【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第566話 迷宮都市 地下15階 秘密のLv上げ12(摩天楼のダンジョン13階~20階)&S級冒険者のセイさん

公開日時: 2023年10月4日(水) 12:05
更新日時: 2024年1月25日(木) 22:12
文字数:1,992

 父の考え事が一段落したとみて、私はさっさとテントを収納し13階の攻略を始めた。

 時間も押しているから、マッピングで階段を見付け真っ直ぐに突き進む。

 迷宮都市のダンジョン地下30階~地下27階の魔物を倒している私達では、13階の魔物を討伐した所でLvは上がらないだろう。

 初見の魔物は気になるけど、兄達と攻略する時に見ればいいかとスルーする。


 14階に生っている木の実は、カシューナッツだった。

 この階層も移動のためだけに走り抜ける。

 15階の木の実は、マカダミアナッツ。

 いずれも大きなサイズで1個食べたら、お腹一杯になりそう。

 ここで、時間切れとなり迷宮都市へ戻った。


 翌日、木曜日。

 午後から摩天楼のダンジョンへ移動し、16階から攻略する。

 16階の木の実は、ヘーゼルナッツ。

 17階の木の実は、ピーカンナッツ。

 18階の木の実は、ピリナッツ。 

 19階の木の実は、栗。

 20階の木の実は、ココナッツ。


 ん?

 ココナッツも木の実なんだろうか?

 20階の安全地帯に到着後、テントを設置し木の実を探していた私は疑問に思う。

 まぁ、木に生るので問題ないか……。

 そもそもダンジョンの森は、日本と同じ植生をしている訳じゃないからね。


 1階がアンデッド階層だった事から、20階は迷宮都市の28階に当たるのではと予想。

 そろそろ、本腰を入れ攻略しても良いかも知れない。

 テントから出て攻略へいこうとしたら、黒髪・黒目で日本人にしか見えない男性を見掛けた。

 あぁっ!

 もしかしてあの人は、異世界転移したS級冒険者のセイさん?

 会って色々な話を聞きたい!


「お父さん。私達と同じように、異世界に転移した日本人がいるかも知れないの。話をしてもいいかな?」


何処どこにいるんだ?」


 怪訝けげんそうに尋ねる父へ、セイさんが歩いている方向を教える。


ひじりじゃないか!」


 叫ぶと、私を置き去りにし駆け出してしまった。

 父の知り合いなの?

 私もあわてて後を追い駆ける。

 すると2人が再会を喜んでいた。


「突然行方不明になったと思ったら、この世界にいたのか!」


ひびきさんと会えるなんて、驚きました!」


 父からセイさんは銀行の後輩だと紹介してもらう。

 探していた日本人が父の知り合いだったとは……。

 私も初対面の自己紹介をする。

 娘の沙良ですと言うと、セイさんは驚いていた。

 まぁ、似ていないと思ったんだろう。

 リーシャの容姿から父の娘だとは考えにくい。


 今は地上へ帰還する途中で安全地帯に寄ったのだとか。

 一緒にいるメンバーへ断り、セイさんを私達のテント内に案内した。

 私がセイさんの書いた手紙を見付けた話をすると、すごい偶然だねと笑っている。

 予想では60歳以上の姿だと思っていたけど、セイさんは40代後半にしか見えなかった。

 ジョンさん達と迷宮都市のダンジョンを攻略している時点で、45歳のはずなんだけど……。

 それから20年間石化されたジョンさんを考えると、見た目年齢が合わない。


「あの、迷宮都市でジョンさんのクランメンバーだったセイさんですよね?」


「そうだけど……。君はジョンを知っているの?」


「はい。全身が石化状態で発見されましたけど……。治療後、元気に冒険者活動してますよ」


「えっ、ジョンは生きてるの!?」


「はい、今は迷宮都市の地下19階を攻略している最中です」


 帰還しなかったクランリーダーの生存を知り、セイさんが泣き出してしまった。

 確か製麺店のバスクさんが、セイさんはクランメンバーから可愛がられていたと言ってたなぁ。

 旭より身長が低いから、保護対象になっていたのかも?

 その割には「黒炎こくえん」とかいう、物騒ぶっそう渾名あだなが付けられていたけど……。


「良かった。迷宮都市へ会いにいこう!」


 そう言いながら泣き続けているセイさんへ、アイテムBOXからティッシュを取り出し渡す。

 彼はティッシュを受け取り、思い切り鼻をかんだ。

 その後、ティッシュの存在に気付きしばらく固まってしまう。


「なんで、ティッシュが……」


 それを説明するには少々時間が掛かる。

 私はいつもの手紙をセイさんに渡し読んでもらった。


「能力に差があり過ぎるでしょ……」


 手紙を読んだセイさんは再び固まり絶句する。

 気分が落ち着くよう缶コーヒーを差し出すと、


「ずるいなぁ……」


 と言いながらも全て飲み干し満足した表情になった。

 

「そう言えば、お前。運命の相手を探すと豪語ごうごしてたが、見付かったのか?」


「たった今、見付かりました。響さん、お嬢さんを私に下さい!」


 父が何の脈絡もなくセイさんへ尋ねると、予想外の答えが返ってくる。

 それ、私の能力目当てじゃん!


「すみません。3ヶ月後には人妻になるので結婚は無理です」


 私が即座に断ると、セイさんは悲壮ひそうな顔を父へ向ける。

 

「悪いが娘はやれん」


 父にもきっぱりと断られ、セイさんは項垂うなだれてしまった。


「運命の人だと私の勘が告げているのに、先約済みなのか……。それなら、一緒にパーティーを組みたいです!」


 突然のパーティー加入宣言に、父も私も顔を見合わせたのだった。

ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート