【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第455話 迷宮都市 新居へ家具の設置&木琴の演奏

公開日時: 2023年6月15日(木) 12:05
更新日時: 2023年8月30日(水) 23:11
文字数:2,299

 食事が済むと兄達はいつものように、ご老人達と将棋を始める。

 私はこれから新居に行って家具の設置をする予定だ。


 ガーグ老から、残り5部屋分の家具を受け取り家具工房を後にする。

 5部屋分の家具は、私の部屋の物とは違い装飾が控えめだった。

 

 いやはっきりいうと、王族仕様と貴族仕様くらい落差が激しい。

 どうして私の家具だけに、あんなに沢山の文様や人物が描かれているんだろう?


 実際、異世界の家で寝る事はないんだけど……。


 少し歩いた時点で、時短のため新居の庭へ移動。

 家の中央にある玄関から中に入り、2階へと上がっていった。


 どの部屋も大きさは同じなので、私は6部屋の扉に血液を登録して家具を設置する。

 一応、私の家具が置かれた部屋は一番奥の右側にしておいた。


 扉には侵入者防止結界が付いているけれど、1つでも盗まれたりしたら大変だよね。

 ガーグ老達は無料で製作してくれたので、実際の値段は想像するしかない。


 どう考えても、私の部屋だけで一千万以上しそう……。


 お礼は料理で良いと言ってくれる優しい人達だ。

 次回は事前に準備して、もう少し手の込んだ料理を作らなければ!


 地下29階で狩った蟹が使用出来たら、豪華なメニューになるのに残念。

 きっと換金額も高いに違いない。


 全ての部屋に家具を設置した後は、『肉うどん店』に向かう。

 1週間後にはクリスマス会で木琴の演奏を発表する予定なので、最終チェックを兼ねて仕上がり具合を確認しに行くのだ。


 あっ!

 ダンジョンにカエルの魔物がいるか聞くのを忘れていたよ!

 

 楽曲を変更する必要があるかもしれないので、もうひとつ教えておこう。


 『肉うどん店』に入ると、子供達と母親達が楽しそうに『木琴』を演奏しながら歌っているところだった。

 月曜日から土曜日は店が営業しているので、一緒に演奏出来るのは日曜日だけなのかも知れないな。


「こんにちは~」


「オーナー! いらっしゃいませ。先週教えてもらった曲は、もう覚えましたよ~」


 母親の1人が、そう笑顔で報告してくれる。

 渡した楽器を気に入ってくれているみたいだ。


「実は、今日も新しい曲を覚えてほしいんです。来週、私の家に子供達を呼んでパーティをする予定なんですけど、その時に『木琴』を演奏してもらえませんか?」


「わぁ~、僕達が皆の前で演奏していいの?」


「お母さん、私やりたい!」


 子供達は自分に出来る事を知って、かなり嬉しそうだ。

 このくらいの年齢の子供は発表の場があると、見てほしい気持ちが強いんだろう。


 異世界では音楽は貴族のたしなみで、庶民が楽器を持つ事など不可能に近い。

 その楽器を演奏出来るのは、かなりのアドバンテージになる。


 楽器を弾ける事が何より誇らしいのかも知れないな。


 母親達は逡巡しゅんじゅんした後で、子供達の希望を叶える事にしたらしい。

 了解を得たので新しい楽曲を披露ひろうしよう。


 新しい楽曲は、前回の失敗を踏まえて生き物が出てこない歌にした。

 『幸せなら手をたたこう』、この曲も簡単なので直ぐ弾けるようになるだろう。


 最初にドレミの音階で歌いながら曲を覚えてもらい、次に歌詞を書いた羊皮紙を渡して一緒に歌ってみる。


 曲に合わせて、皆が同じ動作をするのも楽しいと思う。

 1番が弾けるようになったら、2番3番も同じ繰り返しなので難しくはないはずだ。


 子供達が一生懸命練習している間に、母親達へ左手の音階を教えていく。

 彼女達は来週皆の前で演奏するとあって、かなり真剣な表情で音を聴いていた。


 もうドレミの位置は完璧なので、そんなに心配する必要はないんだけどね。


 2時間後。

 親子で合奏したら、息もぴったり合って上手く弾けていた。

 あと一週間あるので大丈夫だろう。


 金曜日の夜、リハーサルをしたら完璧かな?


 お土産に2色のキウイフルーツを渡して店を出る。

 最後に兄達を迎えにいこう。


 『肉うどん店』から家具工房まで歩いていると、上空に2匹の白ふくろうが旋回しているのが見えた。


 『ポチ』と『タマ』が、先行して家具工房へと飛び去っていく。

 きっと私が向かっている事を、ガーグ老に知らせにいったのだろう。


 私が迷宮都市内を歩いていると、かなり頻繁ひんぱんに見かけるんだけど……。

 いつも何処どこにいるんだろう?


 家具工房に到着して門を開くと、シルバーとフォレストが駆け寄ってくる。

 寂しかったのかな?


 将棋の対局は既に終了していたようで、旭が満面の笑みを浮かべている事から全勝したのだと思われる。

 兄は勝っても顔に出す事はしないから勝敗は不明だけど、ご老人達の悔しそうな表情を見る限り負けてはいないだろう。


「サラ……ちゃん、その言いにくいんだが……。今日使用した『バーベキュー台』を、5台とも買い取らせてはくれんかの?」 

 

 あぁ、『バーベキュー』なら料理が苦手なご老人達でも美味しく食べる事が出来るだろう。

 材料を切るだけなので手間もかからないしね。


「いいですよ。沢山家具を製作してもらったお礼にプレゼントします」


「おおっ、そうか! ありがたいわ。ついでといっては何だが、その……秘伝のタレももらえると嬉しい」


勿論もちろん、お譲りします」


 『焼肉のタレ』がないと、味付けが塩・胡椒のみとなってしまう。

 冒険者には銀貨3枚(3万円)で購入してもらっているけど、稽古を付けてくれるお礼に融通しよう。


 アイテムBOX内に入っている陶器の壺に入れ替えた『焼肉のタレ』を渡すと、ガーグ老は大切そうに両手で持ちとても嬉しそうだった。


 そばにいた三男のキースさんが、代わりに受け取ろうとしていたけれど断っている。

 これは自分以外触らせない心算つもりなのかしら?


 そういえばアマンダさんもダンクさんも『焼肉のタレ』と『ソース』は、料理担当者に渡していなかった気がする……。


 それ、スーパーで100円で購入したものですけどね。

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