからな。

 ポーション類で治る怪我なら問題なかろうが、治癒魔法が必要になる怪我は重傷と言ってもよい。


 その他、命をつなぐための応急処置や人体の仕組みにまで言及げんきゅうされたらしい。

 可能であればその講義を儂も受けてみたかったわ。


 息子達も知らない情報があり勉強になったと言っておった。


 実演で担架をその場で作る際、布が無い場合は上着を使用するとして男性冒険者が服を脱ぎ上半身裸になった場面では、御子の目はふさがれ見えないようにされていたみたいだ。


 ふむ、あの御二方おふたかたは大分過保護なようだな。

 既に300歳を過ぎているだろうに。


 姫様は、そういう所に無頓着むとんちゃくでいらしたわ。


 王宮を警備している騎士達が鍛錬後、上半身裸で汗をぬぐっている姿を見ても何とも思っていないようであった。

 若い女子おなごのように、頬を染める場面なぞ見た事がない。


 逆にきたえ抜かれた体を触り、うらやましがっておられたわ。

 騎士達の体をペタペタ触っている姿を見た女官達に、引きがされておられる始末。


 姫様の奇行に慣れた女官達も、これには苦言くげんていしていた。


 「美しい姫様に体を触られた騎士達が誤解するかも知れないので、男性に無暗に触れてはなりません」と女官長にたしなめられてシュンとしていなさった。


 自分の容姿が相手にどう影響を与えるのか、全く気にしない御方だったな。

 それは時として自分を守る武器にもなるという事を、理解して頂くのは至難の業であった。


 女官達の苦労がしのばれる。


 そう言えば、姫様の専属騎士団は全員が女性で構成されていた。

 これは男性を近付けたくない王による采配さいはいもあったろうが、何より姫様が希望されたと聞く。


 この女性騎士達に囲まれて姫様は嬉しそうにしていらした。

 小さい頃は、何度も抱っこをせがまれる程であった。


 10人で構成された女性騎士は、姫様自身が慎重にお選びになっていらしたが……。

 皆、何故なぜかエルフの女子おなごにしては胸が大きな者達ばかりだったような? 


 エルフの国でも同性結婚は出来る。

 姫様は、女子おなごにしか興味がないのやも知れぬと思っておった。


 世界樹の葉で作られる秘伝薬を使用すれば、同性でも子供を持つ事は可能だ。

 ただ、この世界樹の葉は精霊王の加護を持つ王族しか採取する事は出来ん。


 当然、その秘伝薬は高価な物になる。

 他国に輸出している品目の内、一番高額の商品だろう。


 心配しておったが、姫様はカルドサリ王国の王と結婚なされた。

 儂は杞憂きゆうに終わった事に胸をで下ろしておったが、御二方の様子を見る限り真相は分からぬままであったな。

 

 初夜以外、ねやを共にする事がありはせなんだ。


 恋愛事にうとかった姫様。

 ずっと誰かの事を想っている気がしていたが、あれは一体誰であったのか……。

 

 王もご存じの様子だった。

 だから寝室を別にされても、何も言わずにいたのであろう。


 思えば姫様が外交に初めてカルドサリ王国に行った、初日での晩餐ばんさん会時。


 テーブル一杯に豪華な料理が並んでいたにもかかわらず、ぽつりとこぼした「ハンバーガーが食べたい」と言う言葉に王が反応した事がきっかけで意気投合されたようだった。

 

 御二方はその後も、他国の料理名を言って盛り上がっておられたな。

 御子がダンジョン内で披露ひろうされた料理名も幾つか聞いた事がある気がする。


 『ピザ』について熱く語っている御二方の姿を、その頃から王妃はにらんでおった。


 食事後、外交について話をしたいと警護の者を全員下がらせ、御二方は他国についての話を楽しそうにされていた。


 聞いた事もない地名が次々と出てきて興味深い話であった。

 御二方は同じ地名を口にした後、黙り込んでしまわれたが……。


 その知識は、どうやって知る事が出来たのであろう?

 

 そして1週間後。

 外交から戻られる姫様に王がプロポーズをされ、これを姫様は受けられる事になる。


 まるで事前準備されていたかのように、姫様が第二王妃になる事は問題なく進められていった。


 父である王だけが、最後まで反対していらしたが……。

 王妃は涙を流して喜んでおられた。


 あれはきっと、いつまでも未婚のままいる姫様が一向に恋愛に対し興味を持たない事が理由であった気がする。

 溺愛されていた王はそれで良かったかも知れぬが、王妃はひどく心配なさっていたからの。


 これは世界樹の葉が必要になる事態かもと危惧きぐしていらしたのか、儂に姫様の好みのタイプを尋ねられた事があった。


 その時は正直に、「男性では鍛えられた体つきをしている者、女性では胸の大きな者をお好みのようです」と答えたが……。


 回答を聞いた王妃が更に悩んでしまわれた。

 精霊の加護を失うような嘘は吐けないので仕方ない。


 結局、姫様は王に嫁いで1年もしない間にご逝去せいきょされた。

 王との間に1人の御子を産み落とされて……。

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